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【正誤表】生物を分けると世界が分かる

2022年7月20日に講談社より発売された、

「生物を分けると世界が分かる 分類すると見えてくる、生物進化と地球の変遷」

の正誤表です。

 

訂正箇所
43ページ、12-14行 メバチマグロ(Thunnus obesus)、キハダマグロ(Thunnus albacares)、ビンナガマグロ(Thunnus alalunga)… メバチ(Thunnus obesus)、キハダ(Thunnus albacares)、ビンナガ(Thunnus alalunga)…
48ページ、10-12行 西ヨーロッパ ヨーロッパ
77ページ、後ろから3行 リンネは、門、綱、属、種という「階級名」を定めた。 リンネは、綱、目、属、種という「階級名」を定めた。
82ページ、12行 そしてその後には命名者が続く 少なくとも動物分類学では、その後に命名者が続く習慣がある
83ページ、2行 他に、この著者名(=命名者名)がこのパンダの例のように丸括弧”()”にくるまれていることは、原典では別の属に所属していたということを意味している。 他に、動物分類学ではこの著者名(=命名者名)がこのパンダの例のように丸括弧”()”にくるまれていることで、原典では別の属に所属していたということを意味している。
123ページ、6-7行 藻類・菌類・植物では、少なくとも記載の部分はラテン語で書かなくてはならないという決まりがある。初めてこれを知った時には驚いたものだが、これを藻類研究者に聞くと、アマチュアによる新種記載の乱立を防ぐという意味もあるらしい。たしかにラテン語は動詞、形容詞、副詞などの「態」がとても多く、難言語であるため、一朝一夕で習得できるものではない。 かつて(1935-2011年)藻類・菌類・植物では、少なくとも記載やその種の特徴を表す判別文の部分はラテン語で書かなくてはならないという決まりがあった。現在ではこの縛りはなく、英語もしくはラテン語での記載が認められているが、初めてこれを知った時には驚いたものだった。これを藻類研究者に聞くと、アマチュアによる新種記載の乱立を防ぐという意味もあるらしい。たしかにラテン語は名詞、動詞、形容詞などが各変化し、その語尾も変化する難言語であるため、一朝一夕で習得できるものではない。
160ページ、6行 COVID-19、いわゆる… COVID-19を引き起こしたSARS-CoV-2、いわゆる…
202ページ、11行 2分の1の確率でO型の遺伝子も保持する O型の遺伝子も保持する
214ページ、4、7行 COVID-19 新型コロナウイルス、もしくはSARS-CoV-19

 

他にも間違いがありましたら,是非ご連絡ください.


分類学の本を書きました

また本を書きました。

生物を分けると世界が分かる 分類すると見えてくる、生物進化と地球の変遷

というタイトルの本です(ブルーバックス B-2208)。

すべての生物学の土台としての分類学を、その歴史から実践、

さらに未来への応用も踏まえ、一般に紹介することを試みました。

 

【書誌データ】
初版刊行日2022/7/21
判型新書判
ページ数256ページ
新書定価本体1100円

Kindle版 990円(税込)

ISBN-10: ‎ 4065288185
ISBN-13: ‎ 978-4065288184

正誤表はこちらです。

 

分類学という世界で、一緒に生物という地球パズルのピースを探してみませんか?


広島修道大学に着任しました

本日付で、広島修道大学人間環境学部のテニュアトラック助教に着任いたしました。

3/1-17まで乗船調査に参加していたため、その後の怒涛の引っ越し作業で忙殺されていましたが、なんとか広島に来ることができました。

今後はこの伝統ある私学の教育・研究に邁進していきたいと思います。


動物分類学の本を書きました

本を書きました。

新種の発見 見つけ、名づけ、系統づける動物分類学

というタイトルの本です(中公新書2589)。

新種の発見という作業を中心に、

動物分類学を一般にもわかりやすく紹介することを試みました。

 

【書誌データ】
初版刊行日2020/4/21
判型新書判
ページ数264ページ
定価本体860円(税別)
ISBNコードISBN978-4-12-102589-0

正誤表はこちらです。

動物分類学という言葉に興味を持たれましたら、

是非ご覧になってみてください。


【正誤表】新種の発見ー見つけ、名づけ、系統づける動物分類学ー

2020年4月21日に中公新書より発売された、

「新種の発見ー見つけ、名づけ、系統づける動物分類学ー」

の正誤表です。なお、以下の表の点は、電子版(2020/7/10配信)では修正されています。

 

