ヤンチナドレッジでは,またいろいろとクモヒトデが採れました.
Stegophiura sp. の反口側.
同種の口側.よく採れるやつです.
スナクモヒトデの類ですね.
岩の隙間に隠れているところを発見しました.
Ophiura kinbergi,クシノハクモヒトデです.
腕を器用に動かして砂の上を動き回ります.
こちらは口側.少し深くなってくると,クシノハクモヒトデの類ばかりが採れる地帯が広がっています.
ヤンチナドレッジでは,またいろいろとクモヒトデが採れました.
Stegophiura sp. の反口側.
同種の口側.よく採れるやつです.
スナクモヒトデの類ですね.
岩の隙間に隠れているところを発見しました.
Ophiura kinbergi,クシノハクモヒトデです.
腕を器用に動かして砂の上を動き回ります.
こちらは口側.少し深くなってくると,クシノハクモヒトデの類ばかりが採れる地帯が広がっています.
2015年4月15日にヤンチナでドレッジ調査を行いました!
あまり天候は優れませんでしたが,あとは荒れるばかりということで強行!
風は有りませんでしたが,ややうねりが入っており,
アネロンを服用したはずが,やや酔ってしまいました.
最近体の衰えを感じます.
手前の技術職員興田さんが,技術職員山内さんに,ウィンチ操作技術のレクチャー.
このようにいつでも安全確実に調査が行えるのは,技術職員さんが,
しっかりと技術を伝承してくださっているからですね.
その甲斐あって,60-70 m辺りの砂場でドレッジが曳けました!
持ち帰ったクモヒトデを飼育中なのですが,とても面白いことがわかりそうなのです!
いまからワクワクですよ!
これは海水の採取の様子ではありません.
水槽からの排水を,目の細かい網で受けています.
水槽の中にはカイヤドリヒドラのポリプが入っており,
そのクラゲが遊離したら,網で受け取れるという仕組みです.
小さな生き物はロストしやすいのですが,
ちょっとした工夫で克服できるのですね.
実験所のとある一風景でした.
ヒメモヅルについての続記です.
コペンハーゲンから届いたAstrocharis gracilisのタイプ標本はこちら.
こんな感じで,箱に丁寧に梱包されて送られてきます.
真ん中の小さいのが標本です.
この1個体が,A. gracilisの記載に使われた唯一一個体になります.
これに対して,アムステルダム博物館から届いたタイプ標本は2つの瓶に入れられていました.
これと
これです.
そして日本近海から記載されたヒメモヅルA. ijimaiの標本がこれです(タイプ標本ではありません).
これらの観察を始めたところ,すぐに違和感に気づきました.
明瞭に区別できる形が見つからないのです.
先行研究では,A. gracilis, A. ijimai, A. virgoの順に体表の鱗が小さくなるというのですが,
少なくともタイプ標本だけを見てやるとどうにも分けられません.
そこで,先日も記事にした新種と思われる個体と,
日本で採れたヒメモヅルも含めて,41個体の鱗の大きさと,体サイズ(盤径)を相関させて比較したところ,
どうやらA. gracilisとA. virgoのタイプ標本の一部とA.ijimaiの鱗の大きさは同じくらいであり,
A. virgoの別のタイプ標本はそれよりも鱗が小さく,
新種と思われる標本は統計的に鱗が大きい,ということがわかりました.
つまり,これまでに認められていた三種は,実は二種の混合だったのです.
そこで,これらの結果をまとめて,これまで三種が知られていたヒメモヅル属を,
Astrocharis monospinosaと名付けた新種の記載も含めて,
一減一増の末に,三種にまとめた論文を日本動物学会誌のZoological Scienceに発表しました.
http://www.zoology.or.jp/html/01_infopublic/01_index.htm
実は,このあたりの詳しい話は↑にも書かれています.
この論文は,初めはAstrocharis monospinosaの記載だけで発表しようと思っていたのですが,
もう少しまとまった発表にしたほうがいいのでは?
という藤田先生の意向もあり,
少し粘って分類学的再検討という内容にしました.
時間はかかったものの,
結果的に一つの分類群のレビューを初めて完遂することとなった,
思い出深い論文となりました.
実験で電気泳動を行っています.
この一つ一つのチューブの中で,
試薬を混合し,DNA増幅反応(PCR)を行います.
電気泳動は,その実験結果の検証作業です.
電気泳動層の中にこのような穴あきゲルを浸します.
サンプルチューブより,PCR実験液を,
µピペットで適量吸います(私の場合は4µl)
パラフィルムシートの上に,泳動マーカーと呼ばれる色付きの液を滴下しておき,
パラフィルム状で混ぜます!
十分混ざったら...
ゲルの穴の中に...
アプライします
チュー...
っと出してやると,マーカーと混合したPCR液は穴の中に落ちていきます.
全ての穴にアプライし終えたら,
蓋を閉じる
電源ボタンを,
ポチっとな
これで,20-25分ほど待てばDNAがゲルの中を流れて,
その存在が確認できるという仕組みです
Astrocharis monospinosa は新種であるということがわかりました.
しかし,Astrocharisi属の全3種の原記載を読んでみて,ふと気づいたことがありました.
これらは本当に区別できるんだろうか?
当時Astrocharisに知られていたのは,
A. virgo Koehler, 1904
A. ijimai Matsumoto, 1911
A. gracilis Mortensen, 1918
で,体表を覆う鱗が,それぞれ,小,中,大,ということで区別されていました.
しかしこれでは具体的な数字がなく,
本当にそれが明確に数値として分けられるのか不明瞭です.
こうなってくると原記載を読んデイてもラチがあきません.
そこでタイプ標本です.
原記載の基となった標本を担名タイプ標本といい,
基本的にはこれらの標本に基づいて種の命名は行われます.
上記の三種のタイプ標本の所在を調べていたところ,
A. virgoはアムステルダム動物学博物館に,
A. gracilisはコペンハーゲン大学動物学博物館に,
それぞれ所蔵されている事がわかり,
学芸員さんにコンタクトをとってみたところ,なんと貸出をしてくれるというのです
喜び勇んで申し込みをして数週間後,果たしてそれらの標本は,
はるばる海を越え,果たして私の手元に到着したのです.
