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Monthly Archives: 12月 2014

ウニウニ君

 

 

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ウニの解剖開始

外部形態→内部形態と,みられる特徴を余すところなく見ていきます.
 

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そしてこちら!今回は秘密兵器を導入していました.

私(右手)が触っているタッチパネルにウニの動画を映し出し,

詳しいウニの特徴を詳細な動画で理解できる次世代型教育機器です.

この写真では,私のタッチパネルの操作が,そのままモニターに反映されます.
 

叉棘の動きや多孔体の配置,水管系の仕組みなど,

なかなか解剖の現場では全員に教えにくいことも,

この装置ならその場で瞬時に見せることができます.

また,本来は展示品として開発したものなので,自発的な学習にも役立ちます.
 

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開発者はこの方.自然共生研究センターの渡辺友美さんです.

実は今年の動物学ひろばの隣のブースでこの展示を見かけたときにお話をして,

今回の実習に使わせていただきました.

お陰様で,いつもは解説が難しい部分まで詳細に見せることができました.

ありがとうございました!
 

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まだ開発途中らしく,今後,様々な意見を取り入れ,教育用にも開発を進められるとのこと.

完成版が楽しみです

ちなみに,今回の実習でこの装置に「ウニウニ君」という愛称が付けられることとなりました

 


棘皮動物の解剖

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今年最後の実習では,棘皮動物(ウニ,ヒトデ,ナマコ)の解剖を担当しました.
 

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クモヒトデは解剖できるほどの大きさではないので,

標本でその存在を紹介.
 

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ウニの解剖の方法の説明.基本的には赤道面上でパカッと割ります.
 

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こちらが,ウニの体内部の様子.北極から(口側を)見た様子です.

真ん中にはアリストテレスのランタンとも呼ばれる,強大な歯を備えているのがわかります.

体の側面にあたる部分には,黒色の消化管が裏打ちされています.

時期であればこの消化管の間に生殖巣が発達しているのですが,

残念ながらこの個体ではほとんど見当たりませんでした.
 

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  ヒトデも,腕二本を切って,その間から盤中心を除くように観察します.

ウニでもヒトデでも,瓶嚢と呼ばれるスポイト状の部分で,

水管系の水圧を調整している事が見て取れるかと思います.


仕事納め

 

 

先日は仕事納めでしたね.
 

私も,今年最後の仕事を終えてきました.

12/25-27にかけて,大阪府立豊中高校の臨海実習が行われました.

スーパーサイエンスハイスクールの一環で,

生物好きな高校生たちに,大学の教育カリキュラムの一部を体験してもらうという催しです.
 

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我々研究員も協力いたしました.こちらは河村博士によるウニの実習.

今年最後の実習の様子をレポートしていきます
 


戒め

 

 

トスロンバケツ...
 
 

野外調査に関わる者なら,誰もが一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?

他の追随を許さない高密閉性を誇り,調査や標本保管に大活躍の優秀なバケツです.

特にテヅルモヅルのような大型の動物の研究には欠かせません.
 
 
 
 
 

先日のことです.調査道具を入れたトスロンバケツを郵送したところ,
 
 
 
 
 
 

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こんな姿になってしまいました.
 
 

側面ベッコリです.

もちろん犯人は私ではありません.

空輸による気圧の変化によるものです.
 

蓋にタオルなどを噛まして密閉性を低める事で対策できるのですが,

今回は発送から到着まで時間を持たせていたので,

まさか空輸はあるまいと油断していました.
 

いずれにせよ,変わり果てたトスロンの姿に枕を濡らしましたね.

気圧による更なる犠牲を防ぐため,そして自戒の意を込めここに記録します.
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

※数日後にはトスロンは元通りになっていました.


深海

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こんな本を手に入れてしまいました
 

JAMSTECの藤原義弘先生の監修による「深海」です!
 

鯨骨生物群集と深海生物を絡めた内容となっており,

学術的にも非常に興味深いのですが,
 

何よりも一枚一枚の深海生物の写真が超美麗です.
 

勿論(?)テヅルモヅルも載っています.
 