訂正箇所

24ページコラム、6行 「命名されることになっている。」 「命名されることが多い。」
37ページ、 図2-2 「珍無腸動物門」に●が加わってない 「珍無腸動物門」に●を加える
37ページ、図2-2 「直泳動物門」「鰓曳動物門」「胴甲動物門」「動吻動物門」に●が付してある 「直泳動物門」「鰓曳動物門」「胴甲動物門」「動吻動物門」の●をとる
37ページ、図2-2 「線形動物(Nematoda)」 「糸形動物(Nematoida)」
37ページ、図2-2 「担顎動物*」 「担顎動物」
47ページ、3行 「…こう呼ばれている。」 「…こう呼ばれている。ただし、冠輪動物はらせん卵割動物から担顎動物を除いたものとする系統学的な結果も知られており(Marlétaz et al., 2019)、この呼称の関係性には注意が必要である。」
48ページ、7行 「線形動物」 「糸形動物」
50ページ、9行 「純海産は十三門,残りの十九門」 「純海産は十六門,残りの十六門」
84ページ、2-3行 「…日本においては海は漁師のものである。」 「…海は誰のものでもない。だが漁師は海で漁業を営む権利を持っている。」
96ページ、図3-5 「…の口側(上)と反口側(下)。」 「…の反口側(上)と口側(下)。」
134ページ、10行 「…命名したことに…」 「…公表したことに…」
134ページ、11行 「…はその命名後に…」 「…はその公表後に…」
156ページ、11行 「(図4-2)」 「(図4-2;現在はウェブ上でPDF版を無料でダウンロード可能である)」
161ページ、7行 「…和名にも命名のルールはない。」 「…和名にも命名のルールはない。ただし、「一語名で大文字始まりとすること」などの公表の要件に関する一部の条は、科階級群よりも高い階級の分類群の学名を規制している。」
176ページ、10行 「シロイズナズナ」 「シロイヌナズナ」
181ページ、4行 「まずは背景として、近年のDNA解析の結果について説明する必要がある。」 「まずは背景として、近年のサザエの分類について説明する必要がある」
181ページ、7行 「…のDNA解析を行った結果、」 「…の殻と蓋の形態を観察した結果、」
182ページ、3行 「アメリカの」 「イギリスの」
183ページ、7行 「リーブ」 「リーヴ」
183ページ、12行 「しかしこれは命名規約の公表の要件を満たさない雑誌や、切手の描写に対して付けられた名前だったため、」 「しかしこれは「原記載」に相当する記事が手書きのコピーであり、命名規約の公表の要件を満たさずに付けられた名前だったため、」
200ページ、16行 「Squamphis」 「Squamophis」
223ページ、12行 「瀬能博」 「瀬能宏」
225ページ、図5-2 「…の比較系統樹(下).系統樹上の…」 「…の比較樹形図(下)。樹形図上の…」
230ペ―ジ、1行目※ 「…真に近い「分類体系」を…」 「…自然に近い「分類体系」を…」

もしくは

「…真に近い「系統樹」を…」

237ページ、3行目 「藤田敏彦氏…」 「広瀬雅人氏(北里大学講師)には、本書帯に用いた写真を提供していただいた。藤田敏彦氏…」
245ページ 文献101として追加 「角井敬知(二〇一八)「動物界の分類群・系統――いまだに解けない古い関係」.(公益社団法人)日本動物学会(編)『動物学の百科事典』丸善出版.p.
54-57.」
248ページ、文献64 「Nishikawa T. (2001) Case 32. Thakassema Taeonioides Ikeda, 1904 (currently Ikeda Taeonioides; Echiura): proposed conservation of the specific name. Bulletin of Zoological Nomenclature, 58 (4), 277—279.」 「Nishikawa T. (2001) Case 3212. Thakassema taeonioides Ikeda, 1904 (currently Ikeda taeonioides; Echiura): proposed conservation of the specific name. Bulletin of Zoological Nomenclature, 58 (4), 277—279.」

 

※10ページ、「学名は仮説」について:ある分類群に対して、学名を付けるという命名法的行為、そしてそれによって生まれるタイプ標本とそれに紐づけられた適格名の関係は不変である。この適格名で表される分類群の範囲を「名義タクソン」という。対して、この「名義タクソン」とそれを含む個体の境界の設定については、動物学者の任意(つまり仮説)である。これによってあらわされる分類群を「分類学的タクソン」という。