続く
科博に所蔵されていた標本はAstrocharis gracilisと同定されていました.
この種はMortensenによって1918年に記載されたものでしたが,
原記載の掲載雑誌が少なくとも国内になかったため,
Döderlein (1927)による別の個体の再記載を頼りにこの種を同定していました.
しかしDöderleinの記載と科博の個体はどうも形が異なるのです.
果たしてこの違いは種内変異なのか,
それとも科博の個体は別種なのか?
見極めるためにはやはり原記載を見る必要がありました.
国外の図書館に複写を依頼して果たして手元に届いた原記載.
あれほど気持ちを昂ぶらせた文献拝読は未だかつてないかもしれません.
一ページずつページをめくるたびに,疑問が確信に変わっていきました.
Mortensen (1918)の原記載は,明らかにDöderlein (1927)と一致しており,
科博の標本とは異なることが分かりました.
すなわちこの時点で,手元の標本は新種であるという事が明らかになったのです.
しかし原記載を読んで気づいたことはこれだけではありませんでした.
続く.
Family: Astrocharidae ヒメクモヒトデ科
Genus: Astrocharis ヒメモヅル属
Specific name: monospinosa オオヒメモヅル(新称)
非常にレアなモヅルです.
まずヒメモヅル属からして珍しい.
体の表面がブヨブヨの皮か細かい顆粒に覆われていることの多いツルクモヒトデ目ですが,
この属は体が鱗に覆われており,かつ輻楯(ふくじゅん)と呼ばれる盤の背面の板状骨片が,
裸出する,という特徴があります.
特に,この輻楯の裸出という特徴は,他のツルクモヒトデ目にはほとんど見られません.
私の中のかっこいいモヅルランキングベスト3には間違いなく入る属です.
生息域も,海山の頂上,約300 m以深に限られており,
種数も本種を含めて3種しか知られていません.
Astrocharis monospinosaは,
①体を覆う皮下骨片が他の種に比べて大きい(0.5-1 mm程度)
②各触手孔に生えている腕針が1本
③体内の側腕板や腕骨が腕の基部で裸出する
といった特徴によって区別されます.
私が科博の学生になって,博物館の標本を片っ端から見ていた時に,
この標本を見つけました.ヒメモヅル属である事はすぐにわかったのですが,
新種だという確信は得られませんでした.
その後,調査を進めているうちに本種が新種である事が突き止められていきました.
続く.
先日お伝えしたニシキクモヒトデ.
ほとんどヤギに絡んでいることは以前からお伝えしている通りですが,
ヤギに絡まず岩場に張り付いているものもいるのです.
彼らは何故わざわざ岩場という荒野でその身を危険にさらしているのか?
ということで,岩場の個体をとってきて,
足掛かりになりそうなものを入れてみました.
まずはクリップです.
因みに,形態観察からはヤギに絡んでいるものと違いがみられませんでした.
こんな安直な実験でいいのだうか...
ニシキクモヒトデにもプライドがあるのでは...
10分後
めっちゃくっつきましたね...
別にヤギでなくても良いようです.
うーーむ,彼らはなぜ,どうやって,ヤギに絡んでいるのでしょうか.
これだけ簡単に採れて,飼育も比較的簡単なので,
実験で証明できそうです.
最近,調査に行くたびに何かと採集しているニシキクモヒトデですが,
いつの間にか白浜水族館のヤギに も湧いていたようで,
たくさんついていましたのでもらってきました.
タイや沖縄で採ってきたものは赤や紫などいろんなカラーバリエーションがあったのですが,
今回発見したものは全てオレンジと白のストライプです.
よーく観察すると,腕の背面になにやら棒状のものが伸びでいます.
最初は腕針かと思ったのですが,どうやらこれは触手が背中まで伸びているようです.
そこまで伸縮できるのかと驚きました.
ヨコエビが,クモヒトデの腕に捕えられているのか,
さっぱり動きません.
その割にはクモヒトデの口に運ばれる様子もありませんでした.
ヤギをよーく見てみると,クモヒトデだけでなくヘラムシ?のような等脚類もたくさんついていました.
うーむ,ヤギ,クモヒトデ,ヘラムシ,三者の関係とかどうなっているのでしょうか.
生物を観察していると,疑問に尽きません.
こちらはクモヒトデの腕の中にある腕骨です.
我々の持つ脊椎のようにこの腕骨が腕の中に連なっているため,
英語ではVertebraと呼ばれます.
これは腕の先端側から見た画像で,
腕の基部側から見ると,この突起形状がフィットするような形になっています.
つまり,お互いが関節構造を持っています.
この関節の構造は分類群によって違っており,
古くから,主に科以上の高次分類群の分類形質に使われてきました.
この表面を拡大したのが以下の画像です.
なんだか縞々が見えますよね.
実はこれ,クモヒトデの腕骨に刻まれる「年輪」と考えられています.
季節輪であるとの報告もありますが,
実際にこの輪がどのような生物学的特性によって刻まれているのかは,
いまだはっきりとはわかっていません.
しかも,実はこれは更新統から得られた化石なのです.
化石にも残るこの輪の特性がわかれば,
クモヒトデが生息していた古環境の復元も可能になるのではないかと考えています.
少し前からいろいろと手を広げて研究を進めているのですが,
最近それらの結果が徐々にまとまってきつつあります.
今年はいろいろと発表できることがありそうで,今からワクワクです.
それにしても,無限の可能性を秘めたこのクモヒトデ.
そろそろ一緒に研究をしてくれる仲間が現れないかなーと考えたりする今日この頃です.
リンネ以降爆発的に記載が増加し,
徐々に自然の体系が整理されていきました.
ところが,それに伴って浮き彫りとなった問題もありました.
例えば,ある人がフィリピンで新種の魚を記載しました.
その後,別の人がこのフィリピンの魚を知らずに,
日本で採れた同じ魚を新種として記載しました.
この場合,同じ種に別の名前が付けられることになります.
