Skip to content

標本整理

クモヒトデの骨片観察法

クモヒトデを分類する際には,体の中の微小骨片の観察が必要になる時があります.

今日はその観察法をレクチャーいたしましょう.
 

IMG_4708

①まず時計皿に,観察したい部位を入れます.
 

IMG_4714

②ハイターを,
 

IMG_4715

③注入.
 

IMG_4717

③軟組織が泡を立てて溶け始めます.
 

IMG_4724

しばらく待つと,骨片が出てきました
 

IMG_4727

④ピペットでハイターを取り除きます.

骨片を吸い込んでしまわないように注意.

ハイターは乾燥すると結晶化するため,観察の邪魔になります.
 

IMG_4728

そこで,⑤水ですすいでやります.

極力ハイターを取り除き,洗瓶で純粋を注入.
 

IMG_4730

⑥ピペットで水を吸い出す操作を2-3回繰り返します.
 

IMG_4731

⑦水分をなるべく取り除いた後は,乾燥するまで待ちます.

最後に,水の代わりにエタノールですすぐと乾燥が早くなります.
 

IMG_4735

ピンセットで,骨片を両面テープに張り付けて完成

あとはSEMで観察するのみです

 


標本整理③

IMG_4435

最近調査が多いので,サンプルがたまってきました.

少しずつ整理をしていかなくてはなりません.
 

IMG_4442

 現場でパッキングした標本はこのように,

ビニールパックに耐水紙とともに入れ,
 

IMG_4437

ポリ瓶にぎっしり詰めてあります.
 

IMG_4443

中身を取り出しまして,
 

IMG_4446

瓶に移します.
 

IMG_4448

なるべく中の保存液(基本はエタノール)が揮発しないよう,

我々はこの二重蓋の瓶を使っています.
 

IMG_4450

そしてエタノールを注ぐ
 

IMG_4451

きっちり肩まで入れましょう.標本が小さいからと言ってけちると,

後で揮発量が分からなくなります.
 

IMG_4452

蓋を閉めて完成

この状態で置いておけば,少なくとも何十年という単位で保つはずです.
 

IMG_4454

ラベルだけでなく,蓋にも識別番号などをつけておくとより効果的です.

例えば万が一中のラベルが無くなっていても,蓋の識別番号から情報を追うことができます.
 

また,最近はレーザープリンタで耐水紙に打ち出したラベルを使うことあありますが,

場合によっては文字がはがれてしまう事があります.
 

そのため,ラベルには必ず手書きで標本番号を書いておくとよいでしょう.

オーストラリアの博物館では,一度レーザープリンタから打ち出したラベルを,

オーブンで少し焼いて,文字を定着させるという技を使っていました.
 

標本の恒久的な保管のために,世界中で様々な工夫が凝らされています.
 

IMG_4457

また,あまりに小さいものは,さらに小さなバイアルなどに入れないと,

瓶の中で探すのに苦労します.
 

しかしそのようなバイアルは小さすぎて紛失しやすいため,

このように瓶に入れておくことで紛失を防ぐ共に,

同じ大きさで瓶の規格が統一され,整理がしやすくなります.
 


2014年和歌山大学実習⑦

四双島でウミシダが採れたので!

ウミシダの標本作製についてお話しましょう!

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

まず,クモヒトデと同様,まずは容器に入れて写真撮影です.

しかし,麻酔はご法度です.

実はウミシダでは塩化マグネシウム溶液による麻酔ができません.

無理に麻酔液に漬けると,苦しんで腕がバラバラになってしまいます.

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

撮影が終わったら,クモヒトデの時と同じように,別の容器にエタノールを入れます.

写真の様子は灯油の配注ではありません.

一斗缶にエタノールが入っていて,灯油ポンプで取り出しているのです.

私の知る限り,大体の科学者が灯油ポンプでエタノールを扱っています.

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

そしておもむろにウミシダを隣におきまして...

プレゼンテーション1

えい.

とひっくり返してエタノールに漬けます.

