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分類

【書評】深海生物テヅルモヅルの謎を追え!

2016年5月30日に東海大学出版より発売された,

フィールドの生物学シリーズ第20巻

「深海生物テヅルモヅルの謎を追え! 系統分類から進化を探る」の書評を頂きました!

 

HONZ

shorebird 進化心理学中心の書評など

かめふじハカセの本草学研究室

産経ニュース「書評倶楽部」

読書メーター

Z会ブログ

土と生き物

ブクレコ

 

この他,拙著の書評を歓迎いたします.その際には是非ご連絡いただけると嬉しいです.

更新:2016年11月6日


記事が公開されました

アメリカのMcGraw-Hill Educationが提供するAccessScienceに,

ツルクモヒトデ目(Euryalida)の総説記事を書きました.
 

アメリカのスミソニアン博物館のDavid L. Pawson博士経由でこの記事の執筆依頼を頂きました.

お恥ずかしながらその時に初めて,この会社の存在を知ったのですが大手の出版社です.

↓リンクです.全文を読むには登録が必要なようですが,さわりだけは読めます. 
 

https://www.accessscience.com/content/euryalida/246500
 
 

記事の執筆依頼を下さったDavid L. Pawson博士,

写真をご提供くださった下田臨海センターの鈴木様,ありがとうございました!


深海生物テヅルモヅルの謎を追え!―正誤表―

2016年5月30日に東海大学出版より発売された,

フィールドの生物学シリーズ第20巻

「深海生物テヅルモヅルの謎を追え! 系統分類から進化を探る」の正誤表です.

 

P47 5行目: Von voyage !→Bon voyage !

P51 11行目: …たことがある→…たことがある

P231 10 行目: …科を一一種ずつ含んでいたので…→…科を種ずつ含んでいたので…(二という漢字が一一に誤変換されてしまったのかもしれません)

P243 15行目: …幾多の大学院生が排出されて…→…幾多の大学院生が輩出されて…

P266 11行目: …筆を置く…→…筆をく…

 

他にも間違いがありましたら,是非ご連絡ください.

更新:2016年5月30日.

深海生物テヅルモヅルの謎を追え!

本を出版することになりました.

「深海生物テヅルモヅルの謎を追え!―系統分類から進化を探る―」

というタイトルです.主に私の博士課程の時の研究をまとめつつ,

系統分類学やの紹介などた話です.5/30に発売です.Amazonなどでも既にポチれるようです↓

http://ur0.pw/tO4Q

興味のある方は是非手に取ってみてください.

以下,オフィシャルな情報です.
———————————————-
【書 名】

 深海生物テヅルモヅルの謎を追え!―系統分類から進化を探る―

【著者】

 岡西政典(茨城大学理学部助教)

【体 裁】

 B6判 299頁 並製

【定 価】

 2160円(税込)

【著者割引】

 1728円(税込)・尚、送料は400円 5冊以上の場合,送料小会負担でお送りします

【発 行】

 東海大学出版部

【発売日】

 2016年5月30日・発送は5月25日以降になります

【ISBN】

 ISBN978-4-486-02096-7
お支払方法 振込、MASTER・VISA CARDを但しカードの場合は、カード名義、カード番号、
有効期限をご連絡ください。 ご購入の場合はメ ールにて稲までご連絡ください

【内 容・目次】
珍しい生きもの好きすべての人へ : テヅルモヅルって何? クモヒトデって何? どんな
生きものか?  分類学を通して学ぶ。日本初のテヅルモヅルの本

目次
はじめに
第1章 系統分類学に出会う
1 北の地で
2 研究室に所属する
コラム・ジャンケン
3 分類学とは
コラム・「斜体」と「立体」
4 クモヒトデがしたいです
コラム・北大での研究対象選び
5 コピー機の前に立つ日々
コラム・何語であろうがいつであろうが
6 初めてのサンプリング
コラム・磯に採らえば……!
7 クモヒトデってどんな動物?
コラム・棘皮動物①
8 同定を試みる
コラム・様々な標本の作り方
9 Von voyage !
コラム・アネロン ニスキャップの思い出
10 師匠との出会い
コラム・ウミユリはいつ「生きた」化石になった?
11 クモヒトデを採りまくれ!
コラム・魚屋さん
12 院試と卒研を突破せよ
コラム・棘皮動物②

 第2章 テヅルモヅルを収集せよ
1 博物館に所属する
コラム・D‌Cを目指す?
2 孤独との戦い
コラム・「テヅルモヅル」ってどんな分類群?
3 一筋の光明
4 無限の荒野を行くのなら
コラム・新種はどこで誰のために発見される?
5 記載の果てで
コラム・査読
6 Describing man blues
コラム・新種と未記載種
7 「鑑定眼」が養われた?
コラム・チョッサー、ボウスン、ストーキー
8 少しずつサンプルが集まってきた
コラム・漁港巡り

 第3章 海外博物館調査
1 海外進出!
2 初めての海外調査
コラム・飛行機の中の紳士
3 国際学会+α
コラム・海外ではパスポートを!
4 再びオセアニアへ
コラム・ニュージーランドでの思い出
5 アメリカ再訪
コラム・時岡先生のお写真
6 ヨーロッパ周遊
コラム・守衛のおじさんとのやり取り
コラム・アムステルダムでの思い出

 第4章 ミクロとマクロから系統を再構築する
1 形態形質を精査せよ
コラム・新種?
2 分子系統解析に取り組む
3 初の実験成果
4 科レベルの記載
5 初めてのポスター賞
コラム・若手分類学者の集い

 第5章 系統・分類学から進化を探る
1 なんかないの?
2 学位を取得する
3 学位取得、その後
4 ポスドクを経て
5 系統分類学は楽しい?
6 クモヒトデの系統進化
7 X線でお見通し
8 キヌガサモヅルの分類
9 それでも、系統分類学!

 おわりに
謝辞
用語
引用文献
索引

———————————————-

二年ほど前から少しずつ執筆を始めていたのですが,

まさか本当に出版にこぎつけられるとは思っていませんでした.

それなりに,一般の人にもわかりやすい解説を入れたつもりですので,

系統分類学に興味がおありの方は,是非ともご覧になってみてください.


2015年8月28日~9月4日 京都大学臨海実習第一部+四部+公開臨海実習「自由課題実習」~番外編~

そういえば,京大の実習でなかなか面白い生き物たちが得られたのでご紹介いたします.



OLYMPUS DIGITAL CAMERA

キクメイシモドキでしょうか?畠島の内湾側で見られました.

なんだか個体同士が離れている印象.



OLYMPUS DIGITAL CAMERA

トックリガンガゼモドキ.

最近発見した畠島の棘皮動物ゾーンにいました.

ガンガゼに似て,体の反口側真ん中の肛門が突出していますが,

トゲがよりふと短く,白黒の縞模様になっているのが特徴です.



OLYMPUS DIGITAL CAMERA

そして最近発見した面白生物はこれ!

ヌノメイトマキヒトデです.

最近まで畠島には本種はいないといわれていたのですが,

よーく他種と比較してみると,どうやら分布している事が分かったのです.



OLYMPUS DIGITAL CAMERA

こちらは近似種のトゲイトマキヒトデ.

体の真ん中たりに,細い白いスジのようなものが五角形の模様を作っているのが,わかりますか?



OLYMPUS DIGITAL CAMERA

対してこちらはヌノメイトマキ.

前者のような筋構造がないことから区別できます.
 

おそらくこの二種は私が瀬戸に来た頃からずっと同所的に生息していたと思うのですが,

最近になって意識してみるまでは,別種と気づきませんでした.


 

とある先生の,「これは別種じゃないの?」の一言で詳しい同定に踏み切った次第です.

先入観は恐ろしいものですね.



OLYMPUS DIGITAL CAMERA

打ちあがってしまったモミジガイ.

本来砂に潜っている種ですが,おそらく弱ってしまったのでしょう.

体がややボロボロになり始めていました.



OLYMPUS DIGITAL CAMERA

イソアワモチ.白い筋のようなものは彼らの糞で,

これを辿っていくと,岩の表面に擬態している彼らのところにたどり着くことができます(笑)



そんなこんなで,意義深い畠島探索でした!


動物命名規約の輪読会が開催されます

毎年恒例の,動物命名規約の勉強会が開催されます!

今年も日本動物分類学会大会@広島大学の後,

以下の要領で開催されます.詳細は以下の通りです.
 

