新種はそう珍しいものではありません.
離島の海底洞窟の中,
人影まばらなビーチの砂の間,
漁港に打ち捨てられた漁労物などなど.
まだまだ探せばいくらでも見つかるはずです.
しかし,では新種を見つけたからと言って,
「新種を発見しました!名前はAus busです!」
とブログに書いても,それはAus busを命名したことにはなりません.
生物の名前に関わる行為(命名法的行為)は,
決められた要件を満たした著作物の中で,
決められた手順を踏んで行われる(「公表される」)必要があります.
というとなんのことやらですが,
おそらく,現代ではほぼすべての命名法的行為は,
学術論文の中で行われています.
著作物が満たすべき決められた要件とは,
国際命名規約第四版では以下のように定められています.
条8.1.1. 公的かつ永続的な科学的記録を提供する目的で発行しなければならず,かつ,
条8.1.2. 最初に発行された時点で,無料あるいは有料で入手可能でなければならず,さらに,
条8.1.3. 長期保存に耐える同じ複本を一度に多部数制作可能ななんらかの方法に余tt,同時に入手可能な複本からなるひとつの版として制作されたものでなければならない.
ただし,以下のものは条9のもと,除かれます.
条9.1. 1931年以降の,手書きの著作物の模写
条9.2. 写真
条9.3. 校正刷り(印刷段階前の,著者の確認のための版)
条9.4. マイクロフィルム
条9.5. 録音
条9.6. 標本のラベル
条9.7. 図書館などに供託されているが,公表されていない著作物の,注文による複本
条9.8. ウェブサイトで公開された文章や絵
条9.9. 学会の要旨集,ポスターなど.
これらに基づくと,学術雑誌は完全にOK,ウェブサイトはダメとなります.
しかし,例えば新聞であれば,もし万が一新種記載の要件を記事の中で満たしてしまった場合,
それが新種の提唱になりうるのではないかと私は考えています.
また,最近では電子出版の著作物内での命名法的行為も認められており,
迅速な新種の記載がおこなわれるようになってきました.
そのあたりについてはまた今度.