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もづる紹介コーナー(Astrocharis monospinosa④)

 

 

ヒメモヅルについての続記です.
 

コペンハーゲンから届いたAstrocharis gracilisのタイプ標本はこちら.
 

DSC_0295

こんな感じで,箱に丁寧に梱包されて送られてきます.

真ん中の小さいのが標本です.

この1個体が,A. gracilisの記載に使われた唯一一個体になります.
 

これに対して,アムステルダム博物館から届いたタイプ標本は2つの瓶に入れられていました.

DSC_2152

これと
 

DSC_2167

これです.
 

ijiami

そして日本近海から記載されたヒメモヅルA. ijimaiの標本がこれです(タイプ標本ではありません).
 

これらの観察を始めたところ,すぐに違和感に気づきました.

明瞭に区別できる形が見つからないのです.
 

先行研究では,A. gracilis, A. ijimai, A. virgoの順に体表の鱗が小さくなるというのですが,

少なくともタイプ標本だけを見てやるとどうにも分けられません.
 

そこで,先日も記事にした新種と思われる個体と,

日本で採れたヒメモヅルも含めて,41個体の鱗の大きさと,体サイズ(盤径)を相関させて比較したところ,
 

どうやらA. gracilisA. virgoのタイプ標本の一部とA.ijimaiの鱗の大きさは同じくらいであり,

A. virgoの別のタイプ標本はそれよりも鱗が小さく,

新種と思われる標本は統計的に鱗が大きい,ということがわかりました.
 

つまり,これまでに認められていた三種は,実は二種の混合だったのです.
 

そこで,これらの結果をまとめて,これまで三種が知られていたヒメモヅル属を,

Astrocharis monospinosaと名付けた新種の記載も含めて,

一減一増の末に,三種にまとめた論文を日本動物学会誌のZoological Scienceに発表しました.
 

http://www.zoology.or.jp/html/01_infopublic/01_index.htm
 

実は,このあたりの詳しい話は↑にも書かれています.
 

この論文は,初めはAstrocharis monospinosaの記載だけで発表しようと思っていたのですが,

もう少しまとまった発表にしたほうがいいのでは?

という藤田先生の意向もあり,

少し粘って分類学的再検討という内容にしました.
 

時間はかかったものの,

結果的に一つの分類群のレビューを初めて完遂することとなった,

思い出深い論文となりました.