お子様のクリスマスプレゼントにピッタリな一冊です


Astrocladus coniferus (Döderlein, 1902)

 

よく考えたらこのウェブサイトの名前にはてづるもづるがついているのに,

てづるもづるを紹介していませんでした.
 

セノテヅルモヅル

ということであいさつ代わりにこちら.

セノテヅルモヅル(Astrocladus coniferus Döderlein, 1902)
 

明治期の学問(特に博物学・動物学など)の近代化に一役買った,

いわゆるお雇い外国人教師の一人のルートウィヒ・デーデルラインが記載した種です.
 

おそらく日本沿岸では,比較的よくみられる種でしょう.和名の「セノ」は「瀬の」の意味で,

比較的に浅瀬でもみられることからこの名前がついているのだと思います.
 

①腕針が盤の外側部分,第1分岐か2分岐より生じる,

②多孔体が盤側面の口側よりの部分にある,

③体表を覆う小さな突起が体表に散在する,
 

といった特徴から他種と区別されているのですが,

それが本当に種としての安定した形質なのかは未だに疑問が呈されています.
 

この種についても,研究を進めつつあるので,

見つけた方は是非ご一報を。


分類(献)学

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最近,日本のクモヒトデの情報をまとめています.

テヅルモヅル類についてはほぼ完全にまとめているのですが,

クモヒトデとなると,まだ完全ではありませんでした.
 

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実は分類学には文献学の側面もあり,

たとえばとあるグループの分類の情報を整理する際には,

過去のいかなる情報も漏らさず目を通す必要があります.

先人が残したクモヒトデの記録情報を,

種名,場所,日付,水深,水温などの項目ごとに,一件一件まとめます.
 

結構単純作業なのでやってる途中は本当にしんどいのですが,

ある程度情報量が増えてくると,不思議なことに,

生物の特性の分布の関係が浮かび上がったりしてきます.

生物学はこのような毎日の地道な作業の積み重ねですね.
 

ちなみにこのデータは,エクセルに打ち込んでデータベースなどに運用するのですが,

そんなものがなかった昔(1800年代とか)の研究でも,

正確に記録がまとめられています.
 

偉大な先生方にはまだまだ及びません.


伊良部島調査⑭

伊良部で採れた棘皮動物シリーズ
 

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まずは手始めにツマジロナガウニ.

どこにでもいます.
 

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ちょっと変わってオウサマウニ類.

やはりこの子はいつ見てもかっこいい
 

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腕がバラバラになってしまったクモヒトデ.まさにBrittle(=脆い) star(=ヒトデ)ですね.

この種は八放サンゴに絡んでいたのですが,うまく捕まえられなかったので,

私がピンセットでつついているうちに腕が切れてしまったようです.
 

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しかしご覧くださいこの盤の色彩の美しさ.

よく見ると,非常に長い棘も生えています.

おそらくトゲクモヒトデ科(Ophiotrichidae)というグループでしょう.
 

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フサクモヒトデ科(Ophiocomidae)の類.
 

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こいつも,盤をよく見ると網目模様でかっこいいじゃないですか
 

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もういっちょフサクモヒトデの類.
 

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これ,何かに似てると思ったら,サンゴの隔壁に似ている気がする!
 

「サンゴ 隔壁」で検索したら,こんな記事にいきあたりました.
 

なるほど,冬瓜にも似ているのですね.
 

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こちらはアワハダクモヒトデ(Ophiodermatidae)の類と思われます.
 

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盤の表面にも,小さなクモヒトデが(笑)

こいつは腕が小ぶりでなかなかキュートなヤツです.
 

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星形だけではありません。 棘皮度物の中には,6本以上の腕を持つ奴もいます.

数は少ないのですが,奇形などでなく,6本で種のなかで固定しているところを見ると,

祖先から分岐してしばらく経つクモヒトデの中には,

もはや星形にこだわる事をやめたのかもしれませんね.
 

実は,棘皮動物がなぜ五放射なのかという疑問に対する十分な答えはまだ得られておらず,

後生動物の体の仕組みを考える上での大きな謎のひとつとなっています.
 

いつかはそんな謎にも挑戦したいなあと思いながら,

まずは目の前の課題をこなさなくてはならないのでした.
 

