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てづるもづるについて

Squamophis albozosteres

 

 

モヅル紹介です.
 

IMGP0722

Family: Astrocharidae ヒメモヅル科

Genus: Squamophis 

Specific name: albozosteres  
 
 

オーストラリアのビクトリア博物館に所蔵されていたモヅルです.

あまりに特徴的な形だったため一目で新種とわかったのですが,

その後DNA解析や詳しい形態観察を行ううちに,これが新属新種である事が分かりました.
 

この種を記載する際に,Squamophis属も新しく立てたわけですが,

実は処女論文で記載したAsteroschema amamiensisも,その新属に所属する事が分かりました.
 

Squamophis albozosteresをタイプ種として,現在では3種が知られています.
 

①各触手穴に腕針を一本だけ持つ

②体の背面に,茶色く板状の皮下骨片と白く顆粒状の皮下骨片を両方持つ

③白い皮下骨片は,腕では輪状になる
 

といった特徴で他種と区別できます.

SquamophisはSquama は「鱗の」,Ophisは「蛇」という意の合成語で,

albozosteresはalbus「白の」,zoster「環を持つ」という意味の合成語です.
 

IMGP0723

口側はこのように白くてかわいいやつです.


もづる紹介コーナー(Astrocharis monospinosa④)

 

 

ヒメモヅルについての続記です.
 

コペンハーゲンから届いたAstrocharis gracilisのタイプ標本はこちら.
 

DSC_0295

こんな感じで,箱に丁寧に梱包されて送られてきます.

真ん中の小さいのが標本です.

この1個体が,A. gracilisの記載に使われた唯一一個体になります.
 

これに対して,アムステルダム博物館から届いたタイプ標本は2つの瓶に入れられていました.

DSC_2152

これと
 

DSC_2167

これです.
 

ijiami

そして日本近海から記載されたヒメモヅルA. ijimaiの標本がこれです(タイプ標本ではありません).
 

これらの観察を始めたところ,すぐに違和感に気づきました.

明瞭に区別できる形が見つからないのです.
 

先行研究では,A. gracilis, A. ijimai, A. virgoの順に体表の鱗が小さくなるというのですが,

少なくともタイプ標本だけを見てやるとどうにも分けられません.
 

そこで,先日も記事にした新種と思われる個体と,

日本で採れたヒメモヅルも含めて,41個体の鱗の大きさと,体サイズ(盤径)を相関させて比較したところ,
 

どうやらA. gracilisA. virgoのタイプ標本の一部とA.ijimaiの鱗の大きさは同じくらいであり,

A. virgoの別のタイプ標本はそれよりも鱗が小さく,

新種と思われる標本は統計的に鱗が大きい,ということがわかりました.
 

つまり,これまでに認められていた三種は,実は二種の混合だったのです.
 

そこで,これらの結果をまとめて,これまで三種が知られていたヒメモヅル属を,

Astrocharis monospinosaと名付けた新種の記載も含めて,

一減一増の末に,三種にまとめた論文を日本動物学会誌のZoological Scienceに発表しました.
 

http://www.zoology.or.jp/html/01_infopublic/01_index.htm
 

実は,このあたりの詳しい話は↑にも書かれています.
 

この論文は,初めはAstrocharis monospinosaの記載だけで発表しようと思っていたのですが,

もう少しまとまった発表にしたほうがいいのでは?

という藤田先生の意向もあり,

少し粘って分類学的再検討という内容にしました.
 

時間はかかったものの,

結果的に一つの分類群のレビューを初めて完遂することとなった,

思い出深い論文となりました.


もづる紹介コーナー(Astrocharis monospinosa)③

Astrocharis monospinosa は新種であるということがわかりました.

しかし,Astrocharisi属の全3種の原記載を読んでみて,ふと気づいたことがありました.
 

これらは本当に区別できるんだろうか?
 

当時Astrocharisに知られていたのは,
 

A. virgo Koehler, 1904

A. ijimai Matsumoto, 1911

A. gracilis Mortensen, 1918
 

で,体表を覆う鱗が,それぞれ,小,中,大,ということで区別されていました.
 