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第6回『若手分類学者の集い』のご案内
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<開催趣旨>

 これまで6回にわたり日本動物分類学会大会にあわせて開催された勉強会『若手分類学者の集い』では、全国の若手分類学者が集まって国際動物命名規約の学習を行いました。さまざまな分野の研究者による自由闊達な議論によって規約への理解を深めることができたと感じています。

 今年も日本動物分類学会大会の日程に合わせて勉強会の開催を企画しましたので参加者を募集いたします。勉強会の内容はこれまでと同様、『国際動物命名規約第4版』を輪読形式で読み進め、疑問がある場合にはそのつど全員で徹底的に議論を行い、解決する、というものです。また、勉強会は、予算的な負担が最小限で済むように日本動物分類学会の終了後に会場である広島大学の近くで行います。もちろん、日本動物分類学会大会に出られない方の参加も大歓迎いたします。

 なお、「若手分類学者の集い」という名前ではありますが、これは特に若手の参加が重要だと考えているからで、若手しか参加できないという意味ではありません。また、専攻が分類学でなくてもまったく問題ありません。気持ちが若手 !で、分類学に興味をお持ちの全ての方の参加を歓迎いたします。 
 

<内容>

国際動物命名規約の勉強会

※基本的に輪読形式です。『国際動物命名規約第4版日本語版』をお持ちください。

 第5回より2巡目の輪読を開始しています。第6回までに条23.12(26ページ)までの学習が済みました。第7回はこの続きの条24から輪読を行いたいと考えています。なお、勉強会の最後に次回の開催や内容について話し合う予定です。

※『国際動物命名規約 第4版日本語版』をお持ちでない方は日本分類学会連合のウェブサイト(下記)をご参照ください。PDF版のダウンロードができます(無料)。2,800円(送料込み)で印刷体の購入もできます。一般の書店では取り扱われていません。

http://www.ujssb.org/iczn/index.html

※2012年9月4日に国際動物命名規約が改正され,同日に発効しました。こちらも適宜参照します。改正文の和訳を含む解説記事が「タクサ」第34号に掲載されています。PDFが日本動物分類学会のウェブサイト(下記)からダウンロードできます。

http://jssz.sakura.ne.jp/ 
 

<勉強会会場および宿泊先>

広島大学 学士会館

http://www.hiroshima-u.ac.jp/top/kenkyusyo/syukuhaku/p_471489.html

広島大学東広島キャンパス内。大会会場の教育学部から徒歩2分程度。

学士会館までのアクセスは以下のリンクをご参照下さい。

http://www.hiroshima-u.ac.jp/gecbo/p_3e2399.html
 
 

 

<日時>

2015年6月14日(日)18:00 ~ 15日(月)18:00

・集合場所は2箇所を予定しております。17時15分に分類学会の大会会場の出入り口付近、または17時30分に勉強会会場の学士会館に直接お越しください。詳しい日程は、後日、参加者にお知らせします。

※1日目の開始時刻は日本動物分類学会大会のプログラムに合わせて調整する可能性があります。 

※2日目の17時以降に、希望者で打ち上げを行う予定です。 
 
 

<費用>

・宿泊費:1人当たり3,800円の予定です。

・食事は、学士会館付近のコンビニや学食を利用する予定です。

・一日目の夕食は勉強会会場にチェックイン後、近くのコンビニに購入に行く予定です。各自で弁当等を持参されても構いません。
 

<参加申し込み方法>

 参加ご希望の方は、5月18日(月)までに小林元樹(mail: genki_k(a) nenv.k.u-tokyo.ac.jp) まで下記の点をご連絡ください。

 なお、会場の収容人数の問題があるため、先着順で定員に達した場合には、募集を締め切らせていただきます。あしからずご了承ください。
 

1.氏名・フリガナ

2.性別

3.所属(学生の方は学年もお知らせください)

4.E-mailアドレス

5.研究対象(例:日本産カサガイ類の系統と分類)

6.動物分類学会大会への参加の有無

7.部分参加や会場に宿泊されない方はその旨をお書きください(勉強会は合宿形式で夜遅くまで続きますので、できる限り会場にご宿泊されることをお勧めします)。

 ご不明な点がありましたら下記の5名の世話人のうち、誰にでもどうぞお気軽にお問い合わせください。
 

<世話人>(五十音順)

小林元樹(東京大学大学院 新領域創成科学研究科 修士課程2年)

E-mail:genki_k(a) nenv.k.u-tokyo.ac.jp

自見直人(広島大学大学院 生物圏科学研究科 博士前期課程2年)

E-mail:jimin(a) jamstec.go.jp

田中颯(東京海洋大学 海洋環境学科 学部4年)

E-mail:tanattyokana(a) gmail.com

田中隼人(広島大学大学院 生物圏科学研究科竹原ステーション 学振PD)

E-mail:Cladocopina(a) gmail.com

照屋清之介(東京大学大学院 理学系研究科 博士課程2年)

E-mail:teruya(a) um.u-tokyo.ac.jp

※(a)は@に置き換えてください。

——————————————————————-
 

以上です.今年もワイワイ,楽しく命名規約を勉強しましょう!


目録が出版されました

沖縄の棘皮動物の目録が出版されました!
 

藤田喜久,入村精一,木暮陽一,岡西政典,François Michonneau, 成瀬貫.(2015)

琉球大学資料館(風樹館)棘皮動物標本目録.

琉球大学資料館(風樹館)収蔵資料目録 第10号.pp. 106.
 

私はツルクモヒトデ目とクモヒトデの一部の同定・写真撮影・および序文の執筆をお手伝いしております.

PDFへのリンクはこちら↓(画像をクリック!)
 

 琉球大学資料館 棘皮動物標本目録

ページ下部のリンクからDL出来ます(35.9MB)
 

225種の写真288枚が掲載されておりますが,他の著者の皆様の写真はいずれも非常に美しく,

私が撮影した写真のクオリティの低さをただただ恥じるばかりです.
 

タイトルページの各綱の写真は特に美しく.

私もこのように対象分類群に「愛」を持たねばとハッとさせられました.
 

沖縄には多数の棘皮動物が生息しているにも関わらず,

包括的な報告はありませんでした.

本書が今後の沖縄の棘皮動物研究の進展に役立ちますよう! 
 


下田で採られたテヅルモヅル

下田臨海実験所の職員さんのブログをご存知でしょうか.
 

その名も「下田海洋生物採集日記
 

下田臨海周辺の豊かな生物や,その採集方法が紹介されています.
 

そのブログになんと,珍しいクモヒトデがかかったとの記事が!
 

こちらですね「キンメ漁の針にかかったテヅルモヅル
 

実はこれは,非常に珍しいモヅルで,
 

Astrochele pacifica (トゲツメモヅル)だと思われます.
 

この属の報告自体珍しく,日本では,2011年に本種が勝浦沖からの報告が,

Astrochele (ツメモヅル属)の初報告です.
 

まだまだ日本のいろんなところで珍モヅルが採集されているのですね.
 

チームテヅルモヅルでは,珍しいモヅルやクモヒトデの発見の連絡をお待ちしていますよ!


Squamophis albozosteres

 

 

モヅル紹介です.
 

IMGP0722

Family: Astrocharidae ヒメモヅル科

Genus: Squamophis 

Specific name: albozosteres  
 
 

オーストラリアのビクトリア博物館に所蔵されていたモヅルです.

あまりに特徴的な形だったため一目で新種とわかったのですが,

その後DNA解析や詳しい形態観察を行ううちに,これが新属新種である事が分かりました.
 

この種を記載する際に,Squamophis属も新しく立てたわけですが,

実は処女論文で記載したAsteroschema amamiensisも,その新属に所属する事が分かりました.
 

Squamophis albozosteresをタイプ種として,現在では3種が知られています.
 

①各触手穴に腕針を一本だけ持つ

②体の背面に,茶色く板状の皮下骨片と白く顆粒状の皮下骨片を両方持つ

③白い皮下骨片は,腕では輪状になる
 

といった特徴で他種と区別できます.

SquamophisはSquama は「鱗の」,Ophisは「蛇」という意の合成語で,

albozosteresはalbus「白の」,zoster「環を持つ」という意味の合成語です.
 

IMGP0723

口側はこのように白くてかわいいやつです.


もづる紹介コーナー(Astrocharis monospinosa④)

 

 

ヒメモヅルについての続記です.
 

コペンハーゲンから届いたAstrocharis gracilisのタイプ標本はこちら.
 

DSC_0295

こんな感じで,箱に丁寧に梱包されて送られてきます.

真ん中の小さいのが標本です.

この1個体が,A. gracilisの記載に使われた唯一一個体になります.
 

これに対して,アムステルダム博物館から届いたタイプ標本は2つの瓶に入れられていました.

DSC_2152

これと
 

DSC_2167

これです.
 

ijiami

そして日本近海から記載されたヒメモヅルA. ijimaiの標本がこれです(タイプ標本ではありません).
 

