2016年5月30日に東海大学出版より発売された,
フィールドの生物学シリーズ第20巻
「深海生物テヅルモヅルの謎を追え! 系統分類から進化を探る」の書評を頂きました
・HONZ
・ブクレコ
この他,拙著の書評を歓迎いたします.その際には是非ご連絡いただけると嬉しいです.
更新:2016年11月6日
拙著の刊行を記念し,茨城大学図書館で講演会を行います.
詳細は以下の通りです.
茨城大学 土曜アカデミー 「新著を語る」
[日時] 2016年10月29日(土) 15時30分~17時
[講師] 岡西 政典(茨城大学理学部助教)
[内容] 「新種」という単語にどのような印象を持たれますか?「滅多に見つからない」と思われる方は多いでしょう。
しかし、現在我々が名前を付けて認識している約180万という種数は、全生物種数の数%~数10%に過
ぎないと言われています。すなわち我々はまだ、この地球上の生物の全貌すら、把握できていないのです。
生物に名前を付ける学問を「分類学」といいます。「新著を語る」では、謎に満ちた深海生物「テヅルモヅ
ル」を研究対象としてきた著者の経験を踏まえながら、分類学についてご紹介します。
[会場] 茨城大学図書館本館3階ライブラリーホール
[後援] 理学部岡西研究室
お近くにお立ち寄りの際には,ふらっと遊びにいらしてください.
アメリカのMcGraw-Hill Educationが提供するAccessScienceに,
ツルクモヒトデ目(Euryalida)の総説記事を書きました.
アメリカのスミソニアン博物館のDavid L. Pawson博士経由でこの記事の執筆依頼を頂きました.
お恥ずかしながらその時に初めて,この会社の存在を知ったのですが大手の出版社です.
↓リンクです.全文を読むには登録が必要なようですが,さわりだけは読めます.
https://www.accessscience.com/content/euryalida/246500
記事の執筆依頼を下さったDavid L. Pawson博士,
写真をご提供くださった下田臨海センターの鈴木様,ありがとうございました!
2016年5月30日に東海大学出版より発売された,
フィールドの生物学シリーズ第20巻
「深海生物テヅルモヅルの謎を追え! 系統分類から進化を探る」の正誤表です.
P47 5行目: Von voyage !→Bon voyage !
P51 11行目: …たことがある→…たことがある。
P231 10 行目: …科を一一種ずつ含んでいたので…→…科を二種ずつ含んでいたので…(二という漢字が一一に誤変換されてしまったのかもしれません)
P243 15行目: …幾多の大学院生が排出されて…→…幾多の大学院生が輩出されて…
P266 11行目: …筆を置く…→…筆を擱く…
他にも間違いがありましたら,是非ご連絡ください.
本を出版することになりました.
「深海生物テヅルモヅルの謎を追え!―系統分類から進化を探る―」
というタイトルです.主に私の博士課程の時の研究をまとめつつ,
系統分類学やの紹介などた話です.5/30に発売です.Amazonなどでも既にポチれるようです↓
興味のある方は是非手に取ってみてください.
以下,オフィシャルな情報です.
———————————————-
【書 名】
深海生物テヅルモヅルの謎を追え!―系統分類から進化を探る―
【著者】
岡西政典(茨城大学理学部助教)
【体 裁】
B6判 299頁 並製
【定 価】
2160円(税込)
【著者割引】
1728円(税込)・尚、送料は400円 5冊以上の場合,送料小会負担でお送りします
【発 行】
東海大学出版部
【発売日】
2016年5月30日・発送は5月25日以降になります
【ISBN】
ISBN978-4-486-02096-7
お支払方法 振込、MASTER・VISA CARDを但しカードの場合は、カード名義、カード番号、
有効期限をご連絡ください。 ご購入の場合はメ ールにて稲までご連絡ください
【内 容・目次】
珍しい生きもの好きすべての人へ : テヅルモヅルって何? クモヒトデって何? どんな
生きものか? 分類学を通して学ぶ。日本初のテヅルモヅルの本
目次
はじめに
第1章 系統分類学に出会う
1 北の地で
2 研究室に所属する
コラム・ジャンケン
3 分類学とは
コラム・「斜体」と「立体」
4 クモヒトデがしたいです
コラム・北大での研究対象選び
5 コピー機の前に立つ日々
コラム・何語であろうがいつであろうが
6 初めてのサンプリング
コラム・磯に採らえば……!
7 クモヒトデってどんな動物?
コラム・棘皮動物①
8 同定を試みる
コラム・様々な標本の作り方
9 Von voyage !
コラム・アネロン ニスキャップの思い出
10 師匠との出会い
コラム・ウミユリはいつ「生きた」化石になった?
11 クモヒトデを採りまくれ!
コラム・魚屋さん
12 院試と卒研を突破せよ
コラム・棘皮動物②
第2章 テヅルモヅルを収集せよ
1 博物館に所属する
コラム・DCを目指す?
2 孤独との戦い
コラム・「テヅルモヅル」ってどんな分類群?
3 一筋の光明
4 無限の荒野を行くのなら
コラム・新種はどこで誰のために発見される?
5 記載の果てで
コラム・査読
6 Describing man blues
コラム・新種と未記載種
7 「鑑定眼」が養われた?
コラム・チョッサー、ボウスン、ストーキー
8 少しずつサンプルが集まってきた
コラム・漁港巡り
第3章 海外博物館調査
1 海外進出!
2 初めての海外調査
コラム・飛行機の中の紳士
3 国際学会+α
コラム・海外ではパスポートを!
4 再びオセアニアへ
コラム・ニュージーランドでの思い出
5 アメリカ再訪
コラム・時岡先生のお写真
6 ヨーロッパ周遊
コラム・守衛のおじさんとのやり取り
コラム・アムステルダムでの思い出
第4章 ミクロとマクロから系統を再構築する
1 形態形質を精査せよ
コラム・新種?
2 分子系統解析に取り組む
3 初の実験成果
4 科レベルの記載
5 初めてのポスター賞
コラム・若手分類学者の集い
第5章 系統・分類学から進化を探る
1 なんかないの?
2 学位を取得する
3 学位取得、その後
4 ポスドクを経て
5 系統分類学は楽しい?
6 クモヒトデの系統進化
7 X線でお見通し
8 キヌガサモヅルの分類
9 それでも、系統分類学!
おわりに
謝辞
用語
引用文献
索引
———————————————-
二年ほど前から少しずつ執筆を始めていたのですが,
まさか本当に出版にこぎつけられるとは思っていませんでした.
それなりに,一般の人にもわかりやすい解説を入れたつもりですので,
系統分類学に興味がおありの方は,是非ともご覧になってみてください.
Image Jを使ったCT画像の立体構築の方法について,
少し(ホントに初歩的ですが)出来るようになったので備忘録もかねて紹介します.