今年もあと少し,頑張ります


もづる紹介コーナー(Squamophis amamiensis②)

 Squamophis amamiensisについての追記です.
 

はじめ,科博でこの標本を見た際には,

新種とはわからなかったのですが,手元の文献では名前が調べられませんでした. 
 

前記事でも述べましたが,ヒトデモドキ属はとにかく外部形態が少ないのですが,

種の分類に用いられていたのは体表の骨片(皮下骨片と我々は呼んでいます)の形状や配置でした.

粒粒の骨片やトゲトゲ等,様々な形の小さな骨がこの属の種の体を覆っており,

その大きさや密度等が分類の指標になっていました.
 

まずはこれらの形態を整理しなくては始まらないので,

古今東西の全てのヒトデモドキ属の記載文献を集め,解読したところ,

いずれの記載にも一致しない事がわかりました.
 

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ほとんどの種が顆粒状やトゲトゲの骨片を持っているのに対し,

この標本の体表の骨片の形は,写真のようにうろこ状だったのです.
 

さらに観察を続けると,腕に生えている針の数や,体内の骨片の形状までが,

他の種と異なっていることを見出しました.
 

そこで,これらの違いをまとめ,約1年近くかけて論文を準備しました.
 

この間に何度も何度も原稿を修正してくださった藤田先生には,本当に感謝です.
 

こうして,出会いから一年以上を経て,

本種はAsteroschema amamienseという名前で発表されました.
 

その後,この種が実はツルクモヒトデ目の中でもかなりの変わり種という事が分かってきたのですが,

それはまた別の機会にお話いたしましょう.


棘皮グッズ

  先日の記事で,クモヒトデイヤリングをご紹介いたしました.



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こちらが所有者の@木登りヤギ(Twitterアカウント)さんです.

なんとこの方,この日は全身棘皮グッズで参加されていました.



ウニ・ヒトデネックレス,ウニTシャツまで

木登り2

おそらく会場における棘皮力は群を抜いていたと思います.
 

実はこのようなありとあらゆる生き物愛好家で集まって,

グッズ販売,パネルディスカッション,講演等によて交流する

参加型創作イベントがあるそうです.



その名も「いきもにあ



一年後の2015年12月12-13日に,

京都市勧業館「みやこめっせ」で開催予定とのこと. 
 

もし余裕があれば,次回は参加して棘皮グッズをゲットしたいです



ちなみに,木登りヤギさんは,かの有名な

なにわホネホネ団」にも所属されています.


もづる紹介コーナー(Squamphis amamiensis)

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こちらは,Squamophis amamiensis (Okansihi and Fujita, 2009)という種です.

私と,師匠の藤田先生が2009年に新種として発表しました.
 

私が初めて論文にした,思い出深いヤツでもあります.
 

現在はSquamophisという属に移されていますが,

私が記載した際は,この種はヒトデモドキ属(Asteroshcema)に属していました.

この属は,他に比べて外見の差が少ない(形態形質が少ない)にもかかわらず,

ツルクモヒトデ類の中では珍しく34種という多種を含みます(他の属は,多くても10種程度です).
 

多種=多様と考えてもよいのですが,

分類が進んでいないグループでは同種異名が多いということが考えられます.
 

この属はまさにそのようなグループだといわれており,

各地の研究者によって種が乱立している状態でした.
 

しかし,私が修士でこのヒトデモドキ属の情報を整理しているうちに,

科博に所蔵されていたある標本が,どうしても既存の種の記載に当てはまらないことに気付いたのです.
 

そこで一大決心し,この個体を新種として発表することを決めました.


ふぉっとっと

 

買いました

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こちらの三点
 

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アクリル観察ケース,「ふぉっとっと」です
 

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このケースの特徴はこちら!なんとスケールが付いています
 

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平型もあります
 

こちらのマメチ・プロダクションさんで購入できます.
 

瀬戸臨海の実習に参加すると,

ふぉっとっとでナイス生物写真が撮れます


標本整理③

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最近調査が多いので,サンプルがたまってきました.

少しずつ整理をしていかなくてはなりません.
 

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 現場でパッキングした標本はこのように,

ビニールパックに耐水紙とともに入れ,
 

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ポリ瓶にぎっしり詰めてあります.
 