これらの観察を始めたところ,すぐに違和感に気づきました.

明瞭に区別できる形が見つからないのです.
 

先行研究では,A. gracilis, A. ijimai, A. virgoの順に体表の鱗が小さくなるというのですが,

少なくともタイプ標本だけを見てやるとどうにも分けられません.
 

そこで,先日も記事にした新種と思われる個体と,

日本で採れたヒメモヅルも含めて,41個体の鱗の大きさと,体サイズ(盤径)を相関させて比較したところ,
 

どうやらA. gracilisA. virgoのタイプ標本の一部とA.ijimaiの鱗の大きさは同じくらいであり,

A. virgoの別のタイプ標本はそれよりも鱗が小さく,

新種と思われる標本は統計的に鱗が大きい,ということがわかりました.
 

つまり,これまでに認められていた三種は,実は二種の混合だったのです.
 

そこで,これらの結果をまとめて,これまで三種が知られていたヒメモヅル属を,

Astrocharis monospinosaと名付けた新種の記載も含めて,

一減一増の末に,三種にまとめた論文を日本動物学会誌のZoological Scienceに発表しました.
 

http://www.zoology.or.jp/html/01_infopublic/01_index.htm
 

実は,このあたりの詳しい話は↑にも書かれています.
 

この論文は,初めはAstrocharis monospinosaの記載だけで発表しようと思っていたのですが,

もう少しまとまった発表にしたほうがいいのでは?

という藤田先生の意向もあり,

少し粘って分類学的再検討という内容にしました.
 

時間はかかったものの,

結果的に一つの分類群のレビューを初めて完遂することとなった,

思い出深い論文となりました.


もづる紹介コーナー(Astrocharis monospinosa)③

Astrocharis monospinosa は新種であるということがわかりました.

しかし,Astrocharisi属の全3種の原記載を読んでみて,ふと気づいたことがありました.
 

これらは本当に区別できるんだろうか?
 

当時Astrocharisに知られていたのは,
 

A. virgo Koehler, 1904

A. ijimai Matsumoto, 1911

A. gracilis Mortensen, 1918
 

で,体表を覆う鱗が,それぞれ,小,中,大,ということで区別されていました.
 

しかしこれでは具体的な数字がなく,

本当にそれが明確に数値として分けられるのか不明瞭です.
 

こうなってくると原記載を読んデイてもラチがあきません.
 

そこでタイプ標本ですよ.
 

原記載の基となった標本を担名タイプ標本といい,

基本的にはこれらの標本に基づいて種の命名は行われます.
 

上記の三種のタイプ標本の所在を調べていたところ,

A. virgoはアムステルダム動物学博物館に,

A. gracilisはコペンハーゲン大学動物学博物館に,

それぞれ所蔵されている事がわかり,

学芸員さんにコンタクトをとってみたところ,なんと貸出をしてくれるというのです!
 

喜び勇んで申し込みをして数週間後,果たしてそれらの標本は,

はるばる海を越え,果たして私の手元に到着したのです.
 

続く


もづる紹介コーナー(Astrocharis monospinosa)②

Arm midd. ven. 5.0 (2)

科博に所蔵されていた標本はAstrocharis gracilisと同定されていました.

この種はMortensenによって1918年に記載されたものでしたが,

原記載の掲載雑誌が少なくとも国内になかったため,

Döderlein (1927)による別の個体の再記載を頼りにこの種を同定していました.
 

しかしDöderleinの記載と科博の個体はどうも形が異なるのです. 
 

果たしてこの違いは種内変異なのか,

それとも科博の個体は別種なのか?

見極めるためにはやはり原記載を見る必要がありました.
 

国外の図書館に複写を依頼して果たして手元に届いた原記載.

あれほど気持ちを昂ぶらせた文献拝読は未だかつてないかもしれません.

一ページずつページをめくるたびに,疑問が確信に変わっていきました.
 

Mortensen (1918)の原記載は,明らかにDöderlein (1927)と一致しており,

科博の標本とは異なることが分かりました. 
 

すなわちこの時点で,手元の標本は新種であるという事が明らかになったのです. 
 

しかし原記載を読んで気づいたことはこれだけではありませんでした.

続く.


もづる紹介コーナー(Astrocharis monospinosa)

DSC_2538
撮影[国立科学博物館:藤田敏彦]

Family: Astrocharidae ヒメクモヒトデ科

Genus: Astrocharis ヒメモヅル属

Specific name: monospinosa オオヒメモヅル(新称) 
 

非常にレアなモヅルです.

まずヒメモヅル属からして珍しい.
 

体の表面がブヨブヨの皮か細かい顆粒に覆われていることの多いツルクモヒトデ目ですが,

この属は体が鱗に覆われており,かつ輻楯(ふくじゅん)と呼ばれる盤の背面の板状骨片が,

裸出する,という特徴があります.
 

1.0

特に,この輻楯の裸出という特徴は,他のツルクモヒトデ目にはほとんど見られません.

私の中のかっこいいモヅルランキングベスト3には間違いなく入る属です.
 

生息域も,海山の頂上,約300 m以深に限られており,

種数も本種を含めて3種しか知られていません.
 

Astrocharis monospinosaは,
 

①体を覆う皮下骨片が他の種に比べて大きい(0.5-1 mm程度)

②各触手孔に生えている腕針が1本

③体内の側腕板や腕骨が腕の基部で裸出する
 

といった特徴によって区別されます.
 

私が科博の学生になって,博物館の標本を片っ端から見ていた時に,

この標本を見つけました.ヒメモヅル属である事はすぐにわかったのですが,

新種だという確信は得られませんでした.
 

その後,調査を進めているうちに本種が新種である事が突き止められていきました.
 

続く.


分類学について⑩

リンネ以降爆発的に記載が増加し,

徐々に自然の体系が整理されていきました.

ところが,それに伴って浮き彫りとなった問題もありました.
 

例えば,ある人がフィリピンで新種の魚を記載しました.

その後,別の人がこのフィリピンの魚を知らずに,

日本で採れた同じ魚を新種として記載しました.
 

この場合,同じ種に別の名前が付けられることになります.
 

これを「異名」と言います.
 

さらに,リンネの階層式分類体系の中では,

化石種の扱いは定められていませんでした.
 

このような問題が増える中,18世紀から19世紀にかけて,

世紀英国科学振興会,アメリカの地質・博物学会,

国際地質学会議,国際動物学会議で議論が重ねられた結果,

著名な動物学者による動物の命名を審議するための委員会が結成されました.
 

これが動物命名法国際審議会の誕生です.

その後,第5回国際動物学会議(ベルリン,1901)における同委員会による報告が,

「Regles internationales de Nomenclature zoologique」

なる法典として成文化されました.
 

この法典は,その後の諸会議で一連の改正を伴い,

1961年に,「国際動物命名規約」として出版されました.
 

IMG_4944

現在は第4版まで出版されており,

動物の学名が恒久的に,混乱なく使えるようにするための取決めが,

詳細に書かれています.
 

また,この規約では,動物の学名を運用するための,

様々な重要な概念などについても言及されているのです.
 

私もよくお世話になっている一冊です.


分類学について➈

新種発表等の命名法的行為は,

「適格な」著作物の学術論文の中で行われなければなりません.
 

学術論文の一般的な構造は以下の通りです.
 

1.タイトル(その論文のテーマを的確に表す題名)

2.著者とその所属

3.緒言(論文を書くにあたっての背景)

4.材料と方法(論文で用いた材料や,解析などの方法)

5.結果(論文で得られた結果の明示)

6.考察(得られた結果から考えられる科学的知見)

7.謝辞(お世話になった方々へのお礼の言葉)

8.文献(論文内で引用した文献の正確なリスト)
 

記載論文も基本的にはこの構造をとります.

が,ちょっと違う部分もあります.

実際にはどのような構成でしょうか.

クモヒトデの新種記載論文をここに書いてみましょう.


1.タイトル

和歌山県白浜町より得られたクモヒトデの新種
 

2・著者と所属

岡西政典 京都大学フィールド科学教育研究センター 瀬戸臨海実験所
 

3.緒言

紀伊半島西岸では,これまで63種のクモヒトデが記録されている(Murakami, 1963; Irimura, 1981).2015年++月に和歌山県南部漁港で得られたクモヒトデが未記載であることが判明したため,本論文で報告する.
 

4.材料と方法

本研究で扱ったクモヒトデ30個体は,****年**月**日に,和歌山県南部漁港の刺し網で得られた.採集場所は南部沖の水深約30 mである.形態観察には実体顕微鏡を用いた.