これを「異名」と言います.
さらに,リンネの階層式分類体系の中では,
化石種の扱いは定められていませんでした.
このような問題が増える中,18世紀から19世紀にかけて,
世紀英国科学振興会,アメリカの地質・博物学会,
国際地質学会議,国際動物学会議で議論が重ねられた結果,
著名な動物学者による動物の命名を審議するための委員会が結成されました.
これが動物命名法国際審議会の誕生です.
その後,第5回国際動物学会議(ベルリン,1901)における同委員会による報告が,
「Regles internationales de Nomenclature zoologique」
なる法典として成文化されました.
この法典は,その後の諸会議で一連の改正を伴い,
1961年に,「国際動物命名規約」として出版されました.
現在は第4版まで出版されており,
動物の学名が恒久的に,混乱なく使えるようにするための取決めが,
詳細に書かれています.
また,この規約では,動物の学名を運用するための,
様々な重要な概念などについても言及されているのです.
私もよくお世話になっている一冊です.
新種発表等の命名法的行為は,
「適格な」著作物の学術論文の中で行われなければなりません.
学術論文の一般的な構造は以下の通りです.
1.タイトル(その論文のテーマを的確に表す題名)
2.著者とその所属
3.緒言(論文を書くにあたっての背景)
4.材料と方法(論文で用いた材料や,解析などの方法)
5.結果(論文で得られた結果の明示)
6.考察(得られた結果から考えられる科学的知見)
7.謝辞(お世話になった方々へのお礼の言葉)
8.文献(論文内で引用した文献の正確なリスト)
記載論文も基本的にはこの構造をとります.
が,ちょっと違う部分もあります.
実際にはどのような構成でしょうか.
クモヒトデの新種記載論文をここに書いてみましょう.
1.タイトル
和歌山県白浜町より得られたクモヒトデの新種
2・著者と所属
岡西政典 京都大学フィールド科学教育研究センター 瀬戸臨海実験所
3.緒言
紀伊半島西岸では,これまで63種のクモヒトデが記録されている(Murakami, 1963; Irimura, 1981).2015年++月に和歌山県南部漁港で得られたクモヒトデが未記載であることが判明したため,本論文で報告する.
4.材料と方法
本研究で扱ったクモヒトデ30個体は,****年**月**日に,和歌山県南部漁港の刺し網で得られた.採集場所は南部沖の水深約30 mである.形態観察には実体顕微鏡を用いた.
標本は**博物館に保管した.標本番号は***である.
5.記載
Ophioaus bus sp .nov.
検討標本: タイプ(標本番号***),和歌山県南部,約30 m.
記載:盤は**mm, 腕の長さ** mm,盤上は長さ** mmの鱗に覆われ云々.
*記載論文が一般の論文と大きく異なるのはこの部分です.「結果」の代わりに「記載」というセクションになります.ここで当該論文で扱った標本についての,詳細な記述を行います.因みに,Ophioaus busは本論文でつけようとしている二名法で記された新種の名前,sp. nov. はラテン語で「新種」という意味ですので,この一文で,「こんな新種の名前を提唱します!」という意味を成しており,現在では,この一文がないと記載を行ったことになりません.また,タイプとはその種の名前を担う標本の事で,これがきちんと指定されていないと,現在では命名したことには成りません.ちなみにいちいち「現在では」とただしているのは,実は論文の発行された年代によって,命名法的行為の満たすべき要件は違ってくるためです.そのあたりについてはまた今度.
6.所見
本種は**という形を持つことから,Ophioausに属する.本属は世界で10種が知られるが,本種のような***を持つ種は他にO. cus, O. dus, O. eusの3種が知られる.しかし,これら3種の腕の長さは最長でも100 mmなのに対し,本研究で扱う新種の腕は30 mに達する事から容易に区別できる.また,他にも**という特徴により区別できため,これらの形質を考慮して,本種は新種と考えられる.
*この部分も,一般の論文では「考察」だったのに対し,記載論文では「所見」です.ここでは,当該論文で扱う種が新種である根拠を,他の近縁種との比較から論理的に説明していきます.また,ここで生態や分布域について言及すrことも少なくありません.
7.謝辞
白浜大学の瀬戸博士には,サンプルの採集,記載におけるアドバイスなど,多方面にわたりご助力をいただいた.ここに記して謝意を表する.
8.文献
Irimura, S. 1981. Opiurans from Tanabe Bay and its vicinity, with the description of a new species of Ophiocentrus. Publ. Seto Mar. Biol. Lab., 26(1/3): 15–49, pl. 1.
Murakami, S. 1963. On some ophiurans from Kii and vicinities with description of a new species. Publ. Seto Mar. Biol. Lab., 11(2): 171–184.
これが記載論文の基本的な流れとなります.
長くなりましたが,このような論文をせっせと書くことでやっと新種として認められるわけです.
もちろん,単に書いたから明日から新種!というわけではなく,論文が完成したら,
雑誌に投稿,査読者からの長いやり取りの後にようやく雑誌に掲載が許可(受理)され,
その後何か月後かに雑誌が発刊されてやっとその命名法的行為は認められます.
おそらく,早い人でも新種を発見してから発表に至るまでは半年はかかるでしょう.
リンネによって分類学の基礎が築かれてから250年あまり,
現在名前が付けられている生物は180万種程度かと思いますが,
まだ名前のついていない種は1000万種はいるといわれています(これは研究者によって意見が違いますが).
このような作業を行いながら人類が地球上の生物に名前を付けることができるのは,
まだまだ遠い未来の事になりそうです.
*この記事ではZoobankへの登録がない,タイプの指定がない,
などの理由から命名法的行為には当たらないとは思いますが,
念のため,筆者からも命名法的行為の棄権を明言しておきます.
新種はそう珍しいものではありません.
離島の海底洞窟の中,
人影まばらなビーチの砂の間,
漁港に打ち捨てられた漁労物などなど.
まだまだ探せばいくらでも見つかるはずです.
しかし,では新種を見つけたからと言って,
「新種を発見しました!名前はAus busです!」
とブログに書いても,それはAus busを命名したことにはなりません.