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中身を取り出しまして,
 

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瓶に移します.
 

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なるべく中の保存液(基本はエタノール)が揮発しないよう,

我々はこの二重蓋の瓶を使っています.
 

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そしてエタノールを注ぐ
 

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きっちり肩まで入れましょう.標本が小さいからと言ってけちると,

後で揮発量が分からなくなります.
 

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蓋を閉めて完成

この状態で置いておけば,少なくとも何十年という単位で保つはずです.
 

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ラベルだけでなく,蓋にも識別番号などをつけておくとより効果的です.

例えば万が一中のラベルが無くなっていても,蓋の識別番号から情報を追うことができます.
 

また,最近はレーザープリンタで耐水紙に打ち出したラベルを使うことあありますが,

場合によっては文字がはがれてしまう事があります.
 

そのため,ラベルには必ず手書きで標本番号を書いておくとよいでしょう.

オーストラリアの博物館では,一度レーザープリンタから打ち出したラベルを,

オーブンで少し焼いて,文字を定着させるという技を使っていました.
 

標本の恒久的な保管のために,世界中で様々な工夫が凝らされています.
 

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また,あまりに小さいものは,さらに小さなバイアルなどに入れないと,

瓶の中で探すのに苦労します.
 

しかしそのようなバイアルは小さすぎて紛失しやすいため,

このように瓶に入れておくことで紛失を防ぐ共に,

同じ大きさで瓶の規格が統一され,整理がしやすくなります.
 


もづるcafe

 

2014年12月7日に,東京高田馬場にて,モヅルカフェを開催してきました
 

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サイエンスカフェということで,雑誌の表紙などを参考に,

なるべくオシャレなフォントを使ってタイトルページを作りましたが,

持ち込んだノートPCへのフォントのインストールを忘れたため,

あえなく撃沈.慣れないことはするもんじゃないですね
 

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たっぷり一時間半,モヅルや研究についてあれこれしゃべってきました.
 

そもそも,テヅルモヅルとは何者なのか?

海藻ではありません「クモヒトデ」です
 

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では,そのクモヒトデとは何者なのか?

クモでもヒトデでもありません!でも,ヒトデはちょっと惜しい
 

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クモヒトデもヒトデも,ウニやナマコと同じ「棘皮動物」というグループに含まれます.

じゃあ,よく言われるクモヒトデとヒトデの違いとは?
 

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私が専門にしている分類学ってどんな学問?

その歴史と実際まで,楽しく解説してきました.
 

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なぜ,私はテヅルモヅルを研究しているのか

テヅルモヅルを研究する意義とは?8年間蓄積した情熱をぶつけてきました.
 

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そして,前日の棘皮動物研究集会でも発表した,

キヌガサモヅルの分子系統地理のお話もしてきました.
 

参加者(サポーター)の方から「思ったより進んでいてびっくりした」とおっしゃっていただきました
 

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最後に,みなさんでもづるポーズ
 

「もづるトークをします」との呼びかけに,これだけの人が集まってくださいました.

なかなか注目されにくいマニアックな研究でも,

ちゃんと人の知的好奇心の一部を満足させられることが分かっただけでも,

開催して良かったと思います.
 

academistの支援者の皆様,

academist事務局の柴藤さん,森さん,

そしてもづるカフェにご参加いただいた皆様,
 

本当にありがとうございました
 

これからも頑張ります


もづるグッズ

みなさん,これ...
 

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なんだかお分かりですか?
 

正解はこちら.
 
 

なんと,テヅルモヅルブックカバーです
 

先日のもづるカフェの参加者にいただきました

早速本川先生のご著書を包みます
 

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このフィット感
 

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これコピペじゃないような気がします.
 

ひょっとして,全て手書きでしょうか?
 

だとすると改めて感謝です.
 

作成者の人潟るけさんは,様々な深海生物グッズを作成されています.

これ,動物分類学会とかで売り出したら,相当売れるのでは?
 

 


棘皮動物研究集会③

 

勿論私も発表しました
 

「キヌガサモヅル(棘皮動物門:クモヒトデ綱)の分子系統地理」

岡西政典(京大・瀬戸臨海)・藤田敏彦(国立科博・動物)
 

無題

ちょっと画質がよろしくないのは,暗闇のせいではございません.