しかしこれでは具体的な数字がなく,

本当にそれが明確に数値として分けられるのか不明瞭です.
 

こうなってくると原記載を読んデイてもラチがあきません.
 

そこでタイプ標本ですよ.
 

原記載の基となった標本を担名タイプ標本といい,

基本的にはこれらの標本に基づいて種の命名は行われます.
 

上記の三種のタイプ標本の所在を調べていたところ,

A. virgoはアムステルダム動物学博物館に,

A. gracilisはコペンハーゲン大学動物学博物館に,

それぞれ所蔵されている事がわかり,

学芸員さんにコンタクトをとってみたところ,なんと貸出をしてくれるというのです!
 

喜び勇んで申し込みをして数週間後,果たしてそれらの標本は,

はるばる海を越え,果たして私の手元に到着したのです.
 

続く


もづる紹介コーナー(Astrocharis monospinosa)②

Arm midd. ven. 5.0 (2)

科博に所蔵されていた標本はAstrocharis gracilisと同定されていました.

この種はMortensenによって1918年に記載されたものでしたが,

原記載の掲載雑誌が少なくとも国内になかったため,

Döderlein (1927)による別の個体の再記載を頼りにこの種を同定していました.
 

しかしDöderleinの記載と科博の個体はどうも形が異なるのです. 
 

果たしてこの違いは種内変異なのか,

それとも科博の個体は別種なのか?

見極めるためにはやはり原記載を見る必要がありました.
 

国外の図書館に複写を依頼して果たして手元に届いた原記載.

あれほど気持ちを昂ぶらせた文献拝読は未だかつてないかもしれません.

一ページずつページをめくるたびに,疑問が確信に変わっていきました.
 

Mortensen (1918)の原記載は,明らかにDöderlein (1927)と一致しており,

科博の標本とは異なることが分かりました. 
 

すなわちこの時点で,手元の標本は新種であるという事が明らかになったのです. 
 

しかし原記載を読んで気づいたことはこれだけではありませんでした.

続く.


もづる紹介コーナー(Astrocharis monospinosa)

DSC_2538
撮影[国立科学博物館:藤田敏彦]

Family: Astrocharidae ヒメクモヒトデ科

Genus: Astrocharis ヒメモヅル属

Specific name: monospinosa オオヒメモヅル(新称) 
 

非常にレアなモヅルです.

まずヒメモヅル属からして珍しい.
 

体の表面がブヨブヨの皮か細かい顆粒に覆われていることの多いツルクモヒトデ目ですが,

この属は体が鱗に覆われており,かつ輻楯(ふくじゅん)と呼ばれる盤の背面の板状骨片が,

裸出する,という特徴があります.
 

1.0

特に,この輻楯の裸出という特徴は,他のツルクモヒトデ目にはほとんど見られません.

私の中のかっこいいモヅルランキングベスト3には間違いなく入る属です.
 

生息域も,海山の頂上,約300 m以深に限られており,

種数も本種を含めて3種しか知られていません.
 

Astrocharis monospinosaは,
 

①体を覆う皮下骨片が他の種に比べて大きい(0.5-1 mm程度)

②各触手孔に生えている腕針が1本

③体内の側腕板や腕骨が腕の基部で裸出する
 

といった特徴によって区別されます.
 

私が科博の学生になって,博物館の標本を片っ端から見ていた時に,

この標本を見つけました.ヒメモヅル属である事はすぐにわかったのですが,

新種だという確信は得られませんでした.
 

その後,調査を進めているうちに本種が新種である事が突き止められていきました.
 

続く.


クモヒトデの腕骨

20120307_Stegophiura

こちらはクモヒトデの腕の中にある腕骨です.

我々の持つ脊椎のようにこの腕骨が腕の中に連なっているため,

英語ではVertebraと呼ばれます.
 

