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Monthly Archives: 1月 2015

至福の時

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年末年始にかけて採集してきたクモヒトデの同定(種名を調べること)を行っています.

顕微鏡でのぞきながら,文献と比較.

一見同じように見えるクモヒトデですが,

顕微鏡で観察すると,その形の多様性に驚きます.
 

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同定した標本に耐水紙のラベルを入れて,

瓶に整理.
 

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仮番号を付けて,整理をしていきます.

最終的には,博物館相当施設に収めて,研究に活かします.
 

分子実験も嫌いではないですが,

私の場合,いろいろな疑問が湧いくるのは検鏡している時です.
 

なかなか時間がとれないこともありますが,

こうしてクモヒトデ研究に携わる時間は幸せで落ち着きます.

そんな小さな幸せを噛みしめる冬の夜更けでした.


アンケート

 

 

先日の豊中高校の実習で,ウニウニ君を提供してくださった渡辺さんが,

学生にとったアンケートの結果を集計してくださいました.

やはりウニウニ君はInnovativeな機器だったようで,

口頭や実物の観察ではどうしてもわかりにくい水管系の配置などを

感覚的にとらえることがきた,という意見が多々見られました.
 

水管系は透明な上に小さいためなかなか観察が難しいのですが,

今後もこのような機器を使わせていただけると,教育効果は一層高まると思います.
 

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わざわざ岐阜からお越しいただいた渡辺さんに,改めて感謝です.

また,個人的には「分類学」や「てづるもづる」についての感想がもらえたこともうれしかったです.
 

このような基礎的な体験を通して,

生物学を志す学生が一人でも増えてくれるといいなあと思った今日この頃でした.


東大総合博物館

深海のサンプルは採れているのですが,

作業中の写真を撮り忘れていました.

そのうち,取り出したクモヒトデなどの写真をお見せしましょう.
 

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ということで,三崎の次に東大総合博物館にお邪魔しました.

佐々木先生(貝類研究をされています)のもとにお邪魔して,

色々と観察をさせてもらいました
 

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標本庫も見せていただきました

所狭しと標本が並べられています.

原則公開不可なので...雰囲気だけでもどうぞ
 

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こちらは,重井先生のウニコレクション

壁一面ウニ標本!圧巻です
 

中には明治―大正時代の標本もみられました.

再び日の目を見る時を待っているのでしょうね.


JAMBIO合同沿岸調査④

 

実験所の船着場を出港してしばらくすると,

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水鳥がついてきました.
 

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一定間隔を保ってついてきます.

君のエサになるようなものは残念ながら採れないんだよ~.
 

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とかなんとか言ってる間に,ポイントに到着.

水深700 mの地点ですが,1時間とかかりませんでした.

さすが相模湾ですねえ.
 

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手際よく技術職員さんがドレッジを投入.
 
 
 
 

一時間後.
 
 
 
 

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そろそろ上がってきます

サンプル受けの箱をひいて待機します.
 

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おお!ちゃんと曳けてました
 

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技術職員さんがサンプルを箱の中へ.

泥や岩などは入っていますが,果たして生物は採れているのか?


JAMBIO合同沿岸調査③

JAMBIO合同調査レポートの続きです.
 

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調査二日目は晴天で臨海丸による出港が可能

スクランブルです
 

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船に向かう一向.人数が多いだけに壮観です.

プロジェクト感が漂って参りました
 

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臨海丸の設備紹介.

ウインチには,2000 mのワイヤーが巻かれています

これで700 mの曳網が可能
 

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勿論Aフレームも搭載.

ヤンチナのものよりもやや背が高いので,

漁具が釣り下がっても甲板に付く心配ナシですね.
 

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こちらがドレッジちゃん.

いわゆる生物用ドレッジですね.

網を使っているので,生物が(比較的)傷まずに採れます.
 

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テンションメーター.

皆で見やすい位置にあるので,これを見ながらワイワイ楽しめます
 

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 いざ出港!果たして深海へのアクセスは可能なのか


てづるもづるについて~クモヒトデの体の仕組み③~

出張の様子のレポートはひとまず置きまして,

クモヒトデの体の仕組みについて書きます.

これまで盤の仕組みついて解説をしましたが,

次は腕について.
 

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こちらは,ミツイタクモヒトデの腕の反口(背)側です.
 

クモヒトデの腕は,竹のような節の繰り返し構造になっています.

この節を腕節といい,一つの腕節は,

いくつかの骨片の組み合わせより成ります.
 

