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Monthly Archives: 2月 2018

棘皮動物の体軸について

東京大学では先日,修士論文の発表会が終わりました.

その後教職員の懇親会に参加させていただき,東大に帰って来たんだなあと密かに実感していました.

今回は三崎からのも発表者がいましたが,そのいずれも棘皮動物を扱っており,何度も発表練習を聞きました.



その中で何度か話題に上がったのが,棘皮動物の体の方向性を表す言葉です.



棘皮動物は,体が五放射(星形)なので,「前後軸」がちょっとわかりにくいです.

例えば,普段見るウニやヒトデには,「前後」はあるのでしょうか?そして「背腹」は?

一つ明確なのは,ヒトデやウニ,クモヒトデでは,いつも地面に向けている方と,その反対側は体の作りが大きく異なり,

ほとんどの種では地面に口を向け,その反対側に肛門があります.

この体制の事を,「背腹」と呼ぶか,「口・反口」と呼ぶか,というところで問題が生じます.



この原因の一つがナマコの存在です.

ナマコは,体の進む方向に口,反対側に肛門があります(ほぼ固着生活を送るものもいますが).

さらに,その前後軸に対して,多くの種が明確な背腹を持ちます.



従って,例えばウニ,ヒトデ,クモヒトデで「背腹」(肛門と口)を使うと,

これはナマコの「背腹」とは違ったものを指してしまうことになります.

従って,私は,これらの生き物の体制を指す時には「口・反口」を使うようにしています.



ウミユリ綱(ウミシダを含む)は,地面と反対側に,口と肛門を両方もちます.

ですので,実はウミユリ類では,ウニやヒトデとは地面と口の向きの関係が逆になっています.

ただこの場合も「口・反口」が使えるでしょう.



しかし何事にも例外は存在し,

ウニにもナマコのように,前後軸や背腹が存在する不正形ウニ類(ブンブク・カシパンなど)も存在します.

これらも含め,棘皮動物の体制の呼称をどうするかについては,未だに研究者間でも統一がみられません.


論文が出版されました

2018年早々に論文が出版されました.琉球諸島の4つの海底洞窟から,クモヒトデの2新種を発見した,という論文です.
 

海底洞窟内部には,低塩分,低光量の特殊なアンキアラインと呼ばれる環境を形成することがあり,

今回発見した新種のうち,Ophiozonella cavernalisは,そのような環境固有の種と思われます.
 

また,このような環境に生息する種の発見は世界で二例目で,日本を含むインド―太平洋海域から初報告となります.



書誌情報

Okanishi, M*, Fujita, Y. (2018) First finding of anchialine and submarine cave dwelling brittle stars from the Pacific Ocean, with descriptions of new species of Ophiolepis and Ophiozonella (Echinodermata: Ophiuroidea: Amphilepidida).  Zootaxa. 4377: 1—20.

LINK (オープンアクセスではありません)



ちなみに私にとっては,初のテヅルモヅル以外のクモヒトデの記載論文となります.これを機に,色んなクモヒトデに目を向けていければいいなと思っております.