これは腕の先端側から見た画像で,

腕の基部側から見ると,この突起形状がフィットするような形になっています.

つまり,お互いが関節構造を持っています.
 

この関節の構造は分類群によって違っており,

古くから,主に科以上の高次分類群の分類形質に使われてきました.
 

この表面を拡大したのが以下の画像です.
 

20120307_Stegophiura000001

なんだか縞々が見えますよね.

実はこれ,クモヒトデの腕骨に刻まれる「年輪」と考えられています.
 

季節輪であるとの報告もありますが,

実際にこの輪がどのような生物学的特性によって刻まれているのかは,

いまだはっきりとはわかっていません.
 

しかも,実はこれは更新統から得られた化石なのです.

化石にも残るこの輪の特性がわかれば,

クモヒトデが生息していた古環境の復元も可能になるのではないかと考えています.
 

少し前からいろいろと手を広げて研究を進めているのですが,

最近それらの結果が徐々にまとまってきつつあります.
 

今年はいろいろと発表できることがありそうで,今からワクワクです.
 

それにしても,無限の可能性を秘めたこのクモヒトデ.

そろそろ一緒に研究をしてくれる仲間が現れないかなーと考えたりする今日この頃です.


てづるもづるについて~クモヒトデの体の仕組み④~

ARm

こちらはミツイタクモヒトデの腕の中部あたりの口側の画像.

画面の上側が腕の先端,下側は腕の基部(盤より)です.
 

前回記事にした,腕の反口側の構造同様,

口側でも,腕節を構成する以下の骨片のセットが観察できます.
 

①口側正中線上に並ぶ「腹腕板」

②その側面にある「側腕板」

③反口側でも見られる「腕針」

④通常は最も口側の根元にある触手孔の蓋の役割をする「触手鱗」
 

クモヒトデが骨片より成る動物である事が伺えるかと思います.

勿論内臓などの内部構造もあるのですが,それはまた別の機会に.
 

因みに,ツルクモヒトデ目では触手鱗がなく,

最も口側の腕針が触手鱗の役割を果たしています.


てづるもづるについて~クモヒトデの体の仕組み③~

出張の様子のレポートはひとまず置きまして,

クモヒトデの体の仕組みについて書きます.

これまで盤の仕組みついて解説をしましたが,

次は腕について.
 

Aboralarm

こちらは,ミツイタクモヒトデの腕の反口(背)側です.
 

クモヒトデの腕は,竹のような節の繰り返し構造になっています.

この節を腕節といい,一つの腕節は,

いくつかの骨片の組み合わせより成ります.
 

背側から観察できるのは主に,
 

①背腕板という板状骨片,

②その側面にある側腕板という板状骨片,

③側腕板に関節している腕針という針状骨片,
 

の三種類です.
 

特に腕針は棒状,フック状,鋸状など形が多様で,

その数も一腕節において一本から十数本と変化大きいため,

極めて重要な分類形質となっています.


てづるもづるについて~クモヒトデの体の仕組み②~

クモヒトデの体の仕組みがどうしても知りたいあなたへ,

クモヒトデの形態解説第二弾です!
 

前回と同じミツイタクモヒトデをみながらその体の仕組みを理解しましょう.

IMG_4852

こちらは体の口側.盤の真ん中には口があります.
 

Oraldisc3

鱗しかなかった反口側と違い,口側はやや複雑.
 

 五つの腕の延長線上の交差点に口があり,

様々な形の骨片が組み合わ去っているためです.
 

まず,口の入口部分は五つの顎に囲まれており,

その先端に生える歯で口を通る餌を咀嚼します.
 

この画像では全貌が見えませんが,歯は歯板という板状の骨片に間接しており,

歯版は口板という骨片に支えられています.

口板の外側には側口板が配置し.

対になった側口板の間には口楯という板状の骨片があります.

多くの種ではこの口楯の一つが巨大化し,多孔体の役割を果たします.
 

というように,口の周りを構成する骨が複雑に配置しています.