標本は**博物館に保管した.標本番号は***である.
 

5.記載

Ophioaus bus sp .nov.
 

検討標本: タイプ(標本番号***),和歌山県南部,約30 m.
 

記載:盤は**mm, 腕の長さ** mm,盤上は長さ** mmの鱗に覆われ云々.
 

*記載論文が一般の論文と大きく異なるのはこの部分です.「結果」の代わりに「記載」というセクションになります.ここで当該論文で扱った標本についての,詳細な記述を行います.因みに,Ophioaus busは本論文でつけようとしている二名法で記された新種の名前,sp. nov. はラテン語で「新種」という意味ですので,この一文で,「こんな新種の名前を提唱します!」という意味を成しており,現在では,この一文がないと記載を行ったことになりません.また,タイプとはその種の名前を担う標本の事で,これがきちんと指定されていないと,現在では命名したことには成りません.ちなみにいちいち「現在では」とただしているのは,実は論文の発行された年代によって,命名法的行為の満たすべき要件は違ってくるためです.そのあたりについてはまた今度.
 

6.所見

本種は**という形を持つことから,Ophioausに属する.本属は世界で10種が知られるが,本種のような***を持つ種は他にO. cus, O. dus, O. eusの3種が知られる.しかし,これら3種の腕の長さは最長でも100 mmなのに対し,本研究で扱う新種の腕は30 mに達する事から容易に区別できる.また,他にも**という特徴により区別できため,これらの形質を考慮して,本種は新種と考えられる.

*この部分も,一般の論文では「考察」だったのに対し,記載論文では「所見」です.ここでは,当該論文で扱う種が新種である根拠を,他の近縁種との比較から論理的に説明していきます.また,ここで生態や分布域について言及すrことも少なくありません.
 
 

7.謝辞

白浜大学の瀬戸博士には,サンプルの採集,記載におけるアドバイスなど,多方面にわたりご助力をいただいた.ここに記して謝意を表する.
 

8.文献

Irimura, S. 1981. Opiurans from Tanabe Bay and its vicinity, with the description of a new species of Ophiocentrus. Publ. Seto Mar. Biol. Lab., 26(1/3): 15–49, pl. 1.

Murakami, S. 1963. On some ophiurans from Kii and vicinities with description of a new species. Publ. Seto Mar. Biol. Lab., 11(2): 171–184.
 

これが記載論文の基本的な流れとなります.
 

長くなりましたが,このような論文をせっせと書くことでやっと新種として認められるわけです.

もちろん,単に書いたから明日から新種!というわけではなく,論文が完成したら,

雑誌に投稿,査読者からの長いやり取りの後にようやく雑誌に掲載が許可(受理)され,

その後何か月後かに雑誌が発刊されてやっとその命名法的行為は認められます.
 

おそらく,早い人でも新種を発見してから発表に至るまでは半年はかかるでしょう.
 

リンネによって分類学の基礎が築かれてから250年あまり,

現在名前が付けられている生物は180万種程度かと思いますが,

まだ名前のついていない種は1000万種はいるといわれています(これは研究者によって意見が違いますが).
 

このような作業を行いながら人類が地球上の生物に名前を付けることができるのは,

まだまだ遠い未来の事になりそうです.
 

*この記事ではZoobankへの登録がない,タイプの指定がない,

などの理由から命名法的行為には当たらないとは思いますが,

念のため,筆者からも命名法的行為の棄権を明言しておきます.


分類学について⑧

新種はそう珍しいものではありません.

離島の海底洞窟の中,

人影まばらなビーチの砂の間,

漁港に打ち捨てられた漁労物などなど.
 

まだまだ探せばいくらでも見つかるはずです.
 

しかし,では新種を見つけたからと言って,

「新種を発見しました!名前はAus busです!」
 

とブログに書いても,それはAus busを命名したことにはなりません.
 

生物の名前に関わる行為(命名法的行為)は,

決められた要件を満たした著作物の中で,

決められた手順を踏んで行われる(「公表される」)必要があります.
 

というとなんのことやらですが,

おそらく,現代ではほぼすべての命名法的行為は,

学術論文の中で行われています.
 

著作物が満たすべき決められた要件とは,

国際命名規約第四版では以下のように定められています.
 

条8.1.1. 公的かつ永続的な科学的記録を提供する目的で発行しなければならず,かつ,

条8.1.2. 最初に発行された時点で,無料あるいは有料で入手可能でなければならず,さらに,

条8.1.3. 長期保存に耐える同じ複本を一度に多部数制作可能ななんらかの方法に余tt,同時に入手可能な複本からなるひとつの版として制作されたものでなければならない.
 

ただし,以下のものは条9のもと,除かれます.
 

条9.1. 1931年以降の,手書きの著作物の模写

条9.2. 写真

条9.3. 校正刷り(印刷段階前の,著者の確認のための版)

条9.4. マイクロフィルム

条9.5. 録音

条9.6. 標本のラベル

条9.7. 図書館などに供託されているが,公表されていない著作物の,注文による複本

条9.8. ウェブサイトで公開された文章や絵

条9.9. 学会の要旨集,ポスターなど.
 

これらに基づくと,学術雑誌は完全にOK,ウェブサイトはダメとなります.

しかし,例えば新聞であれば,もし万が一新種記載の要件を記事の中で満たしてしまった場合,

それが新種の提唱になりうるのではないかと私は考えています.
 

また,最近では電子出版の著作物内での命名法的行為も認められており,

迅速な新種の記載がおこなわれるようになってきました.
 

そのあたりについてはまた今度.


分類学について⑦

 

 

久しぶりに分類学について.
 

分類学ってどんな学問?[岡西]

リンネによる階層式分類体系が確立される前から,

人々は生物を分類してきました.

その基準はどのようなものでしょうか?
 

最も頻繁に用いられるのは,やはり見た目,すなわち「形」でしょう.
 

・星形の体

・くねくね動く腕

・腕は分岐する

・腕の背面にはかぎ爪の列

・多孔板は五つ

・全体的に赤い
 

例えばこんな見た目の動物がいたら,

我々はそれを「アカテヅルモヅル」と,

一瞬で判断することができます.
 

形だけでなく,
 

顕花植物などでは花の「匂い」,

鳥などでは「鳴き声」, 
 

なども分類の基準にされています.

最近では,例えば菌類などは「DNA配列」自体を特徴として分類をしています.
 

このような分類の指標となる生物の指標を「形質」と呼びます.
 

分類学者は古来より,可能な限りたくさんの形質を総合的に比較して,

生物を分類・命名してきました.
 

では,この命名行為とは,一体どのようにして行われるのでしょうか?
 

続く.


てづるもづるについて~クモヒトデの体の仕組み④~

ARm

こちらはミツイタクモヒトデの腕の中部あたりの口側の画像.

画面の上側が腕の先端,下側は腕の基部(盤より)です.
 

前回記事にした,腕の反口側の構造同様,

口側でも,腕節を構成する以下の骨片のセットが観察できます.
 

①口側正中線上に並ぶ「腹腕板」

②その側面にある「側腕板」

③反口側でも見られる「腕針」

④通常は最も口側の根元にある触手孔の蓋の役割をする「触手鱗」
 

クモヒトデが骨片より成る動物である事が伺えるかと思います.

勿論内臓などの内部構造もあるのですが,それはまた別の機会に.
 

因みに,ツルクモヒトデ目では触手鱗がなく,

最も口側の腕針が触手鱗の役割を果たしています.


至福の時

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年末年始にかけて採集してきたクモヒトデの同定(種名を調べること)を行っています.

顕微鏡でのぞきながら,文献と比較.

一見同じように見えるクモヒトデですが,

顕微鏡で観察すると,その形の多様性に驚きます.
 

IMG_4882

同定した標本に耐水紙のラベルを入れて,

瓶に整理.
 

IMG_4886

仮番号を付けて,整理をしていきます.

最終的には,博物館相当施設に収めて,研究に活かします.
 

分子実験も嫌いではないですが,

私の場合,いろいろな疑問が湧いくるのは検鏡している時です.
 

なかなか時間がとれないこともありますが,

こうしてクモヒトデ研究に携わる時間は幸せで落ち着きます.

そんな小さな幸せを噛みしめる冬の夜更けでした.


てづるもづるについて~クモヒトデの体の仕組み③~

出張の様子のレポートはひとまず置きまして,

クモヒトデの体の仕組みについて書きます.

これまで盤の仕組みついて解説をしましたが,

次は腕について.
 

Aboralarm

こちらは,ミツイタクモヒトデの腕の反口(背)側です.
 

クモヒトデの腕は,竹のような節の繰り返し構造になっています.