背側から観察できるのは主に,
 

①背腕板という板状骨片,

②その側面にある側腕板という板状骨片,

③側腕板に関節している腕針という針状骨片,
 

の三種類です.
 

特に腕針は棒状,フック状,鋸状など形が多様で,

その数も一腕節において一本から十数本と変化大きいため,

極めて重要な分類形質となっています.


JAMBIO合同沿岸調査②

合同沿岸調査一日目.
 

三崎の臨海実験所の研究船「臨海丸」で深場を曳く予定でしたが,

あいにく荒天のため湾内十数メートルのドレッジにとどまりました.
 

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近場でのドレッジで曳網時間が極めて短いため,

どんどんサンプルが上がります.

処理に追われる調査班.
 

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まずは上澄みをふるいにかけ,

表層の小さい生き物を濾しとります.
 

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残った砂や泥を篩にかけ,今度は目に見えるサイズの大物をセレクションします.
 

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すべての網を抜けた水にも,超微小な生物(メイオベントス)が残っています.

これらも余さず,メイオベントス班によって処理されます.
 

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一日目からなかなかハードな展開となりました.

果たして翌日は深場にたどり着けるのか?
 

続く.


チーム棘皮動物

 

三崎調査を終えた翌日,

やり残しの仕事を片付けに,急遽科博で調査を行いました.
 

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なんと偶然,その日はアメリカのスミソニアン博物館から,

Christopher Mah博士(ヒトデ系統分類学者)が科博に調査に到着した日でした.
 

せっかくなので,つくばセンター駅で一緒に食事をして,

藤田研の院生と一緒にパシャリ.
 

左から,M2の新井君(ヒトデ),研究生のAbe Woo君 (ナマコ),私(クモヒトデ),Chirs (ヒトデ)です.

撮影してくれたD3の倉島君,ありがとうございました!
 

実はChirsとは,ちょうど四年前のスミソニアン博物館訪問以来の再開でした.
 

最近の棘皮動物学の動向から,生き物好きにはたまらない,彼のブログの話まで,

楽しいひと時を過ごしました.
 

さあ,あとは東大での調査を残すのみです


ガマの油売り

 

 

三崎に着いた初日は,歓迎パーティでした.

全国津々浦々より,総勢18名の研究関係者が集う大規模な調査です.

宴もたけなわの頃...
 

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東大の鬼才,泉君による落語が始まりました

今回の題目は「蝦蟇の油」.

現所属(筑波)に因んだ憎いチョイスです.
 

素面の流れるような商人の口上と,酔いどれのへべれけ口調を,

見事に使い分けていました.
 

ちなみに,彼の台座になっているのは

重ねられたソファーの座部.
 

足元の台座は重ねられたソファーの座部.

不安定さを感じさせない見応えのあるアクションで,

聴衆を大いに沸かせていました.
 

こうして三崎の初夜は過ぎていきましたとさ.


JAMBIO合同沿岸調査

 

 

1/19日は残念ながら浅場での調査しかできませんでしたが,

1/20は天気が劇的に回復し,深場(200-700m)でドレッジができました
 

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三崎臨海実験所の船着き場.

非常に良いコンディションです
 

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採れた獲物をみんなでソーティング.

調査の様子はまた後日レポートいたします.
 

その後,いったん科博で日帰り調査をして,

今日は東大に行って,長かった関東調査もようやくお終いです.
 

あと少し,頑張ります


JAMBIO

先日から三崎に調査に来ております.
 

JAMBIOの合同沿岸調査で,船舶によるドレッジ調査に参加させてもらっています.
 

JAMBUIOとは,東大の三崎臨海実験所と筑波大学の下田臨海センターが共同で

海洋生物学の推進拠点を形成する事を目的とした機構で,

これまでにも様々な事業,共同調査,シンポジウムを開催しています.
 

ウェブサイトはコチラ↓(画像をクリック!)

JAMBIO

母体になっている「共同利用・共同研究拠点事業」は,

私が所属している共同教育拠点事業と同じ,文科省の認定を受けており,

我々としても大変興味深い事業です.
 

共同研究の応募も行われております.
 


三崎調査

 

 

科博での調査が終わり,三崎の臨海実験所に来ています.
 

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三崎といえばこちら!マグロでしょう

今日は少し贅沢にマグロステーキ丼を食べました.

船舶による深海生物調査を予定していたのですが,

今日は生憎の天気で湾内の浅場の調査にとどまりました.
 

明日の天気は回復気味ということなので,

ドレッジが曳けるように期待です


クモヒトデの骨片観察法

クモヒトデを分類する際には,体の中の微小骨片の観察が必要になる時があります.