また,顎のスリット部分の最も口側には,

口棘と呼ばれる,歯に似た骨片が並んでいます.
 

また,間輻部と呼ばれる盤の口側の腕と腕の間には,生殖裂孔があります.

この生殖裂孔の縁に生じる突起は生殖棘です.
 

後にも述べたいと思いますが,

口の中から腕の先端までは触手の列が伸びており,

多くの種はこの触手伝いで,食物を口に運んでいると思われます.
 

このような歯,口棘,歯板,口板,側口板,口楯,

生殖裂孔,生殖棘などの形,数,大きさなどが分類形質になるのですが,

これらは,比較的高次(属や科)の分類に

使われていると思います.

(はっきりと検討したわけではありません).
 

一目には似たような形のクモヒトデですが,

顕微鏡レベルでは様々な形の違いが見て取れます.


てづるもづるについて~クモヒトデの体の仕組み①~

突然ですがクモヒトデの体の仕組みを解説いたします.
 

IMG_4851
ミツイタクモヒトデOphionereis prorrectaの反口側.

以前,ちょろっとだけ触れましたが,多くのクモヒトデは,

体の真ん中の「盤」という部分と「腕」が,見た目で明瞭に分けられます.

(実質的なヒトデとの違いは,歩帯溝がないことです)
 

クモヒトデの体はいろんな形の骨片に覆われており,

その形状が分類に使われています.

今回は,盤の形状についてご紹介します.
 

Aboral disc
上記個体の反口側の盤の拡大画像.

じゃーん,こちらが,盤の反口(背)側です.

基本的に,クモヒトデの盤は,「盤鱗」と呼ばれる鱗に覆われています.

この鱗も様々な形があり,盤のど真ん中のものひときわ大きく「中背板」と呼ばれ,

その周りに配置している5つの比較的大きなものは「下址板」と呼ばれます.
 

これらは合わせて「第一次板」と呼ばれ,他の盤鱗と区別されます.
 

また,腕の付け根部分には,輻楯(ふくじゅん)と呼ばれる対の鱗があり,

この形や大きさは多くの種で重要な分類形質となっています.
 

勿論,鱗だけでなく棘や皮に覆われたり,第一次板のような鱗の区別がないもの,

輻楯が他の骨片などに覆われて見えないものがいたりと,種によって形質状態は様々ですが,

これらの特徴は昔も今も重要な形質として使われていることは間違いありません.


Asteroporapa (Astromoana) koyoae Okanishi & Fujita, 2011(コウヨウモアナモヅル)

Asteropoapa (Asteromoana) sp

Family: Goegonocephalidae テヅルモヅル科

Subfamily: Gorgonocephalinae テヅルモヅル亜科

Genus: Asteroporpa シゲトウモヅル属

Subgenus: Asteroporpa (Astromoana) モアナモヅル亜属

Specific name: koyoae コウヨウモアナモヅル
 

トゲモアナモヅルと同時に記載したモヅルです.

当然のことながら,発表当時は日本初記録亜属のモヅルでした.



2009年に小笠原での科博の深海調査に参加させてもらった際に,

お世話になった水産実験センターの方が,

「例えば,深海籠調査ではこんなのが採れますよ~.」

と言いながら気軽に見せてくださったものの中に混じっていました.



①盤の反口側の縁部に,フックがついた板を持つ,

②盤の反口側は一様な大きさの円錐型皮下骨片に覆われる

③それらの皮下骨片の先端には,皮下骨片の高さよりも長い棘が生じる

 

といった特徴で他種と区別できます.

せっかくなので,水産実験所の研究船「興洋」に献名しました.

本種はこの個体以降採集されていないため大層珍しいのだと思われます.

採集における人脈の大切さを教えてくれた種です.

 

撮影:岡西政典


Asteroschema salix Lyman, 1879

もづるを紹介しましょう!
 

Asteroschema salixのコピー

Family: Asteroschematidae タコクモヒトデ科

Genus: Asteroshema ヒトデモドキ属

Specific name: salix (和名なし) 
 

日本では,南硫黄島からしか発見されていない珍しい種です.

