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分類学について③

分類学の話です.
 

舞台は中世ヨーロッパです.生物の名前がどんどん長くなり,

目前に迫った生物資源利用の困難化救ったのが,

スウェーデンの博物学者
 

カール・フォン・リンネ(Carl von Linné)

でした.
 

彼はその著書「自然の体系(Systema Naturae)」の中で,

生物の名前を表すのに「二名法」という方法を採用しました. 
 

二語名法

これは,分類の最小単位「種」の学名である「種名」の表示法です.

基本セットは「属名」+「種小名」です.
 

属名は必ず名詞です(ですから一文字目が大文字です).

種小名は,基本は形容詞なので,種名は種小名が属名を形容する

(「灰色のオオカミ」など)

形になります.
 

ただし,種小名は名詞でもかまいません.
 

時々,名詞が二つ続く事に違和感を覚える方もいらっしゃいますが,

例えば「オレンジ・ジュース」みたいなものと思っていただければよいでしょう.
 

学名は

「ラテン語」

で表されます.
 

例えば種小名にsabineaeとか,japonicusとか,

“ae”とか”us”とかの聞きなれない語尾がついていることがあるかと思いますが,

これは全て単語をラテン語化する際につけられた語尾です.
 

以下に,種小名に頻繁にみられるラテン語尾をリストアップします.
 
 

“***i”, “***ae”:人名などの有性単語につける語尾.

男性にはi, 女性にはaeを付ける(ちなみに船は女性名詞です).

例) smithi, soyoaeなど
 
 

“***ensis”, “***iensis”:地名につける.

例) nipponensisなど
 
 

“***(a)nus”, “***inus”, “icus”:地域名につける

例) japonicusなど
 
 

ただし,これらの綴りや組み合わせは,

もとになった単語(語幹)が単数か複数かよっても変わりますし,

出来上がる単語の響きによっては,iが追加されたり,

語幹の一部が削られたりするので,一概にこうと言えるものではありません.
 

先にも述べましたが,種小名は名詞で表すこともできます.

例えば”soyoae”は蒼鷹丸という中央水研の有名な調査船に献名した種小名ですが,

単に”soyo”という名詞を種小名に使っても同じような意味となります.

ラテン語の名詞と考えればよいのです.
 

少し長くなってしまいましたが,このようなラテン語の2単語の後に「命名者」+「命名年号」が続き,

4単語が基本となって種名が表されます.

(亜種,亜属などが含まれるともっと単語数は増えますが,その説明はまたの機会に)
 

この二名法の発明により,生物の名前が簡便に表され,

それまでの混乱が解消されることとなりました.
 

これは「リンネ式二名法」と呼ばれ現在も変わらず用いられているため,

リンネは現代分類学の父と称されています.
 
 
 
 

しかし、実は,二名法のメリットはこれだけではないのです.

続く.