生物の名前に関わる行為(命名法的行為)は,
決められた要件を満たした著作物の中で,
決められた手順を踏んで行われる(「公表される」)必要があります.
というとなんのことやらですが,
おそらく,現代ではほぼすべての命名法的行為は,
学術論文の中で行われています.
著作物が満たすべき決められた要件とは,
国際命名規約第四版では以下のように定められています.
条8.1.1. 公的かつ永続的な科学的記録を提供する目的で発行しなければならず,かつ,
条8.1.2. 最初に発行された時点で,無料あるいは有料で入手可能でなければならず,さらに,
条8.1.3. 長期保存に耐える同じ複本を一度に多部数制作可能ななんらかの方法に余tt,同時に入手可能な複本からなるひとつの版として制作されたものでなければならない.
ただし,以下のものは条9のもと,除かれます.
条9.1. 1931年以降の,手書きの著作物の模写
条9.2. 写真
条9.3. 校正刷り(印刷段階前の,著者の確認のための版)
条9.4. マイクロフィルム
条9.5. 録音
条9.6. 標本のラベル
条9.7. 図書館などに供託されているが,公表されていない著作物の,注文による複本
条9.8. ウェブサイトで公開された文章や絵
条9.9. 学会の要旨集,ポスターなど.
これらに基づくと,学術雑誌は完全にOK,ウェブサイトはダメとなります.
しかし,例えば新聞であれば,もし万が一新種記載の要件を記事の中で満たしてしまった場合,
それが新種の提唱になりうるのではないかと私は考えています.
また,最近では電子出版の著作物内での命名法的行為も認められており,
迅速な新種の記載がおこなわれるようになってきました.
そのあたりについてはまた今度.
分類学について.
リンネによる階層式分類体系が確立される前から,
人々は生物を分類してきました.
その基準はどのようなものでしょうか?
最も頻繁に用いられるのは,やはり見た目,すなわち「形」でしょう.
・星形の体
・くねくね動く腕
・腕は分岐する
・腕の背面にはかぎ爪の列
・多孔板は五つ
・全体的に赤い
例えばこんな見た目の動物がいたら,
我々はそれを「アカテヅルモヅル」と,
一瞬で判断することができます.
形だけでなく,
顕花植物などでは花の「匂い」,
鳥などでは「鳴き声」,
なども分類の基準にされています.
最近では,例えば菌類などは「DNA配列」自体を特徴として分類をしています.
このような分類の指標となる生物の指標を「形質」と呼びます.
分類学者は古来より,可能な限りたくさんの形質を総合的に比較して,
生物を分類・命名してきました.
では,この命名行為とは,一体どのようにして行われるのでしょうか?
続く.
こちらはミツイタクモヒトデの腕の中部あたりの口側の画像.
画面の上側が腕の先端,下側は腕の基部(盤より)です.
前回記事にした,腕の反口側の構造同様,
口側でも,腕節を構成する以下の骨片のセットが観察できます.
①口側正中線上に並ぶ「腹腕板」
②その側面にある「側腕板」
③反口側でも見られる「腕針」
④通常は最も口側の根元にある触手孔の蓋の役割をする「触手鱗」
クモヒトデが骨片より成る動物である事が伺えるかと思います.
勿論内臓などの内部構造もあるのですが,それはまた別の機会に.
因みに,ツルクモヒトデ目では触手鱗がなく,
最も口側の腕針が触手鱗の役割を果たしています.
南部で採れた生き物シリーズ
まずはナマモノから.新鮮なウミエラ.
コブヒトデモドキ
わざわざ漁師さんが車で届けてくれた,
(多分)オオカイカムリ.
赤いカイメンと黄色いスナギンチャクに浸食されたヤギ.
よーく拡大すると,ニシキクモヒトデがついていました.
わかりますか?
水揚げからしばらく経ってカピカピになったサンプルですが...
おお!テヅルモヅル(腕だけ)が採れました
と,思ったらなんと本体も
アカテヅルモヅルAstroglymma sculptaですね.
なかなか活きがよさそうでホクホクです
ということで,色々と実りの多い刺網採集でした
最後は自販機でコーヒーを買って,白浜へ帰ります.
お疲れ様でした
年末年始にかけて採集してきたクモヒトデの同定(種名を調べること)を行っています.
顕微鏡でのぞきながら,文献と比較.
一見同じように見えるクモヒトデですが,
顕微鏡で観察すると,その形の多様性に驚きます.
同定した標本に耐水紙のラベルを入れて,
瓶に整理.
仮番号を付けて,整理をしていきます.
最終的には,博物館相当施設に収めて,研究に活かします.
分子実験も嫌いではないですが,
私の場合,いろいろな疑問が湧いくるのは検鏡している時です.
なかなか時間がとれないこともありますが,
こうしてクモヒトデ研究に携わる時間は幸せで落ち着きます.
そんな小さな幸せを噛みしめる冬の夜更けでした.
深海のサンプルは採れているのですが,
作業中の写真を撮り忘れていました.
そのうち,取り出したクモヒトデなどの写真をお見せしましょう.
ということで,三崎の次に東大総合博物館にお邪魔しました.
佐々木先生(貝類研究をされています)のもとにお邪魔して,
色々と観察をさせてもらいました
標本庫も見せていただきました
所狭しと標本が並べられています.
原則公開不可なので...雰囲気だけでもどうぞ
こちらは,重井先生のウニコレクション
壁一面ウニ標本!圧巻です
中には明治―大正時代の標本もみられました.
再び日の目を見る時を待っているのでしょうね.
実験所の船着場を出港してしばらくすると,
水鳥がついてきました.
一定間隔を保ってついてきます.
君のエサになるようなものは残念ながら採れないんだよ~.
とかなんとか言ってる間に,ポイントに到着.
水深700 mの地点ですが,1時間とかかりませんでした.
さすが相模湾ですねえ.
手際よく技術職員さんがドレッジを投入.
一時間後.
そろそろ上がってきます
サンプル受けの箱をひいて待機します.
おお!ちゃんと曳けてました
技術職員さんがサンプルを箱の中へ.
