東京大学では先日,修士論文の発表会が終わりました.
その後教職員の懇親会に参加させていただき,東大に帰って来たんだなあと密かに実感していました.
今回は三崎からのも発表者がいましたが,そのいずれも棘皮動物を扱っており,何度も発表練習を聞きました.
その中で何度か話題に上がったのが,棘皮動物の体の方向性を表す言葉です.
棘皮動物は,体が五放射(星形)なので,「前後軸」がちょっとわかりにくいです.
例えば,普段見るウニやヒトデには,「前後」はあるのでしょうか?そして「背腹」は?
一つ明確なのは,ヒトデやウニ,クモヒトデでは,いつも地面に向けている方と,その反対側は体の作りが大きく異なり,
ほとんどの種では地面に口を向け,その反対側に肛門があります.
この体制の事を,「背腹」と呼ぶか,「口・反口」と呼ぶか,というところで問題が生じます.
この原因の一つがナマコの存在です.
ナマコは,体の進む方向に口,反対側に肛門があります(ほぼ固着生活を送るものもいますが).
さらに,その前後軸に対して,多くの種が明確な背腹を持ちます.
従って,例えばウニ,ヒトデ,クモヒトデで「背腹」(肛門と口)を使うと,
これはナマコの「背腹」とは違ったものを指してしまうことになります.
従って,私は,これらの生き物の体制を指す時には「口・反口」を使うようにしています.
ウミユリ綱(ウミシダを含む)は,地面と反対側に,口と肛門を両方もちます.
ですので,実はウミユリ類では,ウニやヒトデとは地面と口の向きの関係が逆になっています.
ただこの場合も「口・反口」が使えるでしょう.
しかし何事にも例外は存在し,
ウニにもナマコのように,前後軸や背腹が存在する不正形ウニ類(ブンブク・カシパンなど)も存在します.
これらも含め,棘皮動物の体制の呼称をどうするかについては,未だに研究者間でも統一がみられません.