この節を腕節といい,一つの腕節は,

いくつかの骨片の組み合わせより成ります.
 

背側から観察できるのは主に,
 

①背腕板という板状骨片,

②その側面にある側腕板という板状骨片,

③側腕板に関節している腕針という針状骨片,
 

の三種類です.
 

特に腕針は棒状,フック状,鋸状など形が多様で,

その数も一腕節において一本から十数本と変化大きいため,

極めて重要な分類形質となっています.


クモヒトデの骨片観察法

クモヒトデを分類する際には,体の中の微小骨片の観察が必要になる時があります.

今日はその観察法をレクチャーいたしましょう.
 

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①まず時計皿に,観察したい部位を入れます.
 

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②ハイターを,
 

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③注入.
 

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③軟組織が泡を立てて溶け始めます.
 

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しばらく待つと,骨片が出てきました!
 

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④ピペットでハイターを取り除きます.

骨片を吸い込んでしまわないように注意.

ハイターは乾燥すると結晶化するため,観察の邪魔になります.
 

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そこで,⑤水ですすいでやります.

極力ハイターを取り除き,洗瓶で純粋を注入.
 

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⑥ピペットで水を吸い出す操作を2-3回繰り返します.
 

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⑦水分をなるべく取り除いた後は,乾燥するまで待ちます.

最後に,水の代わりにエタノールですすぐと乾燥が早くなります.
 

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ピンセットで,骨片を両面テープに張り付けて完成!

あとはSEMで観察するのみです!

 


Moth Philia

 

 

ひょんなことからこんな物を手に入れました.
 

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蛾を擬人化」した本です!
 

実に37羽の蛾が擬人化されているのですが,

特筆すべきは写真がほとんどないこと.
 

蛾人には必ず羽が生えているので,

写真がなくても同定ができるというわけです.
 

図鑑だけでなく,イラストや,登場蛾人の漫画まで収録されています.
 

知り合いの研究者さんが監修されているので分類学的操作もばっちり!

この冬,あなたも蛾の世界に足を踏み入れてみては?


つくば

 

出張で国立科学博物館(筑波)に来ております.
 

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日本には一体何種のキヌガサモヅルがいるのか?

その謎を解き明かすべく,片っ端から標本を観察するのです.

(もちろん拠点の仕事も兼ねています)
 

キヌガサモヅルの標本の乾かし中.

先日の記事の写真もそうですが,

乾燥させた方がクモヒトデの骨片の形ははっきり見えるのです.

 
 

とりあえず乾燥の仕込み(?)をして,

明日からは本格的な観察の開始です.

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一仕事終えた後の一杯.

これからしばらく,標本漬けの日々です!


てづるもづるについて~クモヒトデの体の仕組み②~

クモヒトデの体の仕組みがどうしても知りたいあなたへ,

クモヒトデの形態解説第二弾です!
 

前回と同じミツイタクモヒトデをみながらその体の仕組みを理解しましょう.

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こちらは体の口側.盤の真ん中には口があります.
 

Oraldisc3

鱗しかなかった反口側と違い,口側はやや複雑.
 

 五つの腕の延長線上の交差点に口があり,

様々な形の骨片が組み合わ去っているためです.
 

まず,口の入口部分は五つの顎に囲まれており,

その先端に生える歯で口を通る餌を咀嚼します.
 

この画像では全貌が見えませんが,歯は歯板という板状の骨片に間接しており,

歯版は口板という骨片に支えられています.

口板の外側には側口板が配置し.

対になった側口板の間には口楯という板状の骨片があります.

多くの種ではこの口楯の一つが巨大化し,多孔体の役割を果たします.
 

というように,口の周りを構成する骨が複雑に配置しています.

また,顎のスリット部分の最も口側には,

口棘と呼ばれる,歯に似た骨片が並んでいます.
 

また,間輻部と呼ばれる盤の口側の腕と腕の間には,生殖裂孔があります.

この生殖裂孔の縁に生じる突起は生殖棘です.
 

後にも述べたいと思いますが,

口の中から腕の先端までは触手の列が伸びており,

多くの種はこの触手伝いで,食物を口に運んでいると思われます.
 

このような歯,口棘,歯板,口板,側口板,口楯,

生殖裂孔,生殖棘などの形,数,大きさなどが分類形質になるのですが,

これらは,比較的高次(属や科)の分類に

使われていると思います.

(はっきりと検討したわけではありません).
 

一目には似たような形のクモヒトデですが,

顕微鏡レベルでは様々な形の違いが見て取れます.


てづるもづるについて~クモヒトデの体の仕組み①~

突然ですがクモヒトデの体の仕組みを解説いたします.
 

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ミツイタクモヒトデOphionereis prorrectaの反口側.

以前,ちょろっとだけ触れましたが,多くのクモヒトデは,

体の真ん中の「盤」という部分と「腕」が,見た目で明瞭に分けられます.

(実質的なヒトデとの違いは,歩帯溝がないことです)
 

クモヒトデの体はいろんな形の骨片に覆われており,

その形状が分類に使われています.

今回は,盤の形状についてご紹介します.
 

Aboral disc
上記個体の反口側の盤の拡大画像.

じゃーん,こちらが,盤の反口(背)側です.

基本的に,クモヒトデの盤は,「盤鱗」と呼ばれる鱗に覆われています.

この鱗も様々な形があり,盤のど真ん中のものひときわ大きく「中背板」と呼ばれ,

その周りに配置している5つの比較的大きなものは「下址板」と呼ばれます.
 

これらは合わせて「第一次板」と呼ばれ,他の盤鱗と区別されます.
 

また,腕の付け根部分には,輻楯(ふくじゅん)と呼ばれる対の鱗があり,

この形や大きさは多くの種で重要な分類形質となっています.
 

勿論,鱗だけでなく棘や皮に覆われたり,第一次板のような鱗の区別がないもの,

輻楯が他の骨片などに覆われて見えないものがいたりと,種によって形質状態は様々ですが,

これらの特徴は昔も今も重要な形質として使われていることは間違いありません.


Asteroporapa (Astromoana) koyoae Okanishi & Fujita, 2011(コウヨウモアナモヅル)

Asteropoapa (Asteromoana) sp

Family: Goegonocephalidae テヅルモヅル科

Subfamily: Gorgonocephalinae テヅルモヅル亜科

Genus: Asteroporpa シゲトウモヅル属

Subgenus: Asteroporpa (Astromoana) モアナモヅル亜属

Specific name: koyoae コウヨウモアナモヅル
 

トゲモアナモヅルと同時に記載したモヅルです.

当然のことながら,発表当時は日本初記録亜属のモヅルでした.



2009年に小笠原での科博の深海調査に参加させてもらった際に,

お世話になった水産実験センターの方が,

「例えば,深海籠調査ではこんなのが採れますよ~.」

と言いながら気軽に見せてくださったものの中に混じっていました.



①盤の反口側の縁部に,フックがついた板を持つ,

②盤の反口側は一様な大きさの円錐型皮下骨片に覆われる

③それらの皮下骨片の先端には,皮下骨片の高さよりも長い棘が生じる

 

といった特徴で他種と区別できます.

せっかくなので,水産実験所の研究船「興洋」に献名しました.

本種はこの個体以降採集されていないため大層珍しいのだと思われます.

採集における人脈の大切さを教えてくれた種です.

 

撮影:岡西政典


Asteroporapa (Astromoana) muricatopatella Okanishi & Fujita, 2011(トゲモアナモヅル)

 

DSC_6487 (コピー)

Family: Goegonocephalidae テヅルモヅル科

Subfamily: Gorgonocephalinae テヅルモヅル亜科

Genus: Asteroporpa シゲトウモヅル属

Subgenus: Asteroporpa (Astromoana) モアナモヅル亜属

Specific name: muricatopatella トゲモアナモヅル
 

こちらはなかなかの珍モヅルです.

シゲトウモヅル属は日本の太平洋側から古くより記録が知られるのですが,

1980年にニュージーランド産の種に対して設立されたモアナモヅル亜属は,

日本からは知られていませんでした.
 

同属のシゲトウモヅルAsteroporpa (Asteroporpoahadracantha は古くより日本の太平洋側より記録があります.

科博にもたくさんのシゲトウモヅルの標本があり,

それらを調査していたところ,6個体ほど入った瓶の中に,

1個体だけ顕微鏡で見ると明らかに形態が異なる種を見つけました.
 

それがこのトゲモアナモヅルです.
 

①盤の反口側の縁部に,フックがついた板を持つ,

②盤の反口側は一様な大きさの円錐型皮下骨片に覆われる

③それらの皮下骨片の先端には,皮下骨片の長さよりも短い棘が生じる
 

クモヒトデでは,パッと見て,すべて同種だろうと思うような数が採れることがよくあるのですが,

実際に検鏡して見るとこのように別種が混じっていることがよくあります.
 