従って、「新種の発表も「この種にはこの名前を付けたほうがよいと思う」という、研究者の仮説、提案である」という一文は命名法的行為自体が仮説であるという誤解を招くものであったが、あくまでもここでは上記した「分類学的タクソン」の境界、すなわち平たく言えば「分類体系の設定=仮説」であるという趣旨であったことをここに申し添える。

※37ページ、図2-2、冠輪動物は、らせん卵割動物から担顎動物を除いたものとする(つまり冠輪動物≠らせん卵割動物)結果も示されている(Marlétaz et al., 2019)。「動物学の百科事典(公益社団法人日本動物学会 編)」では、腹毛動物と扁形動物を併せた分類群を「吸啜(きゅうてつ)動物」と呼称していることも申し添えておく(角井、2018)。

※230ページ、1行目、「分類体系」はあくまでも人が生物を認識するための人工的な枠組みだとすると、「真に近い分類体系」という言葉は意味をなさない。「自然に近い分類体系」もしくは「真に近い系統樹」がより適切な表現であろう。三中先生、網谷先生、ご指摘ありがとうございました。

他にも間違いがありましたら,是非ご連絡ください.


クラウドファンディングの研究について

昨年の10月に成功したクラウドファンディングですが、

その後、東京大学での手続きも無事に進み、研究費として使用できる運びとなりました。

しかしながら本研究は欧州への渡航が不可欠ということと、

昨今の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を考え、

研究の開始は控えることとしました。


クラウドファンディング成功しました

先週までチャレンジしていたクラウドファンディングですが、

無事に成功いたしました。

わからなことだらけで始まったチャレンジで、

途中、巨額の投資いたずらなどもあったりしましたが、

最後の最後、ギリギリで何とか成功までこぎつけました。

 

ご支援・ご協力くださった皆様、本当にありがとうございました。

現在はクレジットの引き落としの確認している段階で、

これが終われば、本当に成功という事になります。

今からヨーロッパの博物館の、

まだ見ぬキヌガサモヅルの新種を目にするのが楽しみです。

本当にありがとうございました。

また研究の進捗などは各メディアを通じてお知らせいたします。


クラウドファンディングに挑戦中です(10/10まで)

写真の説明はありません。
2018年に、クラウドファンディングで支援を受けて新種として記載した、Asteronyx reticulata

 

 

クラウドファンディングに挑戦しています。

以前クラウドファンディングに挑戦したacademistと、米国のexperimentのコラボ企画で、

今度は世界から支援を募り、海外からキヌガサモヅルの新種を発見したいと考えています。
 

 

2014年にご支援を得た研究で、国内でテヅルモヅルの仲間のキヌガサモヅルと思われていたものの中から、新種を発見しました。

ここから、ヨーロッパの博物館に所蔵された世界中の深海から集められたキヌガサモヅルの標本には、さらに多くの新種が含まれていることが予想されます。
 

 

そこで、今回は世界のみなさんから新たにご支援を得て、ヨーロッパの博物館を実際に訪問し、標本を調査し、

そのDNA解析を行う事で、さらなるキヌガサモヅルの新種を発見したいと思っています。

2010年にパリの博物館で標本調査をした様子

 

皆様にいただいたご支援を、ヨーロッパ博物館への旅費、

並びに、実験用の試薬代に充てたいと思い、今回のプロジェクトを立ち上げました。
 

 

20ドル以上のご支援をいただいた方には感謝状を、

200ドル以上のご支援をいただいた方は、お名前を論文の謝辞にお載せする予定です。
 

 

以下のページの、”Back this project”より、1ドルからご支援いただけます。

皆さまのご支援をお待ちしております。
 

https://experiment.com/projects/searching-for-new-deep-sea-brittle-star-species-in-museum-specimens?lang=jp&fbclid=IwAR3_aBAyydPhmE-jgR0KIGB9s7r8b3eRctwZUzdaqTE5uT0aac05fIXhKVQ


講演をします [2/1(金)]

2/1に講演をします。以下詳細です。

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よさこい生態学セミナー

【日 時】2019年2月1日(金)16時30分~18時00分
【参加費】無料

【会 場】高知大学物部キャンパス 附属暖地フィールドサイエンス教育研究センター講堂

http://www.kochi-u.ac.jp/outline/campus_map_monobe.html

 

「クモヒトデを研究する

~フィールドワークに基づくアプローチ」

—————————————————–

 

参加無料のようです。要旨など、詳しくは以下のHPをご参照ください。
http://yosakoiseminar.blogspot.com/

 

実家にとても近い場所で凱旋?講演です。

お声をかけてくださった高知大学の鈴木紀之先生、

ありがとうございます。

頑張ります!