今回はFijiというImage Jの画像処理パッケージを使用します.
用意するものは以下の通り.
1. 連続切片画像データ(組織切片画像などは別途ズレを調整する必要あり)
2. Fijiソフトウェア
3. 立体構築にかける意気込み
○準備
・連続画像データのファイル名は全て連続番号にしておく.
・立体構築を行うためのフォルダ(今回は「3D」とします)を作り,
その中を連続画像データだけにしておく.
「3D」フォルダ内がこんな感じになればOK.
1.Fiji をDLする.
・http://fiji.sc/Fijiのリンク先の”Downloads”から適切なver.をDLする.
・fiji.weim64.zipがDLされるので,解凍する.
・解凍先(デスクトップにしておくと便利)にFiji.appフォルダーができる.
2. Fijiで画像を読み込む
・Fiji.appフォルダ内のImageJ-win64.exeを立ち上げる.
・こんなのが立ち上がるので,「File> Import> Image Sequence」を選択し,
「3D」フォルダの中から最も番号の若い連続切片画像を選択する.
・連続切片画像が重ねられた「Stack」画像が表示される.
こんな感じ.下のスライドバーを動かせば,Stackされているか確認できる.
・Stack画面を選択した状態でShift+Cで「Brightness & Contrast」が調整できる.
・スライドバーで調整して,周りのゴミなどが写らないように調整する.
・この際,(Fiji Is Just) Image Jウィンドウの「Process> Sharpen」などで,
より精彩な画像にする事ができるようです.
※上の画像は調整済.
3. 立体構築
・(Fiji Is Just) Image Jウィンドウを選択し,
「Plugins> 3D Viewer」で3D画像が構築できる.
こんな感じ.後はマウスでぐりぐり動かして3D映像のエンジョイできます.
Virtual dissectingの方法などはまだ勉強中.
化石研究会の第33回 総会・学術大会で招待講演を行うことになりました.
詳細はこちら
ミニシンポジウム(一般公開)
テ ー マ:「深海環境と生物」
1 趣旨
駿河湾と言えば、海底谷の存在により湾の奧深くまで深海環境が存在しており、
そこには様々な深海生物が暮らしていて、最近ではたいへん話題となっています。
そこで今回は、駿河湾、そして深海生物やそれらの化石に関連した四題について、講演していただきます。
2 パネリスト・タイトル(仮題)
講 演: 講演1「駿河湾はどうやってできたか?」
講師 柴 正博(東海大学自然史博物館)
講演2「謎のサメ、メガマウスをさぐる」
講師 田中 彰(東海大学海洋学部)
講演3「師崎層群の硬骨魚類化石相-深海魚を中心に-」
講師 大江文雄(東海化石研究会)
講演4「分子系統で探るテヅルモヅル類の進化」
講師 岡西政典(京都大学瀬戸臨海実験所)
3 コーディネーター: 柴 正博 (東海大学自然史博物館)
4 主催: 化石研究会
5 日時: 2015年6月6日(土)・7日(日)
6 場所: 東海大学海洋科学博物館(静岡県静岡市清水区三保 2389)
7 対象: 一般
8 料金:化石研究会会員は無料
※ 非会員の方は博物館入館料が必要です(一般:1500 円、学生:750 円)
詳細はコチラ↓
http://www.geocities.jp/tepkun/
知り合いの化石研究者からお話を頂いたのですが,
他の講演者の方々は,いずれもえらい先生方です.
こんな現生屋の若手で務まるのか不安ですが,頑張ってきたいと思います.
それにしても...
「駿河湾」
「メガマウス」
「魚類化石」
いずれも深海生物好きにはたまらないキーワードばかり
一聴衆としても,楽しんできたいと思います
ドレッジでなかなか良さそうな基質が採れました.
中に残った砂などを残さず回収!この中にお宝があります.
海水でゆすぎながら,丁寧に基質の中を見ていくと...
いろいろ採れました!この小さいのは全てサンゴ.
抜けた歯のようですが,これも立派なサンゴ.
千徳博士ウハウハだそうです!
そして...ん?
おや?
(つд⊂)ゴシゴシゴシ
_, ._
(;゚ Д゚) …!?
もづるです!
もづるが採れました!
白浜沖での調査を続けること2年あまり,やっともづるを手にすることができました!
いやーうれしい,ツノモヅルという種類ですよ.
飼育を試みて,生態や行動を明らかにしたいところ!
その他にも,たくさんいいくもひとでが採れました!
ということで,大満足のドレッジでした!
下田臨海実験所の職員さんのブログをご存知でしょうか.
その名も「下田海洋生物採集日記」
下田臨海周辺の豊かな生物や,その採集方法が紹介されています.
そのブログになんと,珍しいクモヒトデがかかったとの記事が
こちらですね「キンメ漁の針にかかったテヅルモヅル」
実はこれは,非常に珍しいモヅルで,
Astrochele pacifica (トゲツメモヅル)だと思われます.
この属の報告自体珍しく,日本では,2011年に本種が勝浦沖からの報告が,
Astrochele (ツメモヅル属)の初報告です.
まだまだ日本のいろんなところで珍モヅルが採集されているのですね.
チームテヅルモヅルでは,珍しいモヅルやクモヒトデの発見の連絡をお待ちしています
モヅル紹介です.
Family: Astrocharidae ヒメモヅル科
Genus: Squamophis
Specific name: albozosteres
オーストラリアのビクトリア博物館に所蔵されていたモヅルです.
あまりに特徴的な形だったため一目で新種とわかったのですが,
その後DNA解析や詳しい形態観察を行ううちに,これが新属新種である事が分かりました.
この種を記載する際に,Squamophis属も新しく立てたわけですが,
実は処女論文で記載したAsteroschema amamiensisも,その新属に所属する事が分かりました.
Squamophis albozosteresをタイプ種として,現在では3種が知られています.
①各触手穴に腕針を一本だけ持つ
②体の背面に,茶色く板状の皮下骨片と白く顆粒状の皮下骨片を両方持つ
③白い皮下骨片は,腕では輪状になる
といった特徴で他種と区別できます.
SquamophisはSquama は「鱗の」,Ophisは「蛇」という意の合成語で,
albozosteresはalbus「白の」,zoster「環を持つ」という意味の合成語です.
口側はこのように白くてかわいいやつです.
毎週木曜日は南部の日.
ということで,水族館から南部産の変なテヅルモヅルが入ったとの一方を受けて,すぐさま駆けつけました.
形態的にはアカテヅルモヅルAstroglymma sculptaで間違いないのですが,
うーん,なんか黄色いですね...こんな色の個体は初めてみました.
何かの変異でしょうか.興味深いです.
この日はいろいろ盛りだくさんで,
派手なミカドウミウシも採れていました.