他にはオーストラリア,フィリピン,ニュージーランドの329-2999 mに分布しています.
 

①体全体が小さな顆粒状の皮下骨片に覆われている

②それらの皮下骨片は,大きさ約0.07 mm-0.08 mmと小さい

③輻楯は縦長で,長さは太さの約2.5-3倍

④腕針の長さは各腕節長の約2倍
 

といった特徴で他種と区別できます.

こいつが所属するヒトデモドキ属は外部形態が非常に少ないため,

体表の微小な骨片の大きさなどで分類していますが,

詳しい種分類を行うためには,DNA解析なども行ったほうが良いと思われます.


Asteroporapa (Astromoana) muricatopatella Okanishi & Fujita, 2011(トゲモアナモヅル)

 

DSC_6487 (コピー)

Family: Goegonocephalidae テヅルモヅル科

Subfamily: Gorgonocephalinae テヅルモヅル亜科

Genus: Asteroporpa シゲトウモヅル属

Subgenus: Asteroporpa (Astromoana) モアナモヅル亜属

Specific name: muricatopatella トゲモアナモヅル
 

こちらはなかなかの珍モヅルです.

シゲトウモヅル属は日本の太平洋側から古くより記録が知られるのですが,

1980年にニュージーランド産の種に対して設立されたモアナモヅル亜属は,

日本からは知られていませんでした.
 

同属のシゲトウモヅルAsteroporpa (Asteroporpoahadracantha は古くより日本の太平洋側より記録があります.

科博にもたくさんのシゲトウモヅルの標本があり,

それらを調査していたところ,6個体ほど入った瓶の中に,

1個体だけ顕微鏡で見ると明らかに形態が異なる種を見つけました.
 

それがこのトゲモアナモヅルです.
 

①盤の反口側の縁部に,フックがついた板を持つ,

②盤の反口側は一様な大きさの円錐型皮下骨片に覆われる

③それらの皮下骨片の先端には,皮下骨片の長さよりも短い棘が生じる
 

クモヒトデでは,パッと見て,すべて同種だろうと思うような数が採れることがよくあるのですが,

実際に検鏡して見るとこのように別種が混じっていることがよくあります.
 

 

どのような分類群でもそうかもしれませんが,

必ず検鏡しないと「同定した」と言えない,ということを教えてくれた種です.

撮影:岡西政典


てづるもづるとは⑦

テヅルモヅルの分類について,少しずつお話してきますよ!
 

テヅルモヅルは,クモヒトデ綱ツルクモヒトデ目に所属しますが,

テヅルモヅル≠ツルクモヒトデ目です.
 

ツルクモヒトデ目の中には腕が分岐しないものもいます.

こう書くと腕が分岐しない種の方がマイナーっぽいですが

実は腕が分岐しない種の方が多数派です.
 

現在約180種が知られているツルクモヒトデ目のうち,

テヅルモヅルはなんとたった63種で,1/3くらいです!

棘皮動物研究集会

これこのとおり.
 

つまり,テヅルモヅルはマイナー(クモヒトデ綱)中の

マイナー(ツルクモヒトデ目)中の

さらにマイナーな存在なのです.

これでは研究が進むわけありません.
 
 
 

では,腕が分岐しない種と腕が分岐する種は何が違うのか?
 

私のこれまでの系統分類学的な研究の結果から,

少しずつその適応的な意味が分かってきています.
 

続く.


テヅルモヅルとは⑥

クモヒトデがツルクモヒトデ目とクモヒトデ目に分けられるということですが,

ではこの二目は何が違うのか.
 

以前は腕の腕骨と呼ばれる骨の形で分けられていましたが,

研究が進むにつれ,両目で共通の形の腕骨がみられることが明らかになり,

現在では腕骨による分類はできません.
 

私が研究を進めていたところ,

どうやら二目は腕の別の骨片によって分けられることがわかってきました.
 

