タイでの調査について,いろいろ書いてきましたが,
肝心の収穫をお見せ致しましょう
収穫その①「チビクモヒトデ」
まずは小手調べ.世界中の海岸域に生息していると言われているクモヒトデです.
分裂によって増え,時々水族館の水槽などにうじゃうじゃ沸くことがあります.
でも悪さはしません...多分.
その②「トゲクモヒトデ科の一種」
おそらくトゲクモヒトデ属Ophiothrixかと思いますが,検鏡しないとわかりません.
なかなかカラフルな種です.
この類は,ダイビングではほぼ必ず採集することができます.
その③「オニクモヒトデ」?
これはなかなか味わい深い色彩ですね...
こちらは盤の拡大画像.
配色や,このような盤上にみっしり生えた棘から同定していますが,
やはり実際には顕微鏡で口側などを見て見なくてはなりません.
その④「ウデナガトゲクモヒトデ属の一種」
その名のとおり,腕がながーーーいクモヒトデです.
うーん,よく見ると盤上を覆う微小な突起がかっこいいです
うっとり...
ちなみに,腕の付け根に見える三角系の部分は輻楯(ふくじゅん)と呼ばれており,
その形,大きさ,刺などの被度などが分類形質となっています.
こんなふうに,ひとくちにクモヒトデといっても,
よーく見るといろんな形があってかっこいいのですよ
ちなみにこちらが口側.
ふわふわ触手みたいに伸びているのは,そのまんま「触手」と呼ばれるもので,
ヒトデやウ二が移動に使う吸盤(管足と呼ばれます)と相同です.
クモヒトデでは腕自体をくねくね動かして移動するので,
この触手に移動するほどの吸着力はありませんが,
その他様々な事に使われており,
例えばこの種では触手を使って腕の先で捉えた餌を,
口まで運んでいるのを見かけます.
腕を伸ばしたままで自動的に餌を得る...
夢の寝そべり生活です
そして,これが今回の目玉です
このヤギをよーーく見てみると...?
クモヒトデが絡んでいます
その⑤「ニシキクモヒトデ」です
今回はじめて,タイの西側のアンダマン海で採れました
タイの東側のタイ湾では,一つのヤギに様々な色彩変異が見られましたが,
こちらのものはどうも全て同じ色彩のようです.
そもそもこれらは同じ種なのか?
それとも色が違えば別種なのか?
このようにある種の色彩一つをとっても,
まだまだわからないことだらけです.
タイにおいては大雑把な種数も分かっていない状況ですが,
私が三回調査しただけでもこれだけの種が採れ,
その多くが分類学的な問題を抱えています.
このような状況ですから,例えば,
「タイにはどれくらいのクモヒトデがいるの?」
という質問の答えをだすためには,10年以上はかかるでしょう.
と言って,やる人がいなければ,また数十年,
タイのクモヒトデの種数はわからないままです.
クモヒトデに限らず,多くの無脊椎動物の分類学的研究は,
まだまだこんな状況です.
しかし,実際にはいろんな分類学者が,
日々自分の研究対象の謎を解明すべく,
細々と頑張っています.
続く.