今日はその観察法をレクチャーいたしましょう.
 

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①まず時計皿に,観察したい部位を入れます.
 

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②ハイターを,
 

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③注入.
 

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③軟組織が泡を立てて溶け始めます.
 

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しばらく待つと,骨片が出てきました
 

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④ピペットでハイターを取り除きます.

骨片を吸い込んでしまわないように注意.

ハイターは乾燥すると結晶化するため,観察の邪魔になります.
 

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そこで,⑤水ですすいでやります.

極力ハイターを取り除き,洗瓶で純粋を注入.
 

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⑥ピペットで水を吸い出す操作を2-3回繰り返します.
 

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⑦水分をなるべく取り除いた後は,乾燥するまで待ちます.

最後に,水の代わりにエタノールですすぐと乾燥が早くなります.
 

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ピンセットで,骨片を両面テープに張り付けて完成

あとはSEMで観察するのみです

 


VHX

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科博での作業を進めています

こちらはデジタルマイクロスコープ,VHX2000.
 

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このように試料台にサンプルを入れ,

高精細な画像を様々な角度から撮影できたり,

リアルタイム深度合成ができます
 

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のみならず,ボタン操作で簡単にSEM式撮影にも切り替えられる

私は決してKEYENCEの回し者ではないのですが,本当に便利です.

精錬された操作性を誇っており,ストレスなく撮影ができます.
 

ガンガン作業が進みます


15th International Echinoderm Conference

第15回国際棘皮動物会議が,5月にメキシコのカンクンで開催されます.

ウェブサイトはコチラ↓

http://www.icmyl.unam.mx/15iec/index.html
 

約3年周期で,大陸持ち回りで開催されている本会議.

棘皮動物の,自然史研究物が集う数少ないチャンスです.
 

前々回(2009:タスマニア)は私の国際会議初陣でした.
 

前回(2012:ベルギー)は,経済・スケジュール的問題で不参加でしたので

今回は何としても参加したいところではあるのですが,

いかんせんメキシコは遠い
 

パッと調べてみても,航空券約16万円,所要時間片道21時間
 

5月というのがまた微妙なところ.

なれど容赦なく迫りくる参加登録締め切り.
 

まずは発表ネタを練り上げるために,科博での作業を頑張ります.

それから考えよう
 

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2009年のタスマニア会議での様子.

会議最終日,フェアウェルパーティーのこの日,

謎の発熱に襲われ一日寝込んだのは今は良き思い出です.


採集装備

今日は調査用の装備についてです
 

乗船調査中,レンチやニッパーなどが必要に

しかし,求める獲物は甲板の端っこ...

そんな時は
 

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このようなケースに収納して携行すればよいのです
 

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ということで,コーナンでケースを買ってきまして.
 

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別買いしたゴムひもを通します.
 

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さらに別買いしたプラスチックの差し込み具を,
 

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ゴムひもの先端に接続し,
 

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百均で買ったワイヤーで,
 

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折り返し部分を,
 

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固定
 

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ニッパーで余ったワイヤーをカット.
 

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じゃーん
 

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最後に,ワイヤーで固定した部分と,ゴムの折り返し部分を,

ビニールテープで固定して完成
 

今度の調査でさっそく使う予定です
 


つくば

 

出張で国立科学博物館(筑波)に来ております.
 

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日本には一体何種のキヌガサモヅルがいるのか?

その謎を解き明かすべく,片っ端から標本を観察するのです.

(もちろん拠点の仕事も兼ねています)
 

キヌガサモヅルの標本の乾かし中.

先日の記事の写真もそうですが,

乾燥させた方がクモヒトデの骨片の形ははっきり見えるのです.

 
 

とりあえず乾燥の仕込み(?)をして,

明日からは本格的な観察の開始です.

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一仕事終えた後の一杯.

これからしばらく,標本漬けの日々です


てづるもづるについて~クモヒトデの体の仕組み②~

クモヒトデの体の仕組みがどうしても知りたいあなたへ,

クモヒトデの形態解説第二弾です
 

前回と同じミツイタクモヒトデをみながらその体の仕組みを理解しましょう.

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こちらは体の口側.盤の真ん中には口があります.
 

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鱗しかなかった反口側と違い,口側はやや複雑.
 

 五つの腕の延長線上の交差点に口があり,

様々な形の骨片が組み合わ去っているためです.
 

まず,口の入口部分は五つの顎に囲まれており,

その先端に生える歯で口を通る餌を咀嚼します.
 