泥や岩などは入っていますが,果たして生物は採れているのか?
JAMBIO合同調査レポートの続きです.
調査二日目は晴天で臨海丸による出港が可能
スクランブルです
船に向かう一向.人数が多いだけに壮観です.
プロジェクト感が漂って参りました
臨海丸の設備紹介.
ウインチには,2000 mのワイヤーが巻かれています
これで700 mの曳網が可能
勿論Aフレームも搭載.
ヤンチナのものよりもやや背が高いので,
漁具が釣り下がっても甲板に付く心配ナシですね.
こちらがドレッジちゃん.
いわゆる生物用ドレッジですね.
網を使っているので,生物が(比較的)傷まずに採れます.
テンションメーター.
皆で見やすい位置にあるので,これを見ながらワイワイ楽しめます
いざ出港!果たして深海へのアクセスは可能なのか
出張の様子のレポートはひとまず置きまして,
クモヒトデの体の仕組みについて書きます.
これまで盤の仕組みついて解説をしましたが,
次は腕について.
こちらは,ミツイタクモヒトデの腕の反口(背)側です.
クモヒトデの腕は,竹のような節の繰り返し構造になっています.
この節を腕節といい,一つの腕節は,
いくつかの骨片の組み合わせより成ります.
背側から観察できるのは主に,
①背腕板という板状骨片,
②その側面にある側腕板という板状骨片,
③側腕板に関節している腕針という針状骨片,
の三種類です.
特に腕針は棒状,フック状,鋸状など形が多様で,
その数も一腕節において一本から十数本と変化大きいため,
極めて重要な分類形質となっています.
合同沿岸調査一日目.
三崎の臨海実験所の研究船「臨海丸」で深場を曳く予定でしたが,
あいにく荒天のため湾内十数メートルのドレッジにとどまりました.
近場でのドレッジで曳網時間が極めて短いため,
どんどんサンプルが上がります.
処理に追われる調査班.
まずは上澄みをふるいにかけ,
表層の小さい生き物を濾しとります.
残った砂や泥を篩にかけ,今度は目に見えるサイズの大物をセレクションします.
すべての網を抜けた水にも,超微小な生物(メイオベントス)が残っています.
これらも余さず,メイオベントス班によって処理されます.
一日目からなかなかハードな展開となりました.
果たして翌日は深場にたどり着けるのか?
続く.
1/19日は残念ながら浅場での調査しかできませんでしたが,
1/20は天気が劇的に回復し,深場(200-700m)でドレッジができました
三崎臨海実験所の船着き場.
非常に良いコンディションです
採れた獲物をみんなでソーティング.
調査の様子はまた後日レポートいたします.
その後,いったん科博で日帰り調査をして,
今日は東大に行って,長かった関東調査もようやくお終いです.
あと少し,頑張ります
クモヒトデを分類する際には,体の中の微小骨片の観察が必要になる時があります.
今日はその観察法をレクチャーいたしましょう.
①まず時計皿に,観察したい部位を入れます.
②ハイターを,
③注入.
③軟組織が泡を立てて溶け始めます.
しばらく待つと,骨片が出てきました
④ピペットでハイターを取り除きます.
骨片を吸い込んでしまわないように注意.
ハイターは乾燥すると結晶化するため,観察の邪魔になります.
そこで,⑤水ですすいでやります.
極力ハイターを取り除き,洗瓶で純粋を注入.
⑥ピペットで水を吸い出す操作を2-3回繰り返します.
⑦水分をなるべく取り除いた後は,乾燥するまで待ちます.
最後に,水の代わりにエタノールですすぐと乾燥が早くなります.
ピンセットで,骨片を両面テープに張り付けて完成
あとはSEMで観察するのみです
ウニの解剖開始
外部形態→内部形態と,みられる特徴を余すところなく見ていきます.
そしてこちら!今回は秘密兵器を導入していました.
私(右手)が触っているタッチパネルにウニの動画を映し出し,
詳しいウニの特徴を詳細な動画で理解できる次世代型教育機器です.
この写真では,私のタッチパネルの操作が,そのままモニターに反映されます.
叉棘の動きや多孔体の配置,水管系の仕組みなど,
なかなか解剖の現場では全員に教えにくいことも,
この装置ならその場で瞬時に見せることができます.
また,本来は展示品として開発したものなので,自発的な学習にも役立ちます.
開発者はこの方.自然共生研究センターの渡辺友美さんです.
実は今年の動物学ひろばの隣のブースでこの展示を見かけたときにお話をして,
今回の実習に使わせていただきました.
お陰様で,いつもは解説が難しい部分まで詳細に見せることができました.
ありがとうございました!
まだ開発途中らしく,今後,様々な意見を取り入れ,教育用にも開発を進められるとのこと.
完成版が楽しみです
ちなみに,今回の実習でこの装置に「ウニウニ君」という愛称が付けられることとなりました
よく考えたらこのウェブサイトの名前にはてづるもづるがついているのに,
てづるもづるを紹介していませんでした.
ということであいさつ代わりにこちら.
セノテヅルモヅル(Astrocladus coniferus Döderlein, 1902)
明治期の学問(特に博物学・動物学など)の近代化に一役買った,
いわゆるお雇い外国人教師の一人のルートウィヒ・デーデルラインが記載した種です.
おそらく日本沿岸では,比較的よくみられる種でしょう.和名の「セノ」は「瀬の」の意味で,
比較的に浅瀬でもみられることからこの名前がついているのだと思います.
①腕針が盤の外側部分,第1分岐か2分岐より生じる,
②多孔体が盤側面の口側よりの部分にある,
③体表を覆う小さな突起が体表に散在する,
といった特徴から他種と区別されているのですが,
それが本当に種としての安定した形質なのかは未だに疑問が呈されています.
この種についても,研究を進めつつあるので,
見つけた方は是非ご一報を。
最近,日本のクモヒトデの情報をまとめています.
テヅルモヅル類についてはほぼ完全にまとめているのですが,
クモヒトデとなると,まだ完全ではありませんでした.