実習で採れたりするものより,はるかにデカい
傍らのツマジロナガウニが大体手のひらサイズなので,
30 cmはあろうかという巨躯!
しかもこの体躯でダイナミックに体を動かし,泳ぎまくります.
水族館フィーバーな一日でした.
ヒメモヅルについての続記です.
コペンハーゲンから届いたAstrocharis gracilisのタイプ標本はこちら.
こんな感じで,箱に丁寧に梱包されて送られてきます.
真ん中の小さいのが標本です.
この1個体が,A. gracilisの記載に使われた唯一一個体になります.
これに対して,アムステルダム博物館から届いたタイプ標本は2つの瓶に入れられていました.
これと
これです.
そして日本近海から記載されたヒメモヅルA. ijimaiの標本がこれです(タイプ標本ではありません).
これらの観察を始めたところ,すぐに違和感に気づきました.
明瞭に区別できる形が見つからないのです.
先行研究では,A. gracilis, A. ijimai, A. virgoの順に体表の鱗が小さくなるというのですが,
少なくともタイプ標本だけを見てやるとどうにも分けられません.
そこで,先日も記事にした新種と思われる個体と,
日本で採れたヒメモヅルも含めて,41個体の鱗の大きさと,体サイズ(盤径)を相関させて比較したところ,
どうやらA. gracilisとA. virgoのタイプ標本の一部とA.ijimaiの鱗の大きさは同じくらいであり,
A. virgoの別のタイプ標本はそれよりも鱗が小さく,
新種と思われる標本は統計的に鱗が大きい,ということがわかりました.
つまり,これまでに認められていた三種は,実は二種の混合だったのです.
そこで,これらの結果をまとめて,これまで三種が知られていたヒメモヅル属を,
Astrocharis monospinosaと名付けた新種の記載も含めて,
一減一増の末に,三種にまとめた論文を日本動物学会誌のZoological Scienceに発表しました.
http://www.zoology.or.jp/html/01_infopublic/01_index.htm
実は,このあたりの詳しい話は↑にも書かれています.
この論文は,初めはAstrocharis monospinosaの記載だけで発表しようと思っていたのですが,
もう少しまとまった発表にしたほうがいいのでは?
という藤田先生の意向もあり,
少し粘って分類学的再検討という内容にしました.
時間はかかったものの,
結果的に一つの分類群のレビューを初めて完遂することとなった,
思い出深い論文となりました.
Astrocharis monospinosa は新種であるということがわかりました.
しかし,Astrocharisi属の全3種の原記載を読んでみて,ふと気づいたことがありました.
これらは本当に区別できるんだろうか?
当時Astrocharisに知られていたのは,
A. virgo Koehler, 1904
A. ijimai Matsumoto, 1911
A. gracilis Mortensen, 1918
で,体表を覆う鱗が,それぞれ,小,中,大,ということで区別されていました.
しかしこれでは具体的な数字がなく,
本当にそれが明確に数値として分けられるのか不明瞭です.
こうなってくると原記載を読んデイてもラチがあきません.
そこでタイプ標本です.
原記載の基となった標本を担名タイプ標本といい,
基本的にはこれらの標本に基づいて種の命名は行われます.
上記の三種のタイプ標本の所在を調べていたところ,
A. virgoはアムステルダム動物学博物館に,
A. gracilisはコペンハーゲン大学動物学博物館に,
それぞれ所蔵されている事がわかり,
学芸員さんにコンタクトをとってみたところ,なんと貸出をしてくれるというのです
喜び勇んで申し込みをして数週間後,果たしてそれらの標本は,
はるばる海を越え,果たして私の手元に到着したのです.
続く
科博に所蔵されていた標本はAstrocharis gracilisと同定されていました.
この種はMortensenによって1918年に記載されたものでしたが,
原記載の掲載雑誌が少なくとも国内になかったため,
Döderlein (1927)による別の個体の再記載を頼りにこの種を同定していました.
しかしDöderleinの記載と科博の個体はどうも形が異なるのです.
果たしてこの違いは種内変異なのか,
それとも科博の個体は別種なのか?
見極めるためにはやはり原記載を見る必要がありました.
国外の図書館に複写を依頼して果たして手元に届いた原記載.
あれほど気持ちを昂ぶらせた文献拝読は未だかつてないかもしれません.
一ページずつページをめくるたびに,疑問が確信に変わっていきました.
Mortensen (1918)の原記載は,明らかにDöderlein (1927)と一致しており,
科博の標本とは異なることが分かりました.
すなわちこの時点で,手元の標本は新種であるという事が明らかになったのです.
しかし原記載を読んで気づいたことはこれだけではありませんでした.
続く.
Family: Astrocharidae ヒメクモヒトデ科
Genus: Astrocharis ヒメモヅル属
Specific name: monospinosa オオヒメモヅル(新称)
非常にレアなモヅルです.
まずヒメモヅル属からして珍しい.
体の表面がブヨブヨの皮か細かい顆粒に覆われていることの多いツルクモヒトデ目ですが,
この属は体が鱗に覆われており,かつ輻楯(ふくじゅん)と呼ばれる盤の背面の板状骨片が,
裸出する,という特徴があります.
特に,この輻楯の裸出という特徴は,他のツルクモヒトデ目にはほとんど見られません.
私の中のかっこいいモヅルランキングベスト3には間違いなく入る属です.
生息域も,海山の頂上,約300 m以深に限られており,
種数も本種を含めて3種しか知られていません.
Astrocharis monospinosaは,
①体を覆う皮下骨片が他の種に比べて大きい(0.5-1 mm程度)
②各触手孔に生えている腕針が1本
③体内の側腕板や腕骨が腕の基部で裸出する
といった特徴によって区別されます.
私が科博の学生になって,博物館の標本を片っ端から見ていた時に,
この標本を見つけました.ヒメモヅル属である事はすぐにわかったのですが,
新種だという確信は得られませんでした.
その後,調査を進めているうちに本種が新種である事が突き止められていきました.
続く.
瀬戸臨海実験所のとある暗室...
赤いライトに照らされた水槽...
こ,これは
てづるもづるです
てづるもづるの飼育を始めました
この間の南部漁港で採れたてづるもづるを飼育しているのですが
水温か水質か,はたまた他の生物との相互関係か,
暗室状態か...
なんと夏場よりも長生き
手前の金網は絡むための足場のつもりです.
100円ショップで手に入れた代物.
今のところあまり絡んでいないようですが...
今のうちにいろいろ観察できないかと試みています
クモヒトデの体の仕組みがどうしても知りたいあなたへ,
クモヒトデの形態解説第二弾です
前回と同じミツイタクモヒトデをみながらその体の仕組みを理解しましょう.
こちらは体の口側.盤の真ん中には口があります.
鱗しかなかった反口側と違い,口側はやや複雑.
五つの腕の延長線上の交差点に口があり,
様々な形の骨片が組み合わ去っているためです.
