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タイに行ってきました⑨

 

タイでの調査について,いろいろ書いてきましたが,

肝心の収穫をお見せ致しましょう
 

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収穫その①「チビクモヒトデ」

まずは小手調べ.世界中の海岸域に生息していると言われているクモヒトデです.

分裂によって増え,時々水族館の水槽などにうじゃうじゃ沸くことがあります.

でも悪さはしません...多分.
 

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その②「トゲクモヒトデ科の一種」

おそらくトゲクモヒトデ属Ophiothrixかと思いますが,検鏡しないとわかりません.

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なかなかカラフルな種です.

この類は,ダイビングではほぼ必ず採集することができます.
 

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その③「オニクモヒトデ」?

これはなかなか味わい深い色彩ですね...
 

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こちらは盤の拡大画像.

配色や,このような盤上にみっしり生えた棘から同定していますが,

やはり実際には顕微鏡で口側などを見て見なくてはなりません.
 

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その④「ウデナガトゲクモヒトデ属の一種」

その名のとおり,腕がながーーーいクモヒトデです.
 

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うーん,よく見ると盤上を覆う微小な突起がかっこいいです

うっとり...
 

ちなみに,腕の付け根に見える三角系の部分は輻楯(ふくじゅん)と呼ばれており,

その形,大きさ,刺などの被度などが分類形質となっています.


 

こんなふうに,ひとくちにクモヒトデといっても,

よーく見るといろんな形があってかっこいいのですよ
 

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ちなみにこちらが口側.
 

ふわふわ触手みたいに伸びているのは,そのまんま「触手」と呼ばれるもので,

ヒトデやウ二が移動に使う吸盤(管足と呼ばれます)と相同です.
 

クモヒトデでは腕自体をくねくね動かして移動するので,

この触手に移動するほどの吸着力はありませんが,

その他様々な事に使われており,

例えばこの種では触手を使って腕の先で捉えた餌を,

口まで運んでいるのを見かけます.
 

腕を伸ばしたままで自動的に餌を得る...

夢の寝そべり生活です


 

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そして,これが今回の目玉です

このヤギをよーーく見てみると...?
 

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クモヒトデが絡んでいます
 

その⑤「ニシキクモヒトデ」です
 

今回はじめて,タイの西側のアンダマン海で採れました
 

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タイの東側のタイ湾では,一つのヤギに様々な色彩変異が見られましたが,

こちらのものはどうも全て同じ色彩のようです.
 

そもそもこれらは同じ種なのか?

それとも色が違えば別種なのか?
 

このようにある種の色彩一つをとっても,

まだまだわからないことだらけです.
 

タイにおいては大雑把な種数も分かっていない状況ですが,

私が三回調査しただけでもこれだけの種が採れ,

その多くが分類学的な問題を抱えています.
 

このような状況ですから,例えば,

「タイにはどれくらいのクモヒトデがいるの?」

という質問の答えをだすためには,10年以上はかかるでしょう.
 

と言って,やる人がいなければ,また数十年,

タイのクモヒトデの種数はわからないままです. 
 

クモヒトデに限らず,多くの無脊椎動物の分類学的研究は,

まだまだこんな状況です.
 

しかし,実際にはいろんな分類学者が,

日々自分の研究対象の謎を解明すべく,

細々と頑張っています. 
 
 
 

続く.