おさえておきたい学名文法

※この記事は基本的に「野田泰一・西川輝昭(編集:2005)国際動物命名規約第4版(日本語版)」を参照しています。また、間違いなどございましたら是非ご連絡ください.

 

種名の表記にはいろいろなパターンが存在する.

  • 亜属は大文字で書き始め、属名の後で()内に入れる:
    • Asteroschema (Ophiocreas) caudatus Lyman, 1879 (クモヒトデ)

 

  • 亜種小名は小文字で書き始め、種小名の後につける
    • Gorilla gorilla gorilla (ニシローランドゴリラ)

 

  • 集群は小文字で書き始め、種小名の前で()内に入れる(動物):
    • Ornithoptera (priamus) croesus Wallace, 1865 (チョウ)

 

  • 亜種の種群は小文字で書き始め、()内に入れて種小名と亜種小名の間に挿入する
    • Aus aus (aus) aus

Xus (Xus) (aus) aus (aus) aus (6語)もあり得る!

 

  • 属名は主格単数の名詞限定だが,種小名は形容詞でも,名詞でも可

  Mus rattus (ネズミ―ネズミ)

 

  • 種小名が形容詞の場合,属名と性の一致をしなくてはならない

  Asterochema amamiense ⇒ Squamophis amamiensis

 

  • 良く使われる語尾とその性:-us (男性), -a (女性), -um(中性

 

  • 種名をラテン語で表記するのは印刷上のならわしに由来で,厳密にはイタリックにする必要はない

 

  • 女性への献名語尾は-ae,男性は-i

 Calyptogena okutanii, Basilissa soyoae

 

  • 地名を表す語尾:-ensis, iensis, -ense, -(a)nus, inus, icus

  Zosterops japonicus, Nipponia nippon

 

  • 名前のアポストロフィーなどは除く(動物)

  Ophiura döderleini ⇒ Ophiura doderleini

 

  • 名前の接頭辞は,連結している場合のみ残す

  Vanderbilt ⇒ vanderbilti, von Letkemann ⇒ letkemanni

 

  • 学名は複数文字発音可能でないといけないが,発音さえできれば,意味が無くても可

  Meringa hinaka

 

  • 原則­学名に記号はつけないが,形質を表すアルファベットのみ,ハイフンで結べる(動物)

  Polygonia c-album (チョウ:シータテハ)

 

  • 属名と種小名の組み合わせは動物の中で唯一無二のものでなくてはならない(動物では属名のリストがある)

動物学のためのラテン語文法解釈

※この記事は基本的に「野田泰一・西川輝昭(編集:2005)国際動物命名規約第4版(日本語版)」を参照しています。また、間違いなどございましたら是非ご連絡ください.その他の引用文献はページ末に付してあります.

 

はじめに

  •  種名は,属名+種小名より成る.属名は主格単数の名詞であり,種小名はその修飾語である.
  • ラテン語は語尾変化言語であり,その単語は,変化しない語幹と,変化する語尾からなる.語幹がわかれば単語同士を連結させる,単語に接尾辞をつける,地名,地域名を種小名にするなどが可能となるため,語幹がわかるようになることは非常に重要である.
  • 語尾は,(種名に使われる範囲内では)性,修飾する単語の性,数に応じて変化する.
  • 種小名に用いられるラテン語の格は,主格属格の二つのみ.
  • 種小名に用いられる品詞は名詞,形容詞,副詞,動詞(ただし分詞化する必要がある),数詞,前置詞であるが,主に使われるのは名詞と形容詞である.

性の一致

種小名に形容詞を用いる場合,その性は属名の性に合わせなくてはならない.例えば属名が女性名詞であれば,種小名も女性にしなくてはならない.したがって,新たな学名をつくる際や,ある種が属を移る際には,その種小名が形容詞である場合,属名の性との一致が必要となる.これは,辞書の引き方さえわかっていれば,簡単に判定することができる.