まず,口の入口部分は五つの顎に囲まれており,
その先端に生える歯で口を通る餌を咀嚼します.
この画像では全貌が見えませんが,歯は歯板という板状の骨片に間接しており,
歯版は口板という骨片に支えられています.
口板の外側には側口板が配置し.
対になった側口板の間には口楯という板状の骨片があります.
多くの種ではこの口楯の一つが巨大化し,多孔体の役割を果たします.
というように,口の周りを構成する骨が複雑に配置しています.
また,顎のスリット部分の最も口側には,
口棘と呼ばれる,歯に似た骨片が並んでいます.
また,間輻部と呼ばれる盤の口側の腕と腕の間には,生殖裂孔があります.
この生殖裂孔の縁に生じる突起は生殖棘です.
後にも述べたいと思いますが,
口の中から腕の先端までは触手の列が伸びており,
多くの種はこの触手伝いで,食物を口に運んでいると思われます.
このような歯,口棘,歯板,口板,側口板,口楯,
生殖裂孔,生殖棘などの形,数,大きさなどが分類形質になるのですが,
これらは,比較的高次(属や科)の分類に
使われていると思います.
(はっきりと検討したわけではありません).
一目には似たような形のクモヒトデですが,
顕微鏡レベルでは様々な形の違いが見て取れます.
突然ですがクモヒトデの体の仕組みを解説いたします.
以前,ちょろっとだけ触れましたが,多くのクモヒトデは,
体の真ん中の「盤」という部分と「腕」が,見た目で明瞭に分けられます.
(実質的なヒトデとの違いは,歩帯溝がないことです)
クモヒトデの体はいろんな形の骨片に覆われており,
その形状が分類に使われています.
今回は,盤の形状についてご紹介します.
じゃーん,こちらが,盤の反口(背)側です.
基本的に,クモヒトデの盤は,「盤鱗」と呼ばれる鱗に覆われています.
この鱗も様々な形があり,盤のど真ん中のものひときわ大きく「中背板」と呼ばれ,
その周りに配置している5つの比較的大きなものは「下址板」と呼ばれます.
これらは合わせて「第一次板」と呼ばれ,他の盤鱗と区別されます.
また,腕の付け根部分には,輻楯(ふくじゅん)と呼ばれる対の鱗があり,
この形や大きさは多くの種で重要な分類形質となっています.
勿論,鱗だけでなく棘や皮に覆われたり,第一次板のような鱗の区別がないもの,
輻楯が他の骨片などに覆われて見えないものがいたりと,種によって形質状態は様々ですが,
これらの特徴は昔も今も重要な形質として使われていることは間違いありません.
年末の豊中高校の実習で講義を行いました
今回は,最終日の夜に瀬戸臨海のポスドク三人によるお話三連続でした.
千徳博士の講義「サンゴの生物学」
とてもきれいなサンゴの写真を巧みに活用したスライドで,
高校生達をサンゴワールドに引き込んでおりました.
最近のダイビング熱でサンゴと他の生物の織りなす共生関係に心惹かれ気味な私も,興味津々で聞き入りました.
私の講義「深海生物テヅルモヅルの進化を探る」
深海ってどんなところ?
てづるもづるとは?
分類学って?
私も負けじと高校生を深海生物ワールドへ引きずり込もうと試みました(笑)
果たしてみなさんがどのような感想を持ってくださったのかはおいておいて,
講義の準備をするたびに毎回自らの無知を認識します.
今回も改めて深海について勉強するいい機会となりました.
まだまだ精進ですね.
最後は河村さんの講義「クラゲの生活史」
それにしても,刺胞動物の研究者は,みな写真を撮るのが上手な気がします.
やはり研究対象への愛ですね.クラゲへの愛が伝わってくる講義でした.
河村さんのお話にもありましたが,
研究中は知的に興奮する瞬間に度々遭遇するのですが,
中でも「思いもよらなかった結果」に出会えた瞬間は格別です.
自分でも予期しなかった結果に出会うために,
我々は研究を続けているのかもしれません.
などということを,駆け出しの研究者三人が熱く語る夜となりました.
Family: Goegonocephalidae テヅルモヅル科
Subfamily: Gorgonocephalinae テヅルモヅル亜科
Genus: Asteroporpa シゲトウモヅル属
Subgenus: Asteroporpa (Astromoana) モアナモヅル亜属
Specific name: koyoae コウヨウモアナモヅル
トゲモアナモヅルと同時に記載したモヅルです.
当然のことながら,発表当時は日本初記録亜属のモヅルでした.
2009年に小笠原での科博の深海調査に参加させてもらった際に,
お世話になった水産実験センターの方が,
「例えば,深海籠調査ではこんなのが採れますよ~.」
と言いながら気軽に見せてくださったものの中に混じっていました.
①盤の反口側の縁部に,フックがついた板を持つ,
②盤の反口側は一様な大きさの円錐型皮下骨片に覆われる
③それらの皮下骨片の先端には,皮下骨片の高さよりも長い棘が生じる
といった特徴で他種と区別できます.
せっかくなので,水産実験所の研究船「興洋」に献名しました.
本種はこの個体以降採集されていないため大層珍しいのだと思われます.
採集における人脈の大切さを教えてくれた種です.
撮影:岡西政典
Family: Asteroschematidae タコクモヒトデ科
Genus: Asteroshema ヒトデモドキ属
Specific name: salix (和名なし)
日本では,南硫黄島からしか発見されていない珍しい種です.
他にはオーストラリア,フィリピン,ニュージーランドの329-2999 mに分布しています.
①体全体が小さな顆粒状の皮下骨片に覆われている
②それらの皮下骨片は,大きさ約0.07 mm-0.08 mmと小さい
③輻楯は縦長で,長さは太さの約2.5-3倍
④腕針の長さは各腕節長の約2倍
といった特徴で他種と区別できます.
こいつが所属するヒトデモドキ属は外部形態が非常に少ないため,
体表の微小な骨片の大きさなどで分類していますが,
詳しい種分類を行うためには,DNA解析なども行ったほうが良いと思われます.
Family: Goegonocephalidae テヅルモヅル科
Subfamily: Gorgonocephalinae テヅルモヅル亜科
Genus: Asteroporpa シゲトウモヅル属
Subgenus: Asteroporpa (Astromoana) モアナモヅル亜属
Specific name: muricatopatella トゲモアナモヅル
こちらはなかなかの珍モヅルです.
シゲトウモヅル属は日本の太平洋側から古くより記録が知られるのですが,
1980年にニュージーランド産の種に対して設立されたモアナモヅル亜属は,
日本からは知られていませんでした.
同属のシゲトウモヅルAsteroporpa (Asteroporpoa) hadracantha は古くより日本の太平洋側より記録があります.