実はこれは,動画のキャプチャーなのです
 

今回の発表は,academistのご助成で進められたもので,

当初予想していたよりも,とても面白い結果が出つつあったので,その内容を発表しました.

さらに詳細に標本を検討できれば,論文にできそうです
 

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こうして,ポスター発表,口頭発表共に大盛況のうちに幕を閉じました.

締めの挨拶をしているのは,今回の世話人の一人の,三崎臨海実験所の大森紹仁先生です.

今回の研究集会を取り仕切っていただきました.本当にありがとうございました.
 
 
 

そして
 
 
 

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打ち上げの始まりです
 

大いに研究した後は,大いにのまなくてはなりません.

美味しい三崎のマグロ料理と地酒に舌鼓を打つのでした.
 

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大分お酒も進んだところで,みなさんとパシャリ.

私の左手が神奈川大学のウニの古生物の大御所,金沢先生と,

右手が今回のもう一人の世話人,三崎臨海の幸塚先生(ウミシダの専門家)です.
 

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とにかくみんな仲良く,お酒も研究も楽しむのが棘皮動物研究者です

来年もよろしくお願いいたします
 

今回お世話になった集会オーガナイザーの皆様,

発表に対しご意見をくださった先生方,

懇親会でお話してくださった皆様に,感謝を申し上げます.
 

そしてacademistでご支援いただいた皆様,

ありがとうございました


ウチノミナンカイヒトデ

 

「珍しいヒトデが入った」

という話を聞きつけ,水族館へ向かいました
 

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こちら!ウチノミナンカイヒトデAsterodiscides helonotusです

このナンカイヒトデ類(科)は,腕の先っちょの1対の上縁板が特に大きくなるのが特徴で,

和歌山県立自然史博物館で飼育されていたヤマトナンカイヒトデもこの特徴を持つのですが,
 

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この種の上縁板はずいぶん巨大です.

まるで蹄のよう...
 

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体表面を覆う顆粒も,色々な形があってかっこいいですね
 

因みにこの種は,偉大なヒトデ研究者であるFisherによって1913年に新種として発表されたという事なのですが,

原記載と思われる以下の文献にあたってみましたが,どうにも記録が見つかりません.
 

Fisher, W.K. (1913)

“Four new genera and fifty-eight new species of starfishes from the Philippine Islands,

Celebes, and the Moluccas”

Proceedings of the US National Museum, 43: 599-648.
 

うーん,なぜでしょうか.情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら,ご連絡くださいませ.
 

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因みに,白浜水族館には,今年になって飼育を始めた可愛いオカヤドカリや,
 

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我々がドレッジ調査で採集したスナダコ等が飼育されていました.

冬休みは解説ツアーもやります
 

是非ともお越しください

 


棘皮動物研究集会②

まだまだ続く棘皮動物研究集会.

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実験施設の中には,水槽がたくさんありました.

さすが海洋生物エボデボのメッカ。ちょっと暗いですが,

こちらはアカウニ水槽.
 

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こちらはハネジナマコ水槽.
 

しかし,実はハネジナマコの学名には混乱があるらしく,

ナマコ研究者の方の「これ,ハネジナマコじゃないよ」発言に,

しばらく現場が騒然としていました.
 

実際には,まあ,研究している実態が違うわけではないから大丈夫か,という話に落ち着いていました.
 

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ポスターセッションにはお菓子や飲み物がフリーで用意されていました
 

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古生物の発表や, 
 

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今話題のオニヒトデに関する発表や,
 

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なんと,三崎に生息するテヅルモヅルの発表まで

といいつつ,まあ私も共著者の一人です(笑)
 

三崎のイソバナ群落に付着するセノテヅルモヅルの幼体の発表です.

テヅルモヅルは発生等は未だに謎のままなのですが,

イソバナ群落におびただしい数が付いているということで,

その個体数や,成長と腕の分岐数の計測をした研究です.

時間をかけてモニタリングすれば,何かの発表になるかもしれません.
 

聴衆の中に,棘皮動物猛者が

何と,ワモンクモヒトデイヤリングです
 

私も様々な棘皮動物グッズに目を配ってきましたが,

クモヒトデをイヤリングにしているのは初めて見ました.天晴.
 