 

辞書を引き,単語の性,語幹,語尾,語尾変化を判定する

名詞の場合

見出し語(主格・単数),語尾変化(属格単数),性.が載せられている.このうち,語尾変化と辞書巻末の変化表,あるいは「種を記載する」の表8.1 を照らし合わせれば,語幹を決定できる.

例)abruptum, -i n. 深淵:(研究社 羅和辞典)

→名詞の語尾変化表から,この単語は中性名詞の第2 変化であり,その語幹がabrupt であることがわかる.

 

形容詞の場合

見出し語(主格・単数),語尾変化(修飾する性に伴う変化).が載せられている.

例) admirabilis, -e adj. 深海の:(研究社 羅和辞典)

→形容詞の語尾変化表から,この単語は主格単数形が男性と女性で同じく,中性では別の第3 変化であり,その語幹がadmirabil であることがわかる.

 

こうして語幹を判定することができれば,属名,種小名の意味を読み解くことはもちろん,種名作成も自由自在である.

 

様々な種小名の作り方

種小名の単語の構成には,様々なパターンがある.

 

  • 一単語の形容詞を用いる:非常に簡単だが,それゆえに既に使われている場合が多い.語尾を変化させることで比較級,最大級にすることもできる(種を記載する,p190 参照)
  • 過去分詞,現在分詞を用いる:動詞を分詞化したものを種小名に用いることもできる.動詞には第五変化までが存在するが,辞書を引いて,①第一変化であった場合は,その語幹に-ans をつけ,②第二~第五変化であった場合はその語幹に-ensをつければ現在分詞となる.また,変化形に関係なく,語幹に-us, -a, -um をつけると過去分詞となり,形容詞のように扱うことができる.
  • 名詞を用いる:種小名は,属格と同格の名詞にしてもよい.この場合,語尾は属の性と一致させる必要はない.
  • 合成語を用いる:複雑な意味を持たせることができる.基本的には一番目の単語の語幹に連結母音(a, o, i)をくっつければよく,様々な品詞を合成することができる.二番目の単語が形容詞の場合,その単語の語尾だけが性の一致をうける.連結母音は,響きの良いものを使うようである.
  • 形容詞+形容詞or 名詞+形容詞:辞書を引けばすぐにつくれて簡単である.
  • 接頭語(副詞,前置詞,数詞)+(名詞,形容詞,動詞,副詞):副詞,前置詞,数詞などの接頭語は語尾変化しないため,辞書の見出しに出てくる単語を,そのまま後ろの品詞にくっつけるだけでよい.
  • 名詞+名詞:二番目の名詞はそのまま名詞として用いてもよいが,過去分詞化する場合は属名との性の一致が必要となる.
  • 地名に基づく種小名:地名に,接尾辞-ensis-iensis を伴うことで,形容詞として扱われる.但し,属名が中性の場合は-ense-iense にしなくてはならない.また,その他に,-(a)nus, -inus, -icus などの接尾辞を加えて種小名とすることもできる.
  • 献名による種小名:献名したい人の名前の最後に,男性に個人名に基づく場合は-i を、女性の個人名に基づく場合は -ae を付ければよい.人名に基づいた種小名は,属格の名詞として扱われる.ちなみに、船はラテン語では女性名詞なので、船に基づく場合は-aeを付ける(例:soyomaruae: 蒼鷹丸に基づく場合)など。
  • 無意味な種小名:発音さえ可能であれば,ランダムに単語を並べたものを種小名としてもよい.このようにして作った名前は,一切語尾変化しない.

 

参考

辞書に掲載されている略語:

adj. 形容詞(adjective);adv. 副詞(adverbe);gr. ギリシア語起源の(Greek);num. 数詞(numbers);pl. 複数(plural);praef. 接頭語(prefix);praep. 前置詞(preposition);s. 名詞(substantivum);f. 女性(feminine);m. 男性(masculinum);n. 中性(neuter);suff. 接尾辞(suffix);v. 動詞(verbum)

引用

ジュディス・E・ウィンストン/著,馬渡峻輔・柁原宏/訳,2008.種を記載する,第8 章 種を命名する:語源学:pp. 179-209.

平嶋義宏/著,2002.生物学名概論

小野展嗣/編,2009.動物学ラテン語辞典


講演をします(9/22[土])

9/22に講演をします.以下詳細です.