科博にもたくさんのシゲトウモヅルの標本があり,
それらを調査していたところ,6個体ほど入った瓶の中に,
1個体だけ顕微鏡で見ると明らかに形態が異なる種を見つけました.
それがこのトゲモアナモヅルです.
①盤の反口側の縁部に,フックがついた板を持つ,
②盤の反口側は一様な大きさの円錐型皮下骨片に覆われる
③それらの皮下骨片の先端には,皮下骨片の長さよりも短い棘が生じる
クモヒトデでは,パッと見て,すべて同種だろうと思うような数が採れることがよくあるのですが,
実際に検鏡して見るとこのように別種が混じっていることがよくあります.
どのような分類群でもそうかもしれませんが,
必ず検鏡しないと「同定した」と言えない,ということを教えてくれた種です.
撮影:岡西政典
よく考えたらこのウェブサイトの名前にはてづるもづるがついているのに,
てづるもづるを紹介していませんでした.
ということであいさつ代わりにこちら.
セノテヅルモヅル(Astrocladus coniferus Döderlein, 1902)
明治期の学問(特に博物学・動物学など)の近代化に一役買った,
いわゆるお雇い外国人教師の一人のルートウィヒ・デーデルラインが記載した種です.
おそらく日本沿岸では,比較的よくみられる種でしょう.和名の「セノ」は「瀬の」の意味で,
比較的に浅瀬でもみられることからこの名前がついているのだと思います.
①腕針が盤の外側部分,第1分岐か2分岐より生じる,
②多孔体が盤側面の口側よりの部分にある,
③体表を覆う小さな突起が体表に散在する,
といった特徴から他種と区別されているのですが,
それが本当に種としての安定した形質なのかは未だに疑問が呈されています.
この種についても,研究を進めつつあるので,
見つけた方は是非ご一報を。
Squamophis amamiensisについての追記です.
はじめ,科博でこの標本を見た際には,
新種とはわからなかったのですが,手元の文献では名前が調べられませんでした.
前記事でも述べましたが,ヒトデモドキ属はとにかく外部形態が少ないのですが,
種の分類に用いられていたのは体表の骨片(皮下骨片と我々は呼んでいます)の形状や配置でした.
粒粒の骨片やトゲトゲ等,様々な形の小さな骨がこの属の種の体を覆っており,
その大きさや密度等が分類の指標になっていました.
まずはこれらの形態を整理しなくては始まらないので,
古今東西の全てのヒトデモドキ属の記載文献を集め,解読したところ,
いずれの記載にも一致しない事がわかりました.
ほとんどの種が顆粒状やトゲトゲの骨片を持っているのに対し,
この標本の体表の骨片の形は,写真のようにうろこ状だったのです.
さらに観察を続けると,腕に生えている針の数や,体内の骨片の形状までが,
他の種と異なっていることを見出しました.
そこで,これらの違いをまとめ,約1年近くかけて論文を準備しました.
この間に何度も何度も原稿を修正してくださった藤田先生には,本当に感謝です.
こうして,出会いから一年以上を経て,
本種はAsteroschema amamienseという名前で発表されました.
その後,この種が実はツルクモヒトデ目の中でもかなりの変わり種という事が分かってきたのですが,
それはまた別の機会にお話いたしましょう.
こちらは,Squamophis amamiensis (Okansihi and Fujita, 2009)という種です.
私と,師匠の藤田先生が2009年に新種として発表しました.
私が初めて論文にした,思い出深いヤツでもあります.
現在はSquamophisという属に移されていますが,
私が記載した際は,この種はヒトデモドキ属(Asteroshcema)に属していました.
この属は,他に比べて外見の差が少ない(形態形質が少ない)にもかかわらず,
ツルクモヒトデ類の中では珍しく34種という多種を含みます(他の属は,多くても10種程度です).
多種=多様と考えてもよいのですが,
分類が進んでいないグループでは同種異名が多いということが考えられます.
この属はまさにそのようなグループだといわれており,
各地の研究者によって種が乱立している状態でした.
しかし,私が修士でこのヒトデモドキ属の情報を整理しているうちに,
科博に所蔵されていたある標本が,どうしても既存の種の記載に当てはまらないことに気付いたのです.
そこで一大決心し,この個体を新種として発表することを決めました.
2014年12月7日に,東京高田馬場にて,モヅルカフェを開催してきました
サイエンスカフェということで,雑誌の表紙などを参考に,
なるべくオシャレなフォントを使ってタイトルページを作りましたが,
持ち込んだノートPCへのフォントのインストールを忘れたため,
あえなく撃沈.慣れないことはするもんじゃないですね
たっぷり一時間半,モヅルや研究についてあれこれしゃべってきました.
そもそも,テヅルモヅルとは何者なのか?
海藻ではありません「クモヒトデ」です
では,そのクモヒトデとは何者なのか?
クモでもヒトデでもありません!でも,ヒトデはちょっと惜しい
クモヒトデもヒトデも,ウニやナマコと同じ「棘皮動物」というグループに含まれます.
じゃあ,よく言われるクモヒトデとヒトデの違いとは?
私が専門にしている分類学ってどんな学問?
その歴史と実際まで,楽しく解説してきました.
なぜ,私はテヅルモヅルを研究しているのか
テヅルモヅルを研究する意義とは?8年間蓄積した情熱をぶつけてきました.
そして,前日の棘皮動物研究集会でも発表した,
キヌガサモヅルの分子系統地理のお話もしてきました.
参加者(サポーター)の方から「思ったより進んでいてびっくりした」とおっしゃっていただきました
最後に,みなさんでもづるポーズ
「もづるトークをします」との呼びかけに,これだけの人が集まってくださいました.
なかなか注目されにくいマニアックな研究でも,
ちゃんと人の知的好奇心の一部を満足させられることが分かっただけでも,
開催して良かったと思います.
academistの支援者の皆様,
academist事務局の柴藤さん,森さん,
そしてもづるカフェにご参加いただいた皆様,
本当にありがとうございました
これからも頑張ります
みなさん,これ...
なんだかお分かりですか?
正解はこちら.
なんと,テヅルモヅルブックカバーです
先日のもづるカフェの参加者にいただきました
早速本川先生のご著書を包みます
このフィット感.
これコピペじゃないような気がします.
ひょっとして,全て手書きでしょうか?
だとすると改めて感謝です.
作成者の人潟るけさんは,様々な深海生物グッズを作成されています.
これ,動物分類学会とかで売り出したら,相当売れるのでは?
まだまだ続く棘皮動物研究集会.
実験施設の中には,水槽がたくさんありました.
さすが海洋生物エボデボのメッカ。ちょっと暗いですが,
こちらはアカウニ水槽.
こちらはハネジナマコ水槽.
しかし,実はハネジナマコの学名には混乱があるらしく,
ナマコ研究者の方の「これ,ハネジナマコじゃないよ」発言に,
しばらく現場が騒然としていました.