 

どのような分類群でもそうかもしれませんが,

必ず検鏡しないと「同定した」と言えない,ということを教えてくれた種です.

撮影:岡西政典


分類(献)学

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最近,日本のクモヒトデの情報をまとめています.

テヅルモヅル類についてはほぼ完全にまとめているのですが,

クモヒトデとなると,まだ完全ではありませんでした.
 

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実は分類学には文献学の側面もあり,

たとえばとあるグループの分類の情報を整理する際には,

過去のいかなる情報も漏らさず目を通す必要があります.

先人が残したクモヒトデの記録情報を,

種名,場所,日付,水深,水温などの項目ごとに,一件一件まとめます.
 

結構単純作業なのでやってる途中は本当にしんどいのですが,

ある程度情報量が増えてくると,不思議なことに,

生物の特性の分布の関係が浮かび上がったりしてきます.

生物学はこのような毎日の地道な作業の積み重ねですね.
 

ちなみにこのデータは,エクセルに打ち込んでデータベースなどに運用するのですが,

そんなものがなかった昔(1800年代とか)の研究でも,

正確に記録がまとめられています.
 

偉大な先生方にはまだまだ及びません.


もづるcafe

 

2014年12月7日に,東京高田馬場にて,モヅルカフェを開催してきました!
 

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サイエンスカフェということで,雑誌の表紙などを参考に,

なるべくオシャレなフォントを使ってタイトルページを作りましたが,

持ち込んだノートPCへのフォントのインストールを忘れたため,

あえなく撃沈.慣れないことはするもんじゃないですね(笑)
 

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たっぷり一時間半,モヅルや研究についてあれこれしゃべってきました.
 

そもそも,テヅルモヅルとは何者なのか?

海藻ではありませんよ!「クモヒトデ」です!
 

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では,そのクモヒトデとは何者なのか?

クモでもヒトデでもありません!でも,ヒトデはちょっと惜しい!
 

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クモヒトデもヒトデも,ウニやナマコと同じ「棘皮動物」というグループに含まれます.

じゃあ,よく言われるクモヒトデとヒトデの違いとは?
 

IMG_4758

私が専門にしている分類学ってどんな学問?

その歴史と実際まで,楽しく解説してきました.
 

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なぜ,私はテヅルモヅルを研究しているのか?

テヅルモヅルを研究する意義とは?8年間蓄積した情熱をぶつけてきました.
 

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そして,前日の棘皮動物研究集会でも発表した,

キヌガサモヅルの分子系統地理のお話もしてきました.
 

参加者(サポーター)の方から「思ったより進んでいてびっくりした」とおっしゃっていただきました!
 

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最後に,みなさんでもづるポーズ!!
 

「もづるトークをします」との呼びかけに,これだけの人が集まってくださいました.

なかなか注目されにくいマニアックな研究でも,

ちゃんと人の知的好奇心の一部を満足させられることが分かっただけでも,

開催して良かったと思います.
 

academistの支援者の皆様,

academist事務局の柴藤さん,森さん,

そしてもづるカフェにご参加いただいた皆様,
 

本当にありがとうございました!
 

これからも頑張ります!


ウチノミナンカイヒトデ

 

「珍しいヒトデが入った!」

という話を聞きつけ,水族館へ向かいました!
 

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こちら!ウチノミナンカイヒトデAsterodiscides helonotusです!

このナンカイヒトデ類(科)は,腕の先っちょの1対の上縁板が特に大きくなるのが特徴で,

和歌山県立自然史博物館で飼育されていたヤマトナンカイヒトデもこの特徴を持つのですが,
 

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この種の上縁板はずいぶん巨大です.

まるで蹄のよう...
 

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体表面を覆う顆粒も,色々な形があってかっこいいですね!
 

因みにこの種は,偉大なヒトデ研究者であるFisherによって1913年に新種として発表されたという事なのですが,

原記載と思われる以下の文献にあたってみましたが,どうにも記録が見つかりません.
 

Fisher, W.K. (1913)

“Four new genera and fifty-eight new species of starfishes from the Philippine Islands,

Celebes, and the Moluccas”

Proceedings of the US National Museum, 43: 599-648.
 

うーん,なぜでしょうか.情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら,ご連絡くださいませ.
 

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因みに,白浜水族館には,今年になって飼育を始めた可愛いオカヤドカリや,
 

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我々がドレッジ調査で採集したスナダコ等が飼育されていました.

冬休みは解説ツアーもやりますよ!
 

是非ともお越しください!

 


タイに行ってきました⑨

 

タイでの調査について,いろいろ書いてきましたが,

肝心の収穫をお見せ致しましょう!
 

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収穫その①「チビクモヒトデ」

まずは小手調べ.世界中の海岸域に生息していると言われているクモヒトデです.

分裂によって増え,時々水族館の水槽などにうじゃうじゃ沸くことがあります.

でも悪さはしません...多分.
 

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その②「トゲクモヒトデ科の一種」

おそらくトゲクモヒトデ属Ophiothrixかと思いますが,検鏡しないとわかりません.

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なかなかカラフルな種です.

この類は,ダイビングではほぼ必ず採集することができます.
 

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その③「オニクモヒトデ」?

これはなかなか味わい深い色彩ですね...
 

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こちらは盤の拡大画像.

配色や,このような盤上にみっしり生えた棘から同定していますが,

やはり実際には顕微鏡で口側などを見て見なくてはなりません.
 

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その④「ウデナガトゲクモヒトデ属の一種」

その名のとおり,腕がながーーーいクモヒトデです.
 

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うーん,よく見ると盤上を覆う微小な突起がかっこいいです!

うっとり...
 

ちなみに,腕の付け根に見える三角系の部分は輻楯(ふくじゅん)と呼ばれており,

その形,大きさ,刺などの被度などが分類形質となっています.


 

こんなふうに,ひとくちにクモヒトデといっても,

よーく見るといろんな形があってかっこいいのですよ!
 

IMG_7460

ちなみにこちらが口側.
 

ふわふわ触手みたいに伸びているのは,そのまんま「触手」と呼ばれるもので,

ヒトデやウ二が移動に使う吸盤(管足と呼ばれます)と相同です.
 

クモヒトデでは腕自体をくねくね動かして移動するので,

この触手に移動するほどの吸着力はありませんが,

その他様々な事に使われており,

例えばこの種では触手を使って腕の先で捉えた餌を,

口まで運んでいるのを見かけます.
 

腕を伸ばしたままで自動的に餌を得る...

夢の寝そべり生活ですよ!


 

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そして,これが今回の目玉ですよ!

このヤギをよーーく見てみると...?
 

IMG_7470

クモヒトデが絡んでいます!
 

その⑤「ニシキクモヒトデ」です!
 

今回はじめて,タイの西側のアンダマン海で採れました!
 

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タイの東側のタイ湾では,一つのヤギに様々な色彩変異が見られましたが,

こちらのものはどうも全て同じ色彩のようです.
 

そもそもこれらは同じ種なのか?

それとも色が違えば別種なのか?
 

このようにある種の色彩一つをとっても,

まだまだわからないことだらけです.
 

タイにおいては大雑把な種数も分かっていない状況ですが,

私が三回調査しただけでもこれだけの種が採れ,

その多くが分類学的な問題を抱えています.
 

このような状況ですから,例えば,

「タイにはどれくらいのクモヒトデがいるの?」

という質問の答えをだすためには,10年以上はかかるでしょう.
 

と言って,やる人がいなければ,また数十年,

タイのクモヒトデの種数はわからないままです. 
 

クモヒトデに限らず,多くの無脊椎動物の分類学的研究は,

まだまだこんな状況です.
 

しかし,実際にはいろんな分類学者が,

日々自分の研究対象の謎を解明すべく,

細々と頑張っています.

応援してくださいね!
 

ということで,たまには自分の研究話でした!
 

続く.


分類学について⑥

行ってみましょう!
 

恒例の!
 

「分類学について!」
 

コンビニで迷うことなく目的のものを買うことができるのは,

体系的に陳列されているからだということは,前回お話いたしました.
 

では,生物の名前も混乱が内容に用いるためにはどうすればよいのか?

答えは簡単で,同じように体系化すればよいのです.
 

実際,体系的な名前の整理は,紀元前4世紀ごろ,アリストテレスの時代から行われてきました.

しかし,リンネはここに「階層性」という革命的な概念を取り入れたのです.
 

分類学ってどんな学問?[岡西]

まず,とあるところに,12種のテヅルモヅルがいたとしましょう.