実は分類学には文献学の側面もあり,
たとえばとあるグループの分類の情報を整理する際には,
過去のいかなる情報も漏らさず目を通す必要があります.
先人が残したクモヒトデの記録情報を,
種名,場所,日付,水深,水温などの項目ごとに,一件一件まとめます.
結構単純作業なのでやってる途中は本当にしんどいのですが,
ある程度情報量が増えてくると,不思議なことに,
生物の特性の分布の関係が浮かび上がったりしてきます.
生物学はこのような毎日の地道な作業の積み重ねですね.
ちなみにこのデータは,エクセルに打ち込んでデータベースなどに運用するのですが,
そんなものがなかった昔(1800年代とか)の研究でも,
正確に記録がまとめられています.
偉大な先生方にはまだまだ及びません.
伊良部で採れた棘皮動物シリーズ
まずは手始めにツマジロナガウニ.
どこにでもいます.
ちょっと変わってオウサマウニ類.
やはりこの子はいつ見てもかっこいい
腕がバラバラになってしまったクモヒトデ.まさにBrittle(=脆い) star(=ヒトデ)ですね.
この種は八放サンゴに絡んでいたのですが,うまく捕まえられなかったので,
私がピンセットでつついているうちに腕が切れてしまったようです.
しかしご覧くださいこの盤の色彩の美しさ.
よく見ると,非常に長い棘も生えています.
おそらくトゲクモヒトデ科(Ophiotrichidae)というグループでしょう.
フサクモヒトデ科(Ophiocomidae)の類.
こいつも,盤をよく見ると網目模様でかっこいいじゃないですか
もういっちょフサクモヒトデの類.
これ,何かに似てると思ったら,サンゴの隔壁に似ている気がする!
「サンゴ 隔壁」で検索したら,こんな記事にいきあたりました.
なるほど,冬瓜にも似ているのですね.
こちらはアワハダクモヒトデ(Ophiodermatidae)の類と思われます.
盤の表面にも,小さなクモヒトデが(笑)
こいつは腕が小ぶりでなかなかキュートなヤツです.
星形だけではありません。 棘皮度物の中には,6本以上の腕を持つ奴もいます.
数は少ないのですが,奇形などでなく,6本で種のなかで固定しているところを見ると,
祖先から分岐してしばらく経つクモヒトデの中には,
もはや星形にこだわる事をやめたのかもしれませんね.
実は,棘皮動物がなぜ五放射なのかという疑問に対する十分な答えはまだ得られておらず,
後生動物の体の仕組みを考える上での大きな謎のひとつとなっています.
いつかはそんな謎にも挑戦したいなあと思いながら,
まずは目の前の課題をこなさなくてはならないのでした.
今年もあと少し,頑張ります
Squamophis amamiensisについての追記です.
はじめ,科博でこの標本を見た際には,
新種とはわからなかったのですが,手元の文献では名前が調べられませんでした.
前記事でも述べましたが,ヒトデモドキ属はとにかく外部形態が少ないのですが,
種の分類に用いられていたのは体表の骨片(皮下骨片と我々は呼んでいます)の形状や配置でした.
粒粒の骨片やトゲトゲ等,様々な形の小さな骨がこの属の種の体を覆っており,
その大きさや密度等が分類の指標になっていました.
まずはこれらの形態を整理しなくては始まらないので,
古今東西の全てのヒトデモドキ属の記載文献を集め,解読したところ,
いずれの記載にも一致しない事がわかりました.
ほとんどの種が顆粒状やトゲトゲの骨片を持っているのに対し,
この標本の体表の骨片の形は,写真のようにうろこ状だったのです.
さらに観察を続けると,腕に生えている針の数や,体内の骨片の形状までが,
他の種と異なっていることを見出しました.
そこで,これらの違いをまとめ,約1年近くかけて論文を準備しました.
この間に何度も何度も原稿を修正してくださった藤田先生には,本当に感謝です.
こうして,出会いから一年以上を経て,
本種はAsteroschema amamienseという名前で発表されました.
その後,この種が実はツルクモヒトデ目の中でもかなりの変わり種という事が分かってきたのですが,
それはまた別の機会にお話いたしましょう.
こちらは,Squamophis amamiensis (Okansihi and Fujita, 2009)という種です.
私と,師匠の藤田先生が2009年に新種として発表しました.
私が初めて論文にした,思い出深いヤツでもあります.
現在はSquamophisという属に移されていますが,
私が記載した際は,この種はヒトデモドキ属(Asteroshcema)に属していました.
この属は,他に比べて外見の差が少ない(形態形質が少ない)にもかかわらず,
ツルクモヒトデ類の中では珍しく34種という多種を含みます(他の属は,多くても10種程度です).
多種=多様と考えてもよいのですが,
分類が進んでいないグループでは同種異名が多いということが考えられます.
この属はまさにそのようなグループだといわれており,
各地の研究者によって種が乱立している状態でした.
しかし,私が修士でこのヒトデモドキ属の情報を整理しているうちに,
科博に所蔵されていたある標本が,どうしても既存の種の記載に当てはまらないことに気付いたのです.
そこで一大決心し,この個体を新種として発表することを決めました.
2014年12月7日に,東京高田馬場にて,モヅルカフェを開催してきました
サイエンスカフェということで,雑誌の表紙などを参考に,
なるべくオシャレなフォントを使ってタイトルページを作りましたが,
持ち込んだノートPCへのフォントのインストールを忘れたため,
あえなく撃沈.慣れないことはするもんじゃないですね
たっぷり一時間半,モヅルや研究についてあれこれしゃべってきました.
そもそも,テヅルモヅルとは何者なのか?
海藻ではありません「クモヒトデ」です
では,そのクモヒトデとは何者なのか?
クモでもヒトデでもありません!でも,ヒトデはちょっと惜しい
クモヒトデもヒトデも,ウニやナマコと同じ「棘皮動物」というグループに含まれます.
じゃあ,よく言われるクモヒトデとヒトデの違いとは?
私が専門にしている分類学ってどんな学問?
その歴史と実際まで,楽しく解説してきました.