実際には,まあ,研究している実態が違うわけではないから大丈夫か,という話に落ち着いていました.
ポスターセッションにはお菓子や飲み物がフリーで用意されていました
古生物の発表や,
今話題のオニヒトデに関する発表や,
なんと,三崎に生息するテヅルモヅルの発表まで
といいつつ,まあ私も共著者の一人です(笑)
三崎のイソバナ群落に付着するセノテヅルモヅルの幼体の発表です.
テヅルモヅルは発生等は未だに謎のままなのですが,
イソバナ群落におびただしい数が付いているということで,
その個体数や,成長と腕の分岐数の計測をした研究です.
時間をかけてモニタリングすれば,何かの発表になるかもしれません.
聴衆の中に,棘皮動物猛者が
何と,ワモンクモヒトデイヤリングです
私も様々な棘皮動物グッズに目を配ってきましたが,
クモヒトデをイヤリングにしているのは初めて見ました.天晴.
世界はまだまだ広いですね.
とある金曜の昼下がり.
水族館から一本の電話が.
「ちびっこいモヅルが入荷したよー.」
急いで駆け付けました
それがこちら.
盤径が指先ほどしかない可愛いモヅルちゃんですね.
おそらくアカテヅルモヅルAstroglymma sculptaの幼体かと思います.
大人は腕を広げると数十センチに達する大型種で,
親御さんかと思われる個体も採れたそうです.
奥にいる赤めのやつがアカテヅルモヅル.
手前のはサメハダテヅルモヅルかと思われます.
研究用にくださるということでしたので,さっそく水槽にいれてみました.
ちょっと腕がボロボロになっているので気がかりです.
さっき見てみたら,腕を広げていました.
何とか復活してほしいものです.
「棘皮動物研究集会」が開催されます
今年で発足11年目という,比較的若い会です.
師走の始まりのとある日,国内の棘皮動物研究者が人知れず集い,
棘皮動物話に華を咲かせるというマニアックさ
詳細はこちら
「第11回棘皮動物研究集会」
場所:東京大学三崎臨海実験所
日程:2014年12月6日(土),昼くらいから.
基本的には忘年会も兼ねたフレキシブルな会です.
堅苦しい雰囲気もなく楽しめます
勿論私も発表いたします
「キヌガサモヅル(棘皮動物門,クモヒトデ綱)の分子系統地理」
というタイトルで,academistで募った資金で行った研究の成果発表です
翌日のもづるカフェも参加して,今年の締めは棘皮動物で決まりです
東京にて,もづるカフェ開催いたします
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【もづるカフェ】
■日 時:2014年12月7日(日)13:00~15:00
■場 所:喫茶ルノアール(JR高田馬場駅早稲田口より徒歩3分)
( http://standard.navitime.biz/renoir/Spot.act?dnvSpt=S0107.60 )
■定員:15名
■参加無料
■講演内容:
1. てづるもづるとは?
2. 分類学って?
3. これまでの研究紹介
4. キヌガサモヅルの分類学的研究の進捗状況
—————————————————————-
講演の後は参加者を交えてのサイエンスカフェ形式での鼎談も予定しています.
終了後は早稲田近郊で懇親会(有料)を開催いたしますので,
こちらも是非ご参加ください.
お申し込みは( mokanishiあっとtezuru-mozuru.com )にお願いいたします.
タイトルを「もづるカフェ申し込み」としていただき,以下のフォームをお埋めください.
氏名(アカデミストユーザー名):
講演会参加:有・無
懇親会参加:有・無
研究室PCのデスクトップ画像を,久々に更新しました.
先日の調査で撮った海と船の写真です.
楽しかった余韻に浸る間もなく,次の調査が迫っております.
12月にサイエンスカフェを開催予定です.
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【もづるカフェ】
■日 時:2014年12月7日(日)14:00~16:00
■場 所:10°cafe(JR高田馬場駅早稲田口より徒歩3分)
(http://judecafe.com/access-%E4%BA%A4%E9%80%9A%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%82%BB%E3%82%B9/)
■対 象:支援者(もづT,もづポロ,もづパー所有者優先)
■人 数:限定20名
■参加無料
■講演内容:
1. てづるもづるとは?
2. 分類学って?
3. これまでの研究紹介
4. キヌガサモヅルの分類学的研究の進捗状況
講演の後は参加者を交えてのサイエンスカフェ形式での鼎談を行いたいと思います.
カフェ終了後は,早稲田近郊で懇親会(こちらは有料)も開催予定です.
参加者の皆様の親睦を深めていただくため,
首から下げる名刺ケースをご用意いたしますので,
名刺等ご所属のわかるものをご持参ください.
申し込みは私mokanishiあっとtezuru-mozuru.comまでお願いいたします.
タイトルを「もづるカフェ申し込み」としていただき,以下のフォームをお埋めください.
氏名(アカデミストユーザー名):
講演会参加:有・無
懇親会参加:有・無
申し込み締め切りは,11月14日とさせていただきます.
懇親会のみの参加も歓迎です.
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ということです.
12月お会いしましょう
テヅルモヅルは,クモヒトデ綱ツルクモヒトデ目に所属しますが,
テヅルモヅル≠ツルクモヒトデ目です.
ツルクモヒトデ目の中には腕が分岐しないものもいます.
こう書くと腕が分岐しない種の方がマイナーっぽいですが
実は腕が分岐しない種の方が多数派です.
現在約180種が知られているツルクモヒトデ目のうち,
テヅルモヅルはなんとたった63種で,1/3くらいです
これこのとおり.
つまり,テヅルモヅルはマイナー(クモヒトデ綱)中の
マイナー(ツルクモヒトデ目)中の
さらにマイナーな存在なのです.
これでは研究が進むわけありません.
では,腕が分岐しない種と腕が分岐する種は何が違うのか?
私のこれまでの系統分類学的な研究の結果から,
少しずつその適応的な意味が分かってきています.
続く.
クモヒトデがツルクモヒトデ目とクモヒトデ目に分けられるということですが,
ではこの二目は何が違うのか.
以前は腕の腕骨と呼ばれる骨の形で分けられていましたが,
研究が進むにつれ,両目で共通の形の腕骨がみられることが明らかになり,
現在では腕骨による分類はできません.
私が研究を進めていたところ,
どうやら二目は腕の別の骨片によって分けられることがわかってきました.
クモヒトデ類は腕の周りに腕針と呼ばれる針状の硬い器官を備えています.
実はツルクモヒトデ目とクモヒトデ目は,
この腕針の配置が決定的に異なるのです.
クモヒトデ目では,この腕針が須らく腕の側面についています.例外はありません.
これに対しツルクモヒトデ目では腕針がすべて口側についてます.