—————————————————–
公益財団法人水産無脊椎研究所
財団設立30周年記念シンポジウム
「サンゴとサンゴ礁の生き物たち」

【日 時】2018年9月22日(土)13時30分~16時30分
【参加費】無料

【定 員】300名(定員に達した時点で締め切ります)
【会 場】東京大学農学部弥生講堂 一条ホール
東京都文京区弥生1-1-1 東京大学農学部内
http://www.a.u-tokyo.ac.jp/yayoi/map.html

【講演者】
基調講演
「サンゴの常識・非常識」
山城 秀之(琉球大学 瀬底研究施設)

講演
「サンゴ礁性魚類とウミクワガタ類の相互関係」
太田 悠造(鳥取県立山陰海岸ジオパーク海と大地の自然館)

「サンゴ礁とその周辺に生息するクモヒトデ類」
岡西 政典(東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所)

「サンゴ礁域の隠れ上手な魚類たち」
片山 英里(公益財団法人水産無脊椎動物研究所)

「奄美のサンゴ群集とその周辺で見られる多様な生き物たち」
藤井 琢磨(鹿児島大学国際島嶼教育研究センター奄美分室)
—————————————————–

事前申し込み制(高校生以上)です.参加方法は以下のHPをご参照ください.
http://www.rimi.or.jp/event/symposium30th/

身に余る大役を仰せつかってしまいましたが,

クモヒトデを宣伝するチャンスと思って頑張ります.


論文が出版されました⑥

論文が出版されました.

沖縄県の海底洞窟から見つかったクモヒトデの新種を記載したという論文です.

残念ながら(?)海底洞窟だけではなく,付近の海底環境からも見つかっているので,

海底洞窟環境の固有種というわけではありませんが,

沖縄からもまだまだ新種が見つかる事に驚きました.



棍棒状の触手鱗を持つ事にちなみ,Ophioconis claviculataと名付けました.

Okanishi, M*,  Fujita, Y. (2018b) “A new species of Ophioconis (Echinodermata: Ophiuroidea) from Ryukyu Islands, southwestern Japan”. Proceedings of the Biological Society of Washington. 131(1): 163—174.

Linkはコチラ

ちなみに,今回論文を掲載してもらったPBSWは,

伝統のある分類系の雑誌で, 憧れがあったので,素直にうれしいです.


第16回国際棘皮動物学会議

2018年5月27日~6月1日まで名古屋で開催された

第16回国際棘皮動物学会議の後,三崎でエクスカーションが開催されました.

世界の棘皮研究者が,三崎に集いました

美しい夕日がお出迎え.ん,誰かが泳いでいる?

実験所下の荒井浜での採集.

調査船に乗って深海生物採集.

採れた生物が,エキスパートによって解析されていきます.

手際よくウニを観察するドイツの研究者.

巨大なウニに驚くウニ研究者

最後は技術職員のKさんと一緒にパシャリ.

三崎の技術職員は採集人と呼ばれていますが,

皆,その採集スキルの高さと生物の知識に舌を巻いていたようです.

三崎のお好み焼き屋で打ち上げ.

皆さん,お好み焼きともんじゃ焼きを堪能されたようでした.

最後に,参加者の一人のロシア人から,チョコをもらいました.

かなりがっつり塩が入っている変わった味でしたが,

まさに塩スイーツで,なかなか美味でした



今回は参加者だけでなく,

我々にとっても実りあるエクスカーションでした.

我々が普通だと思っていた種が,実は別種の可能性があったり,

新種だよこれ,と言われたり...



それから,限られた時間で最大限にデータを持って帰ろうとする,

海外研究者の姿勢にも感銘を受けました.



次の国際会議はカナリア諸島です.


Ophiodaphne formata (Koehler, 1905)(ダキクモヒトデ)

ダキクモヒトデ

Ophiodaphne formata (Koehler, 1905)

写真:@相模湾

撮影:幸塚久典

顕著な性的二型を示し,

雌の盤の口側に小さな押忍がしがみつくことが多い.

スカシカシパンなどの不正形ウニ類の体の上で生活する例が多い.


Ophiura calyptolepis H. L. Clark, 1911(ギョリンクシノハクモヒトデ)

Ophiura calyptoplepis H. L. Clark, 1911

ギョリンクシノハクモヒトデ*

(新称:「覆う」という意味の接頭語”calypto”と「鱗」という意味の”lepis“にちなんだ)

写真:@相模湾

撮影:幸塚久典