世界はまだまだ広いですね.


棘皮動物研究集会①

2014年12月6日に開催された,棘皮動物研究集会に行ってまいりました.

今年の開催地は,東大の三崎臨海実験所.

非公式な集会ながら,今回は,

約70名もの参加者が集まったそうです.
 

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口頭発表とポスター発表の合間に,実験所の施設見学がありました

こちらは,臨海実習を行っている,日本海洋生物学百周年記念館.
 

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こちらが実習室.実は三崎を訪問するのはこれが7年ぶり2度目.

臨海実習に携わる身としては,ずいぶんと見方も変わるものですね.

机が円形に配置されているのは,陽の光を十分に取り込むためだそうです.
 

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実習室の標本棚が,透明です

これは大変見やすい!とても参考になります.
 

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危険生物の告知は瀬戸でも行っていますが,

そういえば水産有用種についてはあまり触れていません.

少なくともここに上がっている種のほとんどは瀬戸でも採集できるので,

何らかの告知をしてもよいかもしれませんね.
 

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記念館からの眺め.窓外は油壷湾の入り口に臨み,

実験所の調査船「臨海丸」(奥の大きな船)が見えます.
 

なんと2000mのケーブルが巻かれているということで,

かなりの水深(浅くても700 mくらい?)まで調査が可能です.
 

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屋上に上って,油壷湾を眺める棘皮動物研究者方.
 

毎年若手だけでなく,大御所も多数参加されており,

若手と先生方の交流が活発なのが本集会の特徴でもあります.
 

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この場所には,通称「グリーンハウス」と呼ばれる木造の実験棟があったのですが,

東日本大震災の際に焼失してしまったそうです.
 

残念ですが,他に被害がなかったことは不幸中の幸いでしょうか.
 

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記念棟と研究棟までは,景色のいい小道でつながれています.

集会当日は天気に恵まれ,とても美しい景色まで堪能できました

 


もづるカフェ

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かねてより宣伝しておりました,「もづるカフェ」を開催しました

もともとはacademistの支援者の方へのお礼も兼ねた会でしたが,

ふたを開けてみると,あれよあれよと,会議室がほぼ満員御礼となりました
 

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もづるパーカーでキメてます
 

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もづる好き,この指とまれ
 

海洋生物好きからプログラマーまで,

たくさんの方にもづるや,分類学の話ができて,とても楽しい二時間でした.
 

こちらも,追って詳細をレポートいたします.
 

ご参加くださった皆様,本当にありがとうございました


チビモヅル入荷

とある金曜の昼下がり.

水族館から一本の電話が.
 
 

「ちびっこいモヅルが入荷したよー.」
 
 

急いで駆け付けました
 

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それがこちら.
 

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盤径が指先ほどしかない可愛いモヅルちゃんですね.

おそらくアカテヅルモヅルAstroglymma sculptaの幼体かと思います.
 

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大人は腕を広げると数十センチに達する大型種で,

親御さんかと思われる個体も採れたそうです.
 

奥にいる赤めのやつがアカテヅルモヅル.

手前のはサメハダテヅルモヅルかと思われます.
 

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研究用にくださるということでしたので,さっそく水槽にいれてみました.
 

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ちょっと腕がボロボロになっているので気がかりです.
 

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さっき見てみたら,腕を広げていました.
 

何とか復活してほしいものです.


伊良部島調査⑬

 まだまだお見せしたい写真はありますが,

そろそろ水中写真はこれでおしまいにいたしましょう.
 

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藻場に横たわるハネジナマコ.
 

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これはスギミドリイシとかいう種類のサンゴでしょうか?
 

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大きなテーブルサンゴ.
 

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塊状のサンゴ.
 

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様々な形のサンゴが目を楽しませてくれました.
 

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こんな風にカンザシゴカイの巣になっていたり,
 

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魚の隠れ家になっていたりと,生物多様性の基礎を支える重要なサンゴです.
 

最近,人工的な移入による珊瑚の保全活動が見られますが,

サンゴは無性生殖と有性生殖を行うため,

例えばサンゴの採集地点をうまくばらつかせないと,

移入元が全て無性生殖によるクローンだけということも考えられます.
 