クモヒトデを反口側から見てみると一目瞭然で,
クモヒトデ目の腕はなんだかフサフサしているのに対して,
ツルクモヒトデ目はつるっとしています.
(左)ツルクモヒトデ目のキヌガサモヅル(Asteronyx loveni)と
(右)クモヒトデ目のスナクモヒトデ科の1種の反口側(背側).
キヌガサモヅルは腕がツルっとしてますが,
スナクモヒトデ科の一種は腕がフサフサしているのがお分かりいただけますでしょうか?
ただし,この腕針が退化的で非常に小さくなっている種もいますので,
確実に見分けるためには顕微鏡が必要です.
腕針の配置なんて簡単に変わりそうなものですが,この違いはかなり顕著ですので,
何か重要な機能的な理由があるのではと考えられます.
ツルクモヒトデ目の多くの種は,
現生の種をみる限り,ヤギなどのサンゴに絡んでいます.
一方クモヒトデ目は(例外はありますが),ヤギに絡むことはほとんどありません.
口側の腕針は,ひょっとするとヤギに絡むために発達した器官なのかもしれません.
この腕針の機能の探究も,てづるもづる研究の一つの興味深いテーマかもしれませんね.
最近友人から,
「このHPを見てもてづるもづるについて何もわからないじゃないか」
というご指摘を頂きました.
全くその通りかと思います.
ということで,もう少し真面目にテヅルモヅルについてお話をします.
これまでにヒトデ綱とクモヒトデ綱の違いをお話ししました.
次はいよいよクモヒトデ綱の中の分類についてお話いたしましょう.
クモヒトデ綱は現在約2070種が知られており,
おそらく棘皮動物門の5つの綱中では最多種数です.
その最たる理由は,おそらく柔軟な腕にありましょう.
この腕を器用に動かすことで,体を小さく折りたたみ,
岩の隙間,砂の中,サンゴなどの他の動物の上など,
他の棘皮動物には到達しえない様々な環境に生息可能となった結果,
多様性を獲得できたと考えられています.
しかし悲しきかな.
これらは基本的には隠蔽的,すなわち人目に付かない環境ばかりです.
従って,彼らは莫大な種多様性を獲得しながらも,
知名度ではウニ,ナマコ,ヒトデには遠く及びません.
少し話が脱線しました.話を分類に戻しましょう.
クモヒトデは種数が多いため分類群が多く,
科の数は20を超えていています.
しかしながら,目の数はたった二つ,
クモヒトデ目とツルクモヒトデ目です.
しかしこの分類には大きな偏りがあり,クモヒトデ目が約1900種なのに対し,
ツルクモヒトデ目は180種ほどです.
実はテヅルモヅル類が属しているのはこのツルクモヒトデ目です
すなわち,テヅルモヅルは,
マイナーなクモヒトデ綱の中でもさらにマイナーなグループなのです.
続く.
生物を分けると世界が分かる ー分類すると見えてくる、生物進化と地球の変遷ー
講談社ブルーバックス
新種の発見
ー見つけ、名づけ、系統づける動物分類学ー
中公新書 2589
深海生物テヅルモヅルの謎を追え!
系統分類から進化を探る
東海大学出版会
フィールドの生物学シリーズ 第20巻
これらのリンク先のページには系統解析に関する記事が,上から新しい順に並べられています.古い順にみる場合は,ページの一番下からご覧ください.
・2020/10/28 論文が出版されました!
Okanishi, M.*, Fujii, T. (2020)
“A new record of brittle star Ophiopsila cf. polyacantha (Echinodermata: Ophiuroidea) from Southwestern Japan, with notes on its bioluminescence”.
Species Diversity. 25(2): 283—294.
・論文が出版されました!
Okanishi, M.*, Kohtsuka, H., Fujita, T. (2020)
“A taxonomic review of the genus Astrocladus (Echinodermata, Ophiuroidea, Euryalida, Gorgonocephalidae) from Japanese coastal waters”.
PeerJ. 8: e9636 (42 pp.)
・論文が出版されました!
Oikawa, S*. Matsui, Y., Oguro, M., Okanishi, M., Tanabe, R., Tanaka, T., Togashi, A. Itagaki, T. (2020)
“Species-specific nitrogen resorption proficiency in legumes and nonlegumes”.
Journal of Plant Research. 133(5): 639—648.
・論文が出版されました!
Okanishi, M.*, Mah, C., L. (2020)
“Overlooked biodiversity from museum collections: Four new species and one new genus of Ophiuroidea (Echinodermata) from Antarctica and adjacent regions with notes on multi-armed ophiuroids”.
Marine Biodiversity. 50: 64 (26 pp. )
・論文が出版されました!
Okanishi, M., Kato, M., Watanabe, H., Chong, C. and Fujita, T. (2020)
“Large populations of two new species of Ophiambix (Echinodermata, Ophiuroidea) discovered on Japanese hot vents and cold seeps”.
Raffles Bulletin of Zoology. 68: 196—213.
・論文が出版されました!
木村妙子他…(著者24人中9番目) (2019)
「紀伊水道南方海域および熊野灘の深海底生動物相」.
三重大学大学院生物資源研究科紀要. 45: 11—50.
・論文が出版されました!
木村妙子他…(著者25人中10番目) (2019)
「紀伊水道南方海域および熊野灘の深海底生動物相(第2報)」.
平成30年度三重大学フィールド研究・技術年報. 17: 1—29.
・論文が出版されました!
Hayashi, R. & Okanishi, M. (2019)
“The widely occurring brittlestar Ophiactis savignyi (Amphilepidida: Ophiactidae) as an epibiont on loggerhead sea turtle, Caretta caretta”.
Zootaxa. 4695: 497—500.
・論文が出版されました!
Okanishi, M., Ishida, Y. & Mistui, S. (2019)
“Fossil gorgonocephalid basket stars (Echinodermata: Ophiuroidea: Euryalida) from the Middle Pleistocene of Japan; the first record from the Indo Pacific region”.
Paleontological Research. 23: 179—185.
・論文が出版されました!
Okanishi, M., Oba, Y. & Fujita, Y. (2019)
“Brittle stars from a submarine cave of Christmas Island, northwestern Australia, with description of a new species <i>Ophiopsila xmasilluminans</i> (Echinodermata: Ophiuroidea) and notes on its behavior”.
Raffles Bulletin of Zoology. 67: 421—439.
・2019/3/27: 論文が出版されました!
Okanishi, M & Fujita, T (2018) “A comprehensive taxonomic list of brittle stars (Echinodermata: Ophiuroidea) from submarine caves of the Ryukyu Islands, southwestern Japan, with a description of a rare species, Dougaloplus echinatus (Amphiuridae)”. Zootaxa. 4571(1): 73—98.
・2018/6/21: 論文が出版されました!
