分類学の話です.
舞台は中世ヨーロッパです.生物の名前がどんどん長くなり,
目前に迫った生物資源利用の困難化救ったのが,
スウェーデンの博物学者
カール・フォン・リンネ(Carl von Linné)
でした.
彼はその著書「自然の体系(Systema Naturae)」の中で,
生物の名前を表すのに「二名法」という方法を採用しました.
これは,分類の最小単位「種」の学名である「種名」の表示法です.
基本セットは「属名」+「種小名」です.
属名は必ず名詞です(ですから一文字目が大文字です).
種小名は,基本は形容詞なので,種名は種小名が属名を形容する
(「灰色のオオカミ」など)
形になります.
ただし,種小名は名詞でもかまいません.
時々,名詞が二つ続く事に違和感を覚える方もいらっしゃいますが,
例えば「オレンジ・ジュース」みたいなものと思っていただければよいでしょう.
学名は
「ラテン語」
で表されます.
例えば種小名にsabineaeとか,japonicusとか,
“ae”とか”us”とかの聞きなれない語尾がついていることがあるかと思いますが,
これは全て単語をラテン語化する際につけられた語尾です.
以下に,種小名に頻繁にみられるラテン語尾をリストアップします.
“***i”, “***ae”:人名などの有性単語につける語尾.
男性にはi, 女性にはaeを付ける(ちなみに船は女性名詞です).
例) smithi, soyoaeなど
“***ensis”, “***iensis”:地名につける.
例) nipponensisなど
“***(a)nus”, “***inus”, “icus”:地域名につける
例) japonicusなど
ただし,これらの綴りや組み合わせは,
もとになった単語(語幹)が単数か複数かよっても変わりますし,
出来上がる単語の響きによっては,iが追加されたり,
語幹の一部が削られたりするので,一概にこうと言えるものではありません.
先にも述べましたが,種小名は名詞で表すこともできます.
例えば”soyoae”は蒼鷹丸という中央水研の有名な調査船に献名した種小名ですが,
単に”soyo”という名詞を種小名に使っても同じような意味となります.
ラテン語の名詞と考えればよいのです.
少し長くなってしまいましたが,このようなラテン語の2単語の後に「命名者」+「命名年号」が続き,
4単語が基本となって種名が表されます.
(亜種,亜属などが含まれるともっと単語数は増えますが,その説明はまたの機会に)
この二名法の発明により,生物の名前が簡便に表され,
それまでの混乱が解消されることとなりました.
これは「リンネ式二名法」と呼ばれ現在も変わらず用いられているため,
リンネは現代分類学の父と称されています.
しかし、実は,二名法のメリットはこれだけではないのです.
続く.