この画像では全貌が見えませんが,歯は歯板という板状の骨片に間接しており,

歯版は口板という骨片に支えられています.

口板の外側には側口板が配置し.

対になった側口板の間には口楯という板状の骨片があります.

多くの種ではこの口楯の一つが巨大化し,多孔体の役割を果たします.
 

というように,口の周りを構成する骨が複雑に配置しています.

また,顎のスリット部分の最も口側には,

口棘と呼ばれる,歯に似た骨片が並んでいます.
 

また,間輻部と呼ばれる盤の口側の腕と腕の間には,生殖裂孔があります.

この生殖裂孔の縁に生じる突起は生殖棘です.
 

後にも述べたいと思いますが,

口の中から腕の先端までは触手の列が伸びており,

多くの種はこの触手伝いで,食物を口に運んでいると思われます.
 

このような歯,口棘,歯板,口板,側口板,口楯,

生殖裂孔,生殖棘などの形,数,大きさなどが分類形質になるのですが,

これらは,比較的高次(属や科)の分類に

使われていると思います.

(はっきりと検討したわけではありません).
 

一目には似たような形のクモヒトデですが,

顕微鏡レベルでは様々な形の違いが見て取れます.


てづるもづるについて~クモヒトデの体の仕組み①~

突然ですがクモヒトデの体の仕組みを解説いたします.
 

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ミツイタクモヒトデOphionereis prorrectaの反口側.

以前,ちょろっとだけ触れましたが,多くのクモヒトデは,

体の真ん中の「盤」という部分と「腕」が,見た目で明瞭に分けられます.

(実質的なヒトデとの違いは,歩帯溝がないことです)
 

クモヒトデの体はいろんな形の骨片に覆われており,

その形状が分類に使われています.

今回は,盤の形状についてご紹介します.
 

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上記個体の反口側の盤の拡大画像.

じゃーん,こちらが,盤の反口(背)側です.

基本的に,クモヒトデの盤は,「盤鱗」と呼ばれる鱗に覆われています.

この鱗も様々な形があり,盤のど真ん中のものひときわ大きく「中背板」と呼ばれ,

その周りに配置している5つの比較的大きなものは「下址板」と呼ばれます.
 

これらは合わせて「第一次板」と呼ばれ,他の盤鱗と区別されます.
 

また,腕の付け根部分には,輻楯(ふくじゅん)と呼ばれる対の鱗があり,

この形や大きさは多くの種で重要な分類形質となっています.
 

勿論,鱗だけでなく棘や皮に覆われたり,第一次板のような鱗の区別がないもの,

輻楯が他の骨片などに覆われて見えないものがいたりと,種によって形質状態は様々ですが,

これらの特徴は昔も今も重要な形質として使われていることは間違いありません.


講義(豊中高校)

 年末の豊中高校の実習で講義を行いました

今回は,最終日の夜に瀬戸臨海のポスドク三人によるお話三連続でした.
 

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千徳博士の講義「サンゴの生物学」

とてもきれいなサンゴの写真を巧みに活用したスライドで,

高校生達をサンゴワールドに引き込んでおりました.

最近のダイビング熱でサンゴと他の生物の織りなす共生関係に心惹かれ気味な私も,興味津々で聞き入りました.
 

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私の講義「深海生物テヅルモヅルの進化を探る」
 

深海ってどんなところ?

てづるもづるとは?

分類学って?
 

私も負けじと高校生を深海生物ワールドへ引きずり込もうと試みました(笑)

果たしてみなさんがどのような感想を持ってくださったのかはおいておいて,

講義の準備をするたびに毎回自らの無知を認識します.

今回も改めて深海について勉強するいい機会となりました.

まだまだ精進ですね.
 

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最後は河村さんの講義「クラゲの生活史」

それにしても,刺胞動物の研究者は,みな写真を撮るのが上手な気がします.

やはり研究対象への愛ですね.クラゲへの愛が伝わってくる講義でした.

河村さんのお話にもありましたが,

研究中は知的に興奮する瞬間に度々遭遇するのですが,

中でも「思いもよらなかった結果」に出会えた瞬間は格別です.
 

自分でも予期しなかった結果に出会うために,

我々は研究を続けているのかもしれません.
 

などということを,駆け出しの研究者三人が熱く語る夜となりました.


落し物

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お正月明け,実験所の駐車場.

車の横に何かが落ちていますね.

近寄ってみると...
 

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魚?

それも鱧???

うーん,まさかのファフロツキーズでしょうか?

新年早々,怪現象での幕開けとなりました.

