クモヒトデがツルクモヒトデ目とクモヒトデ目に分けられるということですが,
ではこの二目は何が違うのか.
以前は腕の腕骨と呼ばれる骨の形で分けられていましたが,
研究が進むにつれ,両目で共通の形の腕骨がみられることが明らかになり,
現在では腕骨による分類はできません.
私が研究を進めていたところ,
どうやら二目は腕の別の骨片によって分けられることがわかってきました.
クモヒトデ類は腕の周りに腕針と呼ばれる針状の硬い器官を備えています.
実はツルクモヒトデ目とクモヒトデ目は,
この腕針の配置が決定的に異なるのです.
クモヒトデ目では,この腕針が須らく腕の側面についています.例外はありません.
これに対しツルクモヒトデ目では腕針がすべて口側についてます.
クモヒトデを反口側から見てみると一目瞭然で,
クモヒトデ目の腕はなんだかフサフサしているのに対して,
ツルクモヒトデ目はつるっとしています.
(左)ツルクモヒトデ目のキヌガサモヅル(Asteronyx loveni)と
(右)クモヒトデ目のスナクモヒトデ科の1種の反口側(背側).
キヌガサモヅルは腕がツルっとしてますが,
スナクモヒトデ科の一種は腕がフサフサしているのがお分かりいただけますでしょうか?
ただし,この腕針が退化的で非常に小さくなっている種もいますので,
確実に見分けるためには顕微鏡が必要です.
腕針の配置なんて簡単に変わりそうなものですが,この違いはかなり顕著ですので,
何か重要な機能的な理由があるのではと考えられます.
ツルクモヒトデ目の多くの種は,
現生の種をみる限り,ヤギなどのサンゴに絡んでいます.
一方クモヒトデ目は(例外はありますが),ヤギに絡むことはほとんどありません.
口側の腕針は,ひょっとするとヤギに絡むために発達した器官なのかもしれません.
この腕針の機能の探究も,てづるもづる研究の一つの興味深いテーマかもしれませんね.