Okanishi, M & Fujita, T (2018) “A new species of Ophioconis (Echinodermata: Ophiuroidea) from a submarine cave at Shimoji Island, Miyako Island Group, southwestern Japan”. Proceedings of the Biological Society of Washington. 131: 163—174.
・2018/4/6: 論文が出版されました!
Okanishi, M & Fujita, T (2018) “Description of a New Subfamily, Astrocloninae (Ophiuroidea: Euryalida: Gorgonocephalidae), Based on Molecular Phylogeny and Morphological Observations”. Zoological Science. 35(2): 179—187.
・2018/4/5: 論文が出版されました!
Okanishi, M, et al. (2018) “A new cryptic species of Asteronyx Müller and Troschel, 1842 (Echinodermata: Ophiuroidea), based on molecular phylogeny and morphology, from off Pacific Coast of Japan”. Zoologischer Anzeiger. 274: 14—33.
・2018/3/9: 論文が出版されました!
Okanishi M, Fujita, T. (2018) “A taxonomic review of the genus Astrodendrum (Echinodermata, Ophiuroidea, Euryalida, Gorgonocephalidae) with description of a new species from Japan”. Zootaxa. 4392(2): 289-310.
・2018/3/8: 論文が出版されました!
Baker, AN, Okanishi M, Pawson, DL. (2018) “Euryalid brittle stars from the International Indian Ocean Expedition 1963–64
(Echinodermata: Ophiuroidea: Euryalida)”. Zootaxa. 4392(1): 1-27.
・2018/1/31: 論文が出版されました!
Okanishi M, Fujita, Y. (2018) “First finding of anchialine and submarine cave dwelling brittle stars from the Pacific Ocean, with descriptions of new species of Ophiolepis and Ophiozonella (Echinodermata: Ophiuroidea: Amphilepidida)”. Zootaxa. 4377: 1-20.
・2017/12/23: リバネス 「サイエンスキャッスル関西大会」にて講演を行ってきました!
・2017/11/20-22: 第14回JAMBIO 沿岸生物合同調査@千葉県館山に参加してきました!
・2017/11/4: 平成29年度自然史学会連合公開講座「海の今昔を深~~く探る.」にて講演を行ってきました!
・2017/9/21: 日本動物学会 第88回富山大会@富山県民会館にて口頭発表を行ってきました!
・2017/6/4: 日本動物分類学会 第53回大会@海洋研究開発機構にて口頭発表を行ってきました!
・2017/3/28: 論文が出版されました!
Okanishi M, Fujita T, Maekawa Y, and Sasaki, T. (2017) “Non-destructive morphological observations of the fleshy brittle star, Asteronyx loveni using micro-computed tomography (Echinodermata, Ophiuroidea, Euryalida)”. Zookeys. 663: 1-19.
・2017/2/7: 論文が出版されました!
Okanishi M.(2017)
“A taxonomic review of the genus Astrohelix Döderlein, 1930 including the
synonymy of the subgenus Asteroporpa (Astromoana) Baker, 1980 to Astrohelix”
Zootaxa. 4227 (4): 543-553.
・2016/12/5: 論文が出版されました!
Okanishi M., Sentoku, A, Fujimoto, S, Jimi, N, Nakayama, R, Yamana, Y, Yamauchi, H, Tanaka, H, Kato, T, Kashio, S, Uyeno, D, Yamamoto, K, Miyazaki, K and Asakura, A. (2016)
“Marine benthic community in Shirahama, southwestern Kii Peninsula, central Japan”
Publications of the Seto Marine Biological Laboratory. 44: 7-52.
・2016/12/1: 論文(著書)が出版されました!
Okanishi M. (2016)
“Ophiuroidea (Echinodermata): Systematics and Japanese Fauna”
In: Masaharu Motokawa and Hiroshi Kajihara (eds.) Species Diversity of Animals in Japan.
Springer Japan, Tokyo, Japan, pp. 657—678.
・2016/11/18: 日本動物分類学会 第87回沖縄大会と,第22回国際動物学会議の合同大会にてシンポジウムを企画し,講演・ポスター発表を行ってきました!
・2016/6/12: 日本動物分類学会 第52回大会@札幌にて口頭発表を行ってきました!
・2016/5/18: 読売新聞に記事が掲載されました!
・2016/1/29: マイナビニュースに記事が掲載されました!
・2015/12/5: 第12回棘皮動物研究集会が開催されました!
・2015/12/1: マイナビニュースに記事が掲載されました!
・2015/10/30-11/6: タイ・プーケットで調査を行ってきました!
・2015/10/1茨城大学理学部生物科学コースに所属が移りました!
・2015/9/17-19:日本動物学会 第86回 新潟大会にて招待講演と口頭発表を行ってきました!
・2015/6/13-15: 日本動物分類学会 第51回大会@広島にて口頭発表を行ってきました!
・2015/6/6: 化石研究会 第33回総会・学術大会のミニシンポジウム「深海環境と生物」にて招待講演を行ってきました!
・2014/12/7: サイエンスカフェを開催してきました!
・2014/12/6: 第11回棘皮動物研究集会に参加してきました!
・2014/11/20-25: 沖縄で調査を行ってきました!
・2014/11/02-08: タイ・プーケットで調査を行ってきました!
・2014/10/11: Smips, 研究現場の知財分科会にて招待講演を行ってきました!
・2014/9/21: 論文が出版されました!
Okanishi M., Moritaki T. and Fujita T. (2014)
“Redescription of an euryalid bittle star, Astroceras coniunctum (Echinodermata: Ophiuroidea: Euryalidae).”
Bulletin of the National Museum of Nature and Science Series A (Zoology). 40 (3): 133-139.
・2014/9/11-13: 日本動物学会 第85回 仙台大会にて口頭発表を行ってきました!
・2014/8/31: 鳥取県立博物館特別展示「胸キュン☆サンゴ展~わたしを深海(うみ)につれてって~」の特別シンポジウムにて招待講演を行ってきました!
・2014/7/20-23: 2014 European Echinoderms Colloqium(欧州棘皮動物研究会議)にて口頭発表を行ってきました!
・2014/6/28: 日本古生物学会2014年年会・総会にて口頭発表を行ってきました!
・2014/6/13: 日本動物分類学会第50回記念講演会を企画いたしました.たくさんの方にお越しいただきました.ありがとうございました!
・2014/5/29: 研究費獲得のためのクラウドファンディング”academist”でのチャレンジが終了しました!最終獲得金額は,目標金額40万円を達大きく上回る63.45万円でした!
皆さん、本当に応援ありがとうございました。
・2014/4/22-25: WESTPAC 9th International Scientific Symposiumで口頭発表を行ってきました!
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岡西政典 OKANISHI Masanori
広島修道大学 人間環境学部
〒731-0112
広島県広島市安佐南区大塚東 1-1-1
Tel: 082-830-1245
mail: mokanishi(あっと)tezuru-mozuru.com