なぜ,私はテヅルモヅルを研究しているのか
テヅルモヅルを研究する意義とは?8年間蓄積した情熱をぶつけてきました.
そして,前日の棘皮動物研究集会でも発表した,
キヌガサモヅルの分子系統地理のお話もしてきました.
参加者(サポーター)の方から「思ったより進んでいてびっくりした」とおっしゃっていただきました
最後に,みなさんでもづるポーズ
「もづるトークをします」との呼びかけに,これだけの人が集まってくださいました.
なかなか注目されにくいマニアックな研究でも,
ちゃんと人の知的好奇心の一部を満足させられることが分かっただけでも,
開催して良かったと思います.
academistの支援者の皆様,
academist事務局の柴藤さん,森さん,
そしてもづるカフェにご参加いただいた皆様,
本当にありがとうございました
これからも頑張ります
勿論私も発表しました
「キヌガサモヅル(棘皮動物門:クモヒトデ綱)の分子系統地理」
岡西政典(京大・瀬戸臨海)・藤田敏彦(国立科博・動物)
ちょっと画質がよろしくないのは,暗闇のせいではございません.
実はこれは,動画のキャプチャーなのです
今回の発表は,academistのご助成で進められたもので,
当初予想していたよりも,とても面白い結果が出つつあったので,その内容を発表しました.
さらに詳細に標本を検討できれば,論文にできそうです
こうして,ポスター発表,口頭発表共に大盛況のうちに幕を閉じました.
締めの挨拶をしているのは,今回の世話人の一人の,三崎臨海実験所の大森紹仁先生です.
今回の研究集会を取り仕切っていただきました.本当にありがとうございました.
そして
打ち上げの始まりです
大いに研究した後は,大いにのまなくてはなりません.
美味しい三崎のマグロ料理と地酒に舌鼓を打つのでした.
大分お酒も進んだところで,みなさんとパシャリ.
私の左手が神奈川大学のウニの古生物の大御所,金沢先生と,
右手が今回のもう一人の世話人,三崎臨海の幸塚先生(ウミシダの専門家)です.
とにかくみんな仲良く,お酒も研究も楽しむのが棘皮動物研究者です
来年もよろしくお願いいたします
今回お世話になった集会オーガナイザーの皆様,
発表に対しご意見をくださった先生方,
懇親会でお話してくださった皆様に,感謝を申し上げます.
そしてacademistでご支援いただいた皆様,
ありがとうございました
まだまだ続く棘皮動物研究集会.
実験施設の中には,水槽がたくさんありました.
さすが海洋生物エボデボのメッカ。ちょっと暗いですが,
こちらはアカウニ水槽.
こちらはハネジナマコ水槽.
しかし,実はハネジナマコの学名には混乱があるらしく,
ナマコ研究者の方の「これ,ハネジナマコじゃないよ」発言に,
しばらく現場が騒然としていました.
実際には,まあ,研究している実態が違うわけではないから大丈夫か,という話に落ち着いていました.
ポスターセッションにはお菓子や飲み物がフリーで用意されていました
古生物の発表や,
今話題のオニヒトデに関する発表や,
なんと,三崎に生息するテヅルモヅルの発表まで
といいつつ,まあ私も共著者の一人です(笑)
三崎のイソバナ群落に付着するセノテヅルモヅルの幼体の発表です.
テヅルモヅルは発生等は未だに謎のままなのですが,
イソバナ群落におびただしい数が付いているということで,
その個体数や,成長と腕の分岐数の計測をした研究です.
時間をかけてモニタリングすれば,何かの発表になるかもしれません.
聴衆の中に,棘皮動物猛者が
何と,ワモンクモヒトデイヤリングです
私も様々な棘皮動物グッズに目を配ってきましたが,
クモヒトデをイヤリングにしているのは初めて見ました.天晴.
世界はまだまだ広いですね.
2014年12月6日に開催された,棘皮動物研究集会に行ってまいりました.
今年の開催地は,東大の三崎臨海実験所.
非公式な集会ながら,今回は,
約70名もの参加者が集まったそうです.
口頭発表とポスター発表の合間に,実験所の施設見学がありました
こちらは,臨海実習を行っている,日本海洋生物学百周年記念館.
こちらが実習室.実は三崎を訪問するのはこれが7年ぶり2度目.
臨海実習に携わる身としては,ずいぶんと見方も変わるものですね.
机が円形に配置されているのは,陽の光を十分に取り込むためだそうです.
実習室の標本棚が,透明です
これは大変見やすい!とても参考になります.
危険生物の告知は瀬戸でも行っていますが,
そういえば水産有用種についてはあまり触れていません.
少なくともここに上がっている種のほとんどは瀬戸でも採集できるので,
何らかの告知をしてもよいかもしれませんね.
記念館からの眺め.窓外は油壷湾の入り口に臨み,
実験所の調査船「臨海丸」(奥の大きな船)が見えます.
なんと2000mのケーブルが巻かれているということで,
かなりの水深(浅くても700 mくらい?)まで調査が可能です.
屋上に上って,油壷湾を眺める棘皮動物研究者方.
毎年若手だけでなく,大御所も多数参加されており,
若手と先生方の交流が活発なのが本集会の特徴でもあります.
この場所には,通称「グリーンハウス」と呼ばれる木造の実験棟があったのですが,
東日本大震災の際に焼失してしまったそうです.
残念ですが,他に被害がなかったことは不幸中の幸いでしょうか.
記念棟と研究棟までは,景色のいい小道でつながれています.
集会当日は天気に恵まれ,とても美しい景色まで堪能できました
生物を分けると世界が分かる ー分類すると見えてくる、生物進化と地球の変遷ー
講談社ブルーバックス
新種の発見
ー見つけ、名づけ、系統づける動物分類学ー
中公新書 2589
深海生物テヅルモヅルの謎を追え!
系統分類から進化を探る
東海大学出版会
フィールドの生物学シリーズ 第20巻
これらのリンク先のページには系統解析に関する記事が,上から新しい順に並べられています.古い順にみる場合は,ページの一番下からご覧ください.
・2020/10/28 論文が出版されました!