その場合は有性生殖で次の世代が残せないため,

最近は,網羅的な遺伝子解析で,

移入元のサンゴの由来を調べる技術が発達しつつあるようです.
 

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いつまでもこんな美しい海藻とサンゴのコラボレーションがみられる海であるとよいですね.
 

続く.

 


伊良部島調査⑫

 

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まだまだ続けましょう,伊良部島の生きもの写真シリーズ
 

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前回とはまあ違ったウツボに遭遇.

こちらは太くてなかなか攻撃力が高そう.

グルグルドリル噛みつきにやられないよう退散
 

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岩の隙間に見えたサンゴ.

始は八放かと思ったのですが,どうもヒドロサンゴのようです.
 

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もう一つおまけにヒドロ虫.

頑張って触手がわかるような写真を撮りました
 

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ガンガゼに見えてちょっと違う.この針の細さは,タワシウニでしょうか.
 

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サンゴを覆っていたテルピオスとは違った,被覆性のカイメン.

ムラサキカイメンのようですが,正確に分類するためには骨片を見なくてはなりません.
 

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こんな風に生き物の姿がよく見られたのは,ひとえにこの快晴のおかげですね.
 

ここ数年,出張や調査の際の天気運に恵まれなかったのですが,

最近はなんだか恵まれています.
 

採集運的な厄年を抜けたのかもしれません


伊良部島調査⑪―外伝

 

 

先日のブログでお伝えした,このサンゴですが,
 

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記事を見てくださった伊勢先生から,驚きのコメントがよせられました.
 

なんと,この右半分の黒い部分は,サンゴが死んでいるのではなく.

テルピオス Terpios hoshinotaという,海綿動物なのだそうです
 

黒い被覆状の海綿で,サンゴを覆って殺し,時に大発生するのだとか.
 

黒色は,大量に共生しているシアノバクテリアの色で,

左半分もこの後,徐々に浸食されて死んでしまうやも,という事でした・
 

写真だけでここまでわかってしまうとは,やはり専門家はすごいですね.
 

自分の不勉強さを自覚すると共に,

生物の不思議を改めて感じるのでした.


伊良部島調査⑪

せっかくの機会なので,

今回はたくさん生物写真を紹介しましょう.
 

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普段何気なく見ているつもりのサンゴですが,
 

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よーく拡大してみると,一つ一つのセクションから,

小さなイソギンチャク状の触手(ポリプ)が伸びており,

群体性の刺胞動物であることがよくわかります.
 

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こちらは,白黒パンダ模様のサンゴではありません.

右側は死んでしまっているようです.
 

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生きている部分のポリプは, こんな風に非常に元気であります
 

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こちらは,遠目に見てもポリプがもさもさしているのがわかります.
 

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近づいてみても,一つ一つの触手が長いのがわかりますね.
 

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一見,ほとんど石のように見えるサンゴも,よーく近づくと...
 

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表面に小さなポリプが触手を伸ばしています

こんな風に,一口にサンゴと言っても,いろいろな形があるんですね.

なかなかサンゴのポリプをうまく写した写真を持っていなかったので,

今回はこの写真が取れだけでも満足です
 

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しかしわれらが棘皮動物も負けてはいません.

海草の間に突如として出現したマンジュウヒトデ.
 

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思わず多孔体を接写してしまいました.
 

よーく見ると,なんだか網目模様が見えます.いったい,これは何なのか.

標本だけからではわからないことに遭遇できるのも,フィールドワークの魅力に一つですね
 

ちなみに多孔体は,棘皮動物の肝とも言える器官で,

読んで字のごとく穴凹だらけのこの骨片の板を通して,

体の中の水が通る管(水管系)へ海水が入っていきます.

これがなければ,棘皮動物は管足を動かせないので,

食事はおろか,移動や呼吸にも支障をきたします.

逆に言えば,水管系はそれだけ棘皮動物にとって重要な器官ということです.
 

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しかし,でかい!これだけ巨大な体になれるのも,

実は水管系のおかげなのです
 

と,結局は棘皮動物のお話になってしまっているのでした.
 

続く.