クモヒトデ類は腕の周りに腕針と呼ばれる針状の硬い器官を備えています. 
 

実はツルクモヒトデ目とクモヒトデ目は,

この腕針の配置が決定的に異なるのです.
 

クモヒトデ目では,この腕針が須らく腕の側面についています.例外はありません.

これに対しツルクモヒトデ目では腕針がすべて口側についてます.

クモヒトデを反口側から見てみると一目瞭然で,

クモヒトデ目の腕はなんだかフサフサしているのに対して,

ツルクモヒトデ目はつるっとしています.
 

Eu-Oph

(左)ツルクモヒトデ目のキヌガサモヅル(Asteronyx loveni)と

(右)クモヒトデ目のスナクモヒトデ科の1種の反口側(背側).



キヌガサモヅルは腕がツルっとしてますが,

スナクモヒトデ科の一種は腕がフサフサしているのがお分かりいただけますでしょうか?


ただし,この腕針が退化的で非常に小さくなっている種もいますので,

確実に見分けるためには顕微鏡が必要です.



 
腕針の配置なんて簡単に変わりそうなものですが,この違いはかなり顕著ですので,

何か重要な機能的な理由があるのではと考えられます.



 

ツルクモヒトデ目の多くの種は,

現生の種をみる限り,ヤギなどのサンゴに絡んでいます.

一方クモヒトデ目は(例外はありますが),ヤギに絡むことはほとんどありません.

口側の腕針は,ひょっとするとヤギに絡むために発達した器官なのかもしれません.



 

この腕針の機能の探究も,てづるもづる研究の一つの興味深いテーマかもしれませんね.


テヅルモヅルとは⑤

最近友人から,
 

「このHPを見てもてづるもづるについて何もわからないじゃないか!」
 

というご指摘を頂きました.
 

全くその通りかと思います.
 

ということで,もう少し真面目にテヅルモヅルについてお話をします.
 

これまでにヒトデ綱とクモヒトデ綱の違いをお話ししました.

次はいよいよクモヒトデ綱の中の分類についてお話いたしましょう.

クモヒトデ綱は現在約2070種が知られており,

おそらく棘皮動物門の5つの綱中では最多種数です.
 

その最たる理由は,おそらく柔軟な腕にありましょう.

この腕を器用に動かすことで,体を小さく折りたたみ,

岩の隙間,砂の中,サンゴなどの他の動物の上など,

他の棘皮動物には到達しえない様々な環境に生息可能となった結果,

多様性を獲得できたと考えられています.
 

しかし悲しきかな.
 

これらは基本的には隠蔽的,すなわち人目に付かない環境ばかりです.

従って,彼らは莫大な種多様性を獲得しながらも,

知名度ではウニ,ナマコ,ヒトデには遠く及びません.

Yahoo Newsにのりました!
 

少し話が脱線しました.話を分類に戻しましょう.

クモヒトデは種数が多いため分類群が多く,

科の数は20を超えていています.

しかしながら,目の数はたった二つ,
 

クモヒトデ目ツルクモヒトデ目です.
 

しかしこの分類には大きな偏りがあり,クモヒトデ目が約1900種なのに対し,

ツルクモヒトデ目は180種ほどです.
 

実はテヅルモヅル類が属しているのはこのツルクモヒトデ目です!
 

すなわち,テヅルモヅルは,
 

マイナーなクモヒトデ綱の中でもさらにマイナーなグループなのです.
 

続く.


てづるもづるとは④

てづるもづるの説明について、大分時間が経ってしまいましたが、マイペースで説明していきますよ!