Okanishi, M.*, Fujii, T. (2020)
“A new record of brittle star Ophiopsila cf. polyacantha (Echinodermata: Ophiuroidea) from Southwestern Japan, with notes on its bioluminescence”.
Species Diversity. 25(2): 283—294.
・論文が出版されました!
Okanishi, M.*, Kohtsuka, H., Fujita, T. (2020)
“A taxonomic review of the genus Astrocladus (Echinodermata, Ophiuroidea, Euryalida, Gorgonocephalidae) from Japanese coastal waters”.
PeerJ. 8: e9636 (42 pp.)
・論文が出版されました!
Oikawa, S*. Matsui, Y., Oguro, M., Okanishi, M., Tanabe, R., Tanaka, T., Togashi, A. Itagaki, T. (2020)
“Species-specific nitrogen resorption proficiency in legumes and nonlegumes”.
Journal of Plant Research. 133(5): 639—648.
・論文が出版されました!
Okanishi, M.*, Mah, C., L. (2020)
“Overlooked biodiversity from museum collections: Four new species and one new genus of Ophiuroidea (Echinodermata) from Antarctica and adjacent regions with notes on multi-armed ophiuroids”.
Marine Biodiversity. 50: 64 (26 pp. )
・論文が出版されました!
Okanishi, M., Kato, M., Watanabe, H., Chong, C. and Fujita, T. (2020)
“Large populations of two new species of Ophiambix (Echinodermata, Ophiuroidea) discovered on Japanese hot vents and cold seeps”.
Raffles Bulletin of Zoology. 68: 196—213.
・論文が出版されました!
木村妙子他…(著者24人中9番目) (2019)
「紀伊水道南方海域および熊野灘の深海底生動物相」.
三重大学大学院生物資源研究科紀要. 45: 11—50.
・論文が出版されました!
木村妙子他…(著者25人中10番目) (2019)
「紀伊水道南方海域および熊野灘の深海底生動物相(第2報)」.
平成30年度三重大学フィールド研究・技術年報. 17: 1—29.
・論文が出版されました!
Hayashi, R. & Okanishi, M. (2019)
“The widely occurring brittlestar Ophiactis savignyi (Amphilepidida: Ophiactidae) as an epibiont on loggerhead sea turtle, Caretta caretta”.
Zootaxa. 4695: 497—500.
・論文が出版されました!
Okanishi, M., Ishida, Y. & Mistui, S. (2019)
“Fossil gorgonocephalid basket stars (Echinodermata: Ophiuroidea: Euryalida) from the Middle Pleistocene of Japan; the first record from the Indo Pacific region”.
Paleontological Research. 23: 179—185.
・論文が出版されました!
Okanishi, M., Oba, Y. & Fujita, Y. (2019)
“Brittle stars from a submarine cave of Christmas Island, northwestern Australia, with description of a new species <i>Ophiopsila xmasilluminans</i> (Echinodermata: Ophiuroidea) and notes on its behavior”.
Raffles Bulletin of Zoology. 67: 421—439.
・2019/3/27: 論文が出版されました!
Okanishi, M & Fujita, T (2018) “A comprehensive taxonomic list of brittle stars (Echinodermata: Ophiuroidea) from submarine caves of the Ryukyu Islands, southwestern Japan, with a description of a rare species, Dougaloplus echinatus (Amphiuridae)”. Zootaxa. 4571(1): 73—98.
・2018/6/21: 論文が出版されました!
Okanishi, M & Fujita, T (2018) “A new species of Ophioconis (Echinodermata: Ophiuroidea) from a submarine cave at Shimoji Island, Miyako Island Group, southwestern Japan”. Proceedings of the Biological Society of Washington. 131: 163—174.
・2018/4/6: 論文が出版されました!
Okanishi, M & Fujita, T (2018) “Description of a New Subfamily, Astrocloninae (Ophiuroidea: Euryalida: Gorgonocephalidae), Based on Molecular Phylogeny and Morphological Observations”. Zoological Science. 35(2): 179—187.
・2018/4/5: 論文が出版されました!
Okanishi, M, et al. (2018) “A new cryptic species of Asteronyx Müller and Troschel, 1842 (Echinodermata: Ophiuroidea), based on molecular phylogeny and morphology, from off Pacific Coast of Japan”. Zoologischer Anzeiger. 274: 14—33.
・2018/3/9: 論文が出版されました!
Okanishi M, Fujita, T. (2018) “A taxonomic review of the genus Astrodendrum (Echinodermata, Ophiuroidea, Euryalida, Gorgonocephalidae) with description of a new species from Japan”. Zootaxa. 4392(2): 289-310.
・2018/3/8: 論文が出版されました!
Baker, AN, Okanishi M, Pawson, DL. (2018) “Euryalid brittle stars from the International Indian Ocean Expedition 1963–64
(Echinodermata: Ophiuroidea: Euryalida)”. Zootaxa. 4392(1): 1-27.
・2018/1/31: 論文が出版されました!
Okanishi M, Fujita, Y. (2018) “First finding of anchialine and submarine cave dwelling brittle stars from the Pacific Ocean, with descriptions of new species of Ophiolepis and Ophiozonella (Echinodermata: Ophiuroidea: Amphilepidida)”. Zootaxa. 4377: 1-20.
・2017/12/23: リバネス 「サイエンスキャッスル関西大会」にて講演を行ってきました!
・2017/11/20-22: 第14回JAMBIO 沿岸生物合同調査@千葉県館山に参加してきました!
・2017/11/4: 平成29年度自然史学会連合公開講座「海の今昔を深~~く探る.」にて講演を行ってきました!
・2017/9/21: 日本動物学会 第88回富山大会@富山県民会館にて口頭発表を行ってきました!
・2017/6/4: 日本動物分類学会 第53回大会@海洋研究開発機構にて口頭発表を行ってきました!
・2017/3/28: 論文が出版されました!
Okanishi M, Fujita T, Maekawa Y, and Sasaki, T. (2017) “Non-destructive morphological observations of the fleshy brittle star, Asteronyx loveni using micro-computed tomography