この12種の中から,似たものどうしを集めて集団にします(これを「クラスター」といいます).
 

分類学ってどんな学問?2[岡西]

さらに,このクラスターをさらに似たクラスター同士にまとめます.
 

分類学ってどんな学問?[3岡西]

これを繰り返すと,このような入れ子構造ができてきます.
 

分類学ってどんな学問?[岡西]4

これがリンネの考えだした「階層性」で,それぞれのクラスターのレベルに

分類階級(属,目,綱など)を与えました.

これが現在も使われている「階層式分類体系」です.
 

これは,写真などのファイルをフォルダに振り分ける作業に似ているかもしれません.

そもそも,PCではファイルを「階層」で分けていますよね.
 

リンネが初めてこの階層性を用いた際には,

「綱,目,科,種」が使われていましたが,

その後研究が進むにつれ,細分化などが進み,

少なくとも動物では,現在では以下のように,
 

分類学ってどんな学問?[岡西]5

上から順に「ドメイン,界,門,綱,目,科,属,種」等が用いられています.

しかしもちろんこれは日進月歩で,

最近では界と門の間にいくつかの分類階級群が存在するということで,
 

○亜界

(左右相称動物亜界)(非左右相称動物亜界)
 

○下界※非左右相称動物亜界の中で

(前口動物下界)(後口動物下界)
 

○超門

(脱皮動物超門)(冠輪動物超門)(脊椎動物超門)(歩帯超門)
 

等が設けられるようです.

http://rspb.royalsocietypublishing.org/content/281/1794/20141729.abstract
 

ですが,これらはいずれも「界」や「門」に付随して設置された階級で,

基本的な階級に変更はありません.
 

あと,この論文のフォーカスはこのような階級の設定ではなく,

脊椎動物を三つの門に分ける,というところです.念のため.
 

このあたりの階級についてのお話はまた今度.


てづるもづるとは⑦

テヅルモヅルの分類について,少しずつお話してきますよ!
 

テヅルモヅルは,クモヒトデ綱ツルクモヒトデ目に所属しますが,

テヅルモヅル≠ツルクモヒトデ目です.
 

ツルクモヒトデ目の中には腕が分岐しないものもいます.

こう書くと腕が分岐しない種の方がマイナーっぽいですが

実は腕が分岐しない種の方が多数派です.
 

現在約180種が知られているツルクモヒトデ目のうち,

テヅルモヅルはなんとたった63種で,1/3くらいです!

棘皮動物研究集会

これこのとおり.
 

つまり,テヅルモヅルはマイナー(クモヒトデ綱)中の

マイナー(ツルクモヒトデ目)中の

さらにマイナーな存在なのです.

これでは研究が進むわけありません.
 
 
 

では,腕が分岐しない種と腕が分岐する種は何が違うのか?
 

私のこれまでの系統分類学的な研究の結果から,

少しずつその適応的な意味が分かってきています.
 

続く.


テヅルモヅルとは⑥

クモヒトデがツルクモヒトデ目とクモヒトデ目に分けられるということですが,

ではこの二目は何が違うのか.
 

以前は腕の腕骨と呼ばれる骨の形で分けられていましたが,

研究が進むにつれ,両目で共通の形の腕骨がみられることが明らかになり,

現在では腕骨による分類はできません.
 

私が研究を進めていたところ,

どうやら二目は腕の別の骨片によって分けられることがわかってきました.
 

クモヒトデ類は腕の周りに腕針と呼ばれる針状の硬い器官を備えています. 
 

実はツルクモヒトデ目とクモヒトデ目は,

この腕針の配置が決定的に異なるのです.
 

クモヒトデ目では,この腕針が須らく腕の側面についています.例外はありません.

これに対しツルクモヒトデ目では腕針がすべて口側についてます.

クモヒトデを反口側から見てみると一目瞭然で,

クモヒトデ目の腕はなんだかフサフサしているのに対して,

ツルクモヒトデ目はつるっとしています.
 

Eu-Oph

(左)ツルクモヒトデ目のキヌガサモヅル(Asteronyx loveni)と

(右)クモヒトデ目のスナクモヒトデ科の1種の反口側(背側).



キヌガサモヅルは腕がツルっとしてますが,

スナクモヒトデ科の一種は腕がフサフサしているのがお分かりいただけますでしょうか?


ただし,この腕針が退化的で非常に小さくなっている種もいますので,

確実に見分けるためには顕微鏡が必要です.



 
腕針の配置なんて簡単に変わりそうなものですが,この違いはかなり顕著ですので,

何か重要な機能的な理由があるのではと考えられます.



 

ツルクモヒトデ目の多くの種は,

現生の種をみる限り,ヤギなどのサンゴに絡んでいます.

一方クモヒトデ目は(例外はありますが),ヤギに絡むことはほとんどありません.

口側の腕針は,ひょっとするとヤギに絡むために発達した器官なのかもしれません.



 

この腕針の機能の探究も,てづるもづる研究の一つの興味深いテーマかもしれませんね.


テヅルモヅルとは⑤

最近友人から,
 

「このHPを見てもてづるもづるについて何もわからないじゃないか!」
 

というご指摘を頂きました.
 

全くその通りかと思います.
 

ということで,もう少し真面目にテヅルモヅルについてお話をします.
 

これまでにヒトデ綱とクモヒトデ綱の違いをお話ししました.

次はいよいよクモヒトデ綱の中の分類についてお話いたしましょう.

クモヒトデ綱は現在約2070種が知られており,

おそらく棘皮動物門の5つの綱中では最多種数です.
 

その最たる理由は,おそらく柔軟な腕にありましょう.

この腕を器用に動かすことで,体を小さく折りたたみ,

岩の隙間,砂の中,サンゴなどの他の動物の上など,

他の棘皮動物には到達しえない様々な環境に生息可能となった結果,

多様性を獲得できたと考えられています.
 

しかし悲しきかな.
 

これらは基本的には隠蔽的,すなわち人目に付かない環境ばかりです.

従って,彼らは莫大な種多様性を獲得しながらも,

知名度ではウニ,ナマコ,ヒトデには遠く及びません.

Yahoo Newsにのりました!
 

少し話が脱線しました.話を分類に戻しましょう.

クモヒトデは種数が多いため分類群が多く,

科の数は20を超えていています.

しかしながら,目の数はたった二つ,
 

クモヒトデ目ツルクモヒトデ目です.
 

しかしこの分類には大きな偏りがあり,クモヒトデ目が約1900種なのに対し,

ツルクモヒトデ目は180種ほどです.
 

実はテヅルモヅル類が属しているのはこのツルクモヒトデ目です!
 

すなわち,テヅルモヅルは,
 

マイナーなクモヒトデ綱の中でもさらにマイナーなグループなのです.
 

続く.


分類学について⑤

さてさて分類学について,まだ語ってみますよ! 
 

ちょっとものの整理について考えてみましょう.

例えばお菓子とジュースを買いにコンビニに行くとします.

まずはコンビニの中ほどにあるお菓子コーナーでポテチを物色.

店の壁際のショーケースに並ぶ飲料コーナーで,

ポテチに合うコーラを物色し,颯爽とレジへと向かうわけです.
 

実はこのような何気ない日常を過ごせるのは,

コンビニのものがコーナーごとに体系的に並べられているからにほかなりません.
 

では,体系的に並べられていないとどのようなことになるのか?

今度はスーパーを例にとってみましょう.
 

全体像の理解の難化1

スーパーでは果物,野菜,魚・肉がコーナーごとに並べられています.
 

例えばこれをアイウエオ順に並べてみるとどうなるでしょうか?
 

イチゴの隣にキャベツがあり,魚の横にジャガイモがあり...

これでは,果物を選ぶために,イチゴとミカンを比べたいと思ったときに,

店の端と端を行ったり来たりしなくてはならずとても不便です.
 

全体像の理解の難化2

ここにお菓子や飲料が入ってきたらもう大変です.
 

きっと「こんな店二度と来るか!」と思ってしまうでしょう.
 

このように,たくさんのものを単純に名前で並べただけでは,

その全体像の把握は実は非常に難しくなってしまうのです.
 

中世ヨーロッパでも,次々に持ち込まれる動植物の全体像の把握が

段々と困難になっていきました.
 

そこで,この状況を打開すべく,リンネがある方法を考え出したのです.
 

その方法とは!?
 

続く


分類学について④

8月末から9月は出張・実習で大忙しです!
 

8/30-9/1 鳥取

9/4-9/10 京大実習

9/11-9/14 仙台(動物学会参加)

9/16-21 大阪大学実習(留学生)

9/24 ドレッジ調査

9/25-9/30 大阪大学実習
 

その間に書類や論文の締切などがあったり.うおー,がんばります!