 

 

 


Asteroporapa (Astromoana) koyoae Okanishi & Fujita, 2011(コウヨウモアナモヅル)

Asteropoapa (Asteromoana) sp

Family: Goegonocephalidae テヅルモヅル科

Subfamily: Gorgonocephalinae テヅルモヅル亜科

Genus: Asteroporpa シゲトウモヅル属

Subgenus: Asteroporpa (Astromoana) モアナモヅル亜属

Specific name: koyoae コウヨウモアナモヅル
 

トゲモアナモヅルと同時に記載したモヅルです.

当然のことながら,発表当時は日本初記録亜属のモヅルでした.



2009年に小笠原での科博の深海調査に参加させてもらった際に,

お世話になった水産実験センターの方が,

「例えば,深海籠調査ではこんなのが採れますよ~.」

と言いながら気軽に見せてくださったものの中に混じっていました.



①盤の反口側の縁部に,フックがついた板を持つ,

②盤の反口側は一様な大きさの円錐型皮下骨片に覆われる

③それらの皮下骨片の先端には,皮下骨片の高さよりも長い棘が生じる

 

といった特徴で他種と区別できます.

せっかくなので,水産実験所の研究船「興洋」に献名しました.

本種はこの個体以降採集されていないため大層珍しいのだと思われます.

採集における人脈の大切さを教えてくれた種です.

 

撮影:岡西政典


Asteroschema salix Lyman, 1879

Asteroschema salixのコピー

Family: Asteroschematidae タコクモヒトデ科

Genus: Asteroshema ヒトデモドキ属

Specific name: salix (和名なし) 
 

日本では,南硫黄島からしか発見されていない珍しい種です.

他にはオーストラリア,フィリピン,ニュージーランドの329-2999 mに分布しています.
 

①体全体が小さな顆粒状の皮下骨片に覆われている

②それらの皮下骨片は,大きさ約0.07 mm-0.08 mmと小さい

③輻楯は縦長で,長さは太さの約2.5-3倍

④腕針の長さは各腕節長の約2倍
 

といった特徴で他種と区別できます.

こいつが所属するヒトデモドキ属は外部形態が非常に少ないため,

体表の微小な骨片の大きさなどで分類していますが,

詳しい種分類を行うためには,DNA解析なども行ったほうが良いと思われます.


Asteroporapa (Astromoana) muricatopatella Okanishi & Fujita, 2011(トゲモアナモヅル)

 

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Family: Goegonocephalidae テヅルモヅル科

Subfamily: Gorgonocephalinae テヅルモヅル亜科

Genus: Asteroporpa シゲトウモヅル属

Subgenus: Asteroporpa (Astromoana) モアナモヅル亜属

Specific name: muricatopatella トゲモアナモヅル
 

こちらはなかなかの珍モヅルです.

シゲトウモヅル属は日本の太平洋側から古くより記録が知られるのですが,

1980年にニュージーランド産の種に対して設立されたモアナモヅル亜属は,

日本からは知られていませんでした.
 

同属のシゲトウモヅルAsteroporpa (Asteroporpoahadracantha は古くより日本の太平洋側より記録があります.

科博にもたくさんのシゲトウモヅルの標本があり,

それらを調査していたところ,6個体ほど入った瓶の中に,

1個体だけ顕微鏡で見ると明らかに形態が異なる種を見つけました.
 

それがこのトゲモアナモヅルです.
 

①盤の反口側の縁部に,フックがついた板を持つ,

②盤の反口側は一様な大きさの円錐型皮下骨片に覆われる

③それらの皮下骨片の先端には,皮下骨片の長さよりも短い棘が生じる
 

クモヒトデでは,パッと見て,すべて同種だろうと思うような数が採れることがよくあるのですが,

実際に検鏡して見るとこのように別種が混じっていることがよくあります.
 

 

どのような分類群でもそうかもしれませんが,

必ず検鏡しないと「同定した」と言えない,ということを教えてくれた種です.

撮影:岡西政典


実家

 

 

に帰っております.

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年末は何かと最後の最後まで仕事に追われてしまったので,ほっと一息.

一つ大きな仕事が終わりました.
 

今年もいろいろとやることはあるのですが,まずは実家の雑煮で英気を養うこととします.

 


謹賀新年

 

あけましておめでとうございます
 

Flash

今年は,年賀はがきにクモヒトデを入れてみました.

腕が硬いやつは,彗星形にしようとしてもどうしても曲がらず,

このように走っているように見えたりします.
 

今年もクモヒトデの謎を解明すべく頑張ります