科博に所蔵されていた標本はAstrocharis gracilisと同定されていました.
この種はMortensenによって1918年に記載されたものでしたが,
原記載の掲載雑誌が少なくとも国内になかったため,
Döderlein (1927)による別の個体の再記載を頼りにこの種を同定していました.
しかしDöderleinの記載と科博の個体はどうも形が異なるのです.
果たしてこの違いは種内変異なのか,
それとも科博の個体は別種なのか?
見極めるためにはやはり原記載を見る必要がありました.
国外の図書館に複写を依頼して果たして手元に届いた原記載.
あれほど気持ちを昂ぶらせた文献拝読は未だかつてないかもしれません.
一ページずつページをめくるたびに,疑問が確信に変わっていきました.
Mortensen (1918)の原記載は,明らかにDöderlein (1927)と一致しており,
科博の標本とは異なることが分かりました.
すなわちこの時点で,手元の標本は新種であるという事が明らかになったのです.
しかし原記載を読んで気づいたことはこれだけではありませんでした.
続く.