この夏が踏ん張りどころです.
 
 

さて...

たまには真面目な話を続けますよ!
 

二名法の利点は,単に名前が短くなったたけではありません.

もう一つの利点は,「名前を記号として扱った」ことです.
 

実はそれまでの生物の特徴を表す形容詞がどんどん付されていった名前は,

その種の名前であると同時に,定義でもありました.
 

従って,その種の定義が変わってしまった際には,

その名前も変更されることになります.
 

例えば,
 

「灰色の 毛並みがいい 足の早い 北欧産の オオカミ」
 

がいたとして,これによく似ていてちょっと毛の色が薄い
 

「薄灰色の 毛並みがいい 足の早い 北欧産の オオカミ」
 

がいたとします. 
 

そして前者の種があるとき,ヨーロッパ全体に分布していることが確認され,
 

「灰色の 毛並みがいい 足の早い 欧州産の オオカミ」
 

と改名されたとします.

さて,この2種についての狩人の会話はどんなものになるでしょうか.
 

狩人A「このあいだ”灰色の 毛並みがいい 足の早い 北欧産の オオカミ”みたんだよ.

この辺にもいるんだな.でもなんかちょっと毛の色が薄かった気がするんだよね」
 
 

狩人B「ちょっとまてまて最近”灰色の 毛並みがいい 足の早い 北欧産の オオカミ”は

“灰色の 毛並みがいい 足の早い 欧州産の オオカミ”に名前が変わったんだよ.」
 
 

狩人C「え,それって”薄灰色の 毛並みがいい 足の早い 北欧産の オオカミ”の可能性あるかも!

それってレア種だよ!すげー!」
 
 

狩人A「え?”薄灰色の 毛並みがいい 足の早い 欧州産の オオカミ”?」
 
 

狩人B「いやだから”灰色の 毛並みがいい 足の早い 欧州産の オオカミ”でしょ?」
 
 

狩人C「違う違う,Aがみたのは”灰色の 毛並みがいい 足の早い 欧州産の オオカミ”じゃなくて

“薄灰色の 毛並みがいい 足の早い 北欧産の オオカミ”かもって話だよ.

毛の色が薄かったんなら.

“薄灰色の 毛並みがいい 足の早い 欧州産の オオカミ”なんてのはいないよ.

あ,でも最近”灰色の 毛並みがいい 足の早い 北欧産の オオカミ”が

“灰色の 毛並みがいい 足の早い 欧州産の オオカミ”に名前が変わったって話を考えると,

もしAが見たのがほんとに”薄灰色の 毛並みがいい 足の早い 北欧産の オオカミ”だったんなら,

こいつの名前も”薄灰色の 毛並みがいい 足の早い 欧州産の オオカミ”に変えないとかもね.」
 
 

狩人A, B「え?」

いかがでしょう?たぶん私はこんな会話されたら絶対についていけません.
 

リンネの二名法では,名前をあくまでも記号として扱い,定義は別のものとして扱いました. 
 

つまり,種の形質(この場合は分布域)が変わろうとも,名前は変えなかったわけです.

上の会話の
 

「灰色の 毛並みがいい 足の早い 北欧産の オオカミ」

および「灰色の 毛並みがいい 足の早い 欧州産の オオカミ」

と呼ばれていた種を二名法で
 

「灰色の オオカミ」に,
 

「薄灰色の 毛並みがいい 足の早い 北欧産の オオカミ」を

二名法で
 

「薄灰色の オオカミ」

にしてみましょう.
 

狩人A「このあいだ”灰色の オオカミ”みたんだよ.この辺にもいるんだな.でもなんかちょっと毛の色が薄かった気がするんだよね」

狩人B「ちょっとまてまて最近”灰色の オオカミ”はこの辺にもいるってことが分かってきてるんだよ.」
 
 

狩人C「いや,それって”薄灰色の オオカミ”の可能性あるかも!それってレア種だよ!すげー!」
 
 

狩人A「え?”薄灰色の オオカミ”?」
 
 

狩人B「あー,”灰色の オオカミ”じゃないのか」
 
 

狩人C「そうそう,Aがみたのは”灰色の オオカミ”じゃなくて”薄灰色の オオカミ”かもって話だよ.」

となるはずです.会話がとてもすっきりしますね.

※例が強引という批判は甘んじて受けます.

このように,名前はあくまでも記号としてたことで,

生物の名前の複雑化に伴う混乱は解消したといえるでしょう.
 
 
 

そしてさらに!
 
 
 

リンネはこの二名法の他にさらに便利な方法を開発していたのです!
 

 
 

続く.

 


分類学について③

めっちゃ途切れ途切れになっておりますが,

久々に分類学についてのお話をば.
 

舞台は中世ヨーロッパです.生物の名前がどんどん長くなり,

目前に迫った生物資源利用の困難化救ったのが,

スウェーデンの博物学者
 

カール・フォン・リンネ(Carl von Linné)

でした.
 

彼はその著書「自然の体系(Systema Naturae)」の中で,

生物の名前を表すのに「二名法」という方法を採用しました. 
 

二語名法

これは,分類の最小単位「種」の学名である「種名」の表示法です.

基本セットは「属名」+「種小名」です.
 

属名は必ず名詞です(ですから一文字目が大文字です).

種小名は,基本は形容詞なので,種名は種小名が属名を形容する

(「灰色のオオカミ」など)

形になります.
 

ただし,種小名は名詞でもかまいません.
 

時々,名詞が二つ続く事に違和感を覚える方もいらっしゃいますが,

例えば「オレンジ・ジュース」みたいなものと思っていただければよいでしょう.
 

学名は

「ラテン語」
 

で表されます.
 

例えば種小名にsabineaeとか,japonicusとか,

“ae”とか”us”とかの聞きなれない語尾がついていることがあるかと思いますが,

これは全て単語をラテン語化する際につけられた語尾です.
 

以下に,種小名に頻繁にみられるラテン語尾をリストアップします.
 
 

“***i”, “***ae”:人名などの有性単語につける語尾.

男性にはi, 女性にはaeを付ける(ちなみに船は女性名詞です).

例) smithi, soyoaeなど
 
 

“***ensis”, “***iensis”:地名につける.

例) nipponensisなど
 
 

“***(a)nus”, “***inus”, “icus”:地域名につける

例) japonicusなど
 
 

ただし,これらの綴りや組み合わせは,

もとになった単語(語幹)が単数か複数かよっても変わりますし,

出来上がる単語の響きによっては,iが追加されたり,

語幹の一部が削られたりするので,一概にこうと言えるものではありません.
 

先にも述べましたが,種小名は名詞で表すこともできます.

例えば”soyoae”は蒼鷹丸という中央水研の有名な調査船に献名した種小名ですが,

単に”soyo”という名詞を種小名に使っても同じような意味となります.

ラテン語の名詞と考えればよいのです.
 

少し長くなってしまいましたが,このようなラテン語の2単語の後に「命名者」+「命名年号」が続き,

4単語が基本となって種名が表されます.

(亜種,亜属などが含まれるともっと単語数は増えますが,その説明はまたの機会に)
 

この二名法の発明により,生物の名前が簡便に表され,

それまでの混乱が解消されることとなりました.
 

これは「リンネ式二名法」と呼ばれ現在も変わらず用いられているため,

リンネは現代分類学の父と称されています.
 
 
 
 

...しかし!

実は,二名法のメリットはこれだけではないのです!

ふふふ,気になってきたでしょう.

続きはまた今度!


若手分類学者の集い②

命名規約の輪読会は,主にこちらの部屋で行われていました.

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北は北海道,南は白浜(私ですね)から集った輪読戦士達です.

研究対象も,海産無脊椎動物から陸産の昆虫,アンモナイトと,現生化石問わず多様でした.

また,なんとこの間入学したばかりの学部の一年生も勉強に来ていました.

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そんな中で,異彩を放つ学生が一人.

広島大学が生んだ奇才,自見直人くんです.

ご覧ください,“No polychaeta No life”Tシャツです(笑)

「多毛類なくして人生なし!」

※多毛類…ゴカイなどを含む環形動物の仲間.体の各体節に剛毛をもつ.

この覚悟は見習わなくてはいけません!

ちなみに彼は,今月末瀬戸に来所の予定です.

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そんなこんなで内容の濃い二日間が終わりました.

終わったあとはみんなで打ち上げ!

命名規約の話や,各人の研究の話で盛り上がって,みんな仲良くなっていきます.

このあと,それぞれの場所へ帰って行きました.

さらに科博で調査予定だった私は,そのまま筑波に残りましたとさ.