ヒトデとクモヒトデの違い、それはズバリ、腕の中の骨格の構造の違いです。

ヒトデの腕の中にはいくつかの骨片が組み合わさっており、その構造から腕の口側に歩帯溝という溝を備えています。

ここから管足という触手を出し入れし、主に移動に使っています。

ところが、クモヒトデではこの溝が腹腕板という板によって閉じられています。

そして、 その腹腕板の縁っこに、触手孔と呼ばれる、

管足(クモヒトデでは管足は触手と呼ばれています。これは、直した方がよいと個人的には思っています。) を出し入れする穴があります。

つまり、腕の口側に溝があるかないか、 これがクモヒトデとヒトデを見分けるシンプルかつ本質的な違いなわけです。

Trichaster_Cetonardoa2

こちらの図はCetonardoa属のヒトデ(左)ツルタコクモヒトデ(右)の腕の口側(腹側)の様子です。

ヒトデの腕の正中線上には溝がありますが、クモヒトデの腕には溝らしき構造が見られないのがお分かり頂けると思います。

みなさんも、海で星形の生き物をみつけたら、ひっくり返して口側を見てみましょうね。


てづるもづるとは?③

クモヒトデはヒトデとどう違うのか?

 

よく「クモヒトデは体の真ん中の”盤”という部分と”腕”が明瞭に異なるが、 ヒトデはその境界が不明瞭である」という説明を目にします。

 

確かに、この違いで95%くらいのクモヒトデがヒトデから区別されます。

 

しかし、実はこれは本質的な違いではありません。

 

Trichaster_Cetonardoa

例えばこちらの図はCetonardoa属というヒトデ(左)とツルタコクモヒトデ(Trichaster palmifer)の 反口側(背側)の様子です。どちらも盤と腕の境界がはっきりしてません。

 

つまり、クモヒトデの中には盤と腕の境が不明瞭な種もいますし、ヒトデの中にも盤と腕の境が明瞭に見える種もいるのです。

 

では、本質的な違いは何なのか。

 

ふふふ。気になってきたでしょう。

 

続きはまた今度!


てづるもづるとは?②

私の研究対象のクモヒトデをご存じでないかたも多いかと思いますので、ご説明をば。

クモヒトデとは、ヒトデやナマコと共に棘皮動物門を形成しているひとつのグループです。

よく「え?ヒトデですか?」と聞かれますが、違います。
 
 

確かに、星形をしており、さらにクモヒトデ という名前が付いていることから

こういう勘違いが生まれてしまうのですが、

クモヒトデはヒトデとは形態が全く異なる別のグループです。こちらの図を御覧ください。
 

phy_Echi

これは、現在もっともらしいと考えられている 棘皮動物の中の各グループの系統樹です。
 

ヒトデとクモヒトデが異なるグループである事が見て取れると思います。

分類学的な階級で言うと、綱レベルで違い、これはナマコとウニの違いに相当します。
 

では、実際どこがどんな風に違うのか!?
 

ふふふ、気になってきたでしょう。
 

続きはまた今度!


てづるもづるとは?①

このブログのタイトルにもなっている「てづるもづる」についてご紹介。

これはユウレイモヅル(Euryale aspera)というテヅルモヅルです。
 

Easpera

そもそも、てづるもづるとは一体何者なのか?
 

まず、よく「サンゴの仲間ですか?」と聞かれます。違います。
 
 

「植物ですか?」と聞かれます。かなり違います。
 
 

てづるもづるは、「棘皮動物門」に属する海産の無脊椎動物です。
 

「門」というのは、この世の動物を、基本的な体の仕組みに基づいて分けた時の単位です。

現在、地球上の100万種を超える動物に名前がつけられていますが、

それらは 30~40くらいの「門」に分けられると考えられています

(この数は研究者によって異なりますが、私は大体32-3門くらいだろうと思っています)。
 

そして門の中にはさらに綱という細かい単位があり、

その中にはさらに目という単位があり… というふうに、地球上の生物は階層状にわけられています。

これは、PC内のファイルをフォルダに階層状に振り分ける作業と似ています.
 

この分類の単位は上から順に界、門、綱、目、科、属、種、という風に分けられています。

てづるもづるは、動物の中では棘皮動物門、クモヒトデ綱、ツルクモヒトデ目というグループに所属しているというわけです。
 

ここで、そもそもクモヒトデって何!?という話になってくると思いますが、

それはまた今後お話いたしましょう。