この時,しばらく上から軽く抑えてやるのがポイントです.

腕が平面上に固定され,あとで観察のしやすい良い標本になります.

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

そっ…と手をのけてやると

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

ウミシダ標本の完成です!

あとはクモヒトデと同様,ビニールパックに入れるなりして研究室に持ち帰り,

瓶などに入れ替えます.

ちなみに,オレンジ色のモヤモヤはエタノールに体色の構成要素が溶け出したものです.

固定後は色が変わってしまうので,その前に写真を撮っておく必要があります.

続く


2014年和歌山大学実習③

畠島でクモヒトデが採れたので




突然ですがクモヒトデの標本の作り方を紹介します.






 OLYMPUS DIGITAL CAMERA

まず,これが今回採れたクモヒトデ.

岩の下にいました.

バットの上にあけましたが,これだと逃げようとして腕をからませあったりして,

何個体いるかもよくわからず,とても標本にするどころではありません.

そこで,麻酔液(塩化マグネシウム水溶液(MgCl2))を使います。

作り方は簡単で,塩化マグネシウム六水和物を73.5g/1Lの分量で真水に溶かすだけ。

注意点としては,潮解性のある試薬なので,

素早く計量しないとどんどん水を吸って秤がべちゃべちゃになっちゃいます.

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

麻酔液に浸した状態がコチラ。

種類によりますが,2,3分で効きます.

完全に脱力し,形もこちらの意のままです.

この状態だと腕の自切もありません.

スペースを稼ぐため,このように「彗星型」にするのが私の出身の藤田研究室のスタイルです.

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

そしてこのスキに写真を撮ります。

最も重要なのは,体の真ん中の「盤」です.激写しまくるのです。

コチラは反口側. 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

コチラは口側.真ん中にあるのが口です.

写真は,もちろん標本にした後でも撮影できるのですが,

エタノールなどにつけると色が抜けてしまう場合が多いので,

麻酔している間にとるのがベストです.

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

そして,別のトレイに固定液(最近は主にエタノールです)を満たしておき,

麻酔したクモヒトデをそっと移します.

後はこれをビニールパックにラベルとともに入れておき,後日瓶に移して標本完成です。

たまには真面目な研究話でした.

続く.

 


標本整理②

標本整理のお話です。

海産動物の標本は、①乾燥標本と②液浸標本に大別されます.

読んだまま、①は乾燥させた標本で、②は液に漬けた標本です。

生物の種類によって適当な標本状態は違いますが、海産標本の場合は、液浸にしておく事が多いです。

液浸に使われる主な液は、ズバリ、ホルマリンとエタノールです。

まずエタノール標本についてご説明を。

【エタノール】

・脱水によって加水分解酵素の働きを止めることで、

固定(生物を生体に近い状態に保つこと)する。

そのため、柔組織は縮んでしまうことがある。

・そんなに臭くないが、余り多く揮発気体を吸い込むと酔っ払う??

・普通は70%以上の濃度で調整する。
 

とまあ,いろいろな特徴があるのですが、

なんといってもエタノールの特徴は、DNAを保存できるところです。

最近はDNA解析のために、エタノールで標本を作る場合が多くなってきました。

しかし、クラゲなどのように水分が多く脱水によって形が変わるため、

エタノール標本には向いていない生き物もいます。

また、エタノールは脱色作用もあるようです。
 

 IMG_1120
例えば、こんなキレイなメナシクモヒトデ(Ophiopsammus anchista)も
 
IMG_8266 (1)
このように真っ白に笑
エタノール標本を作るときは、事前の写真撮影が必須です!
次はホルマリンについてお話します。

標本整理①

瀬戸臨海実験所の実習室には、
IMG_7089
様々な標本が保管されているのですが、
IMG_7091
こんな状態で保存液が浸りきっていなかったり
IMG_7095
液が少くなってしまったりしています
IMG_7096
このような標本たちを救うために!
IMG_7100

研究員が立ち上がりました!

IMG_7102
標本整理の様子を、随時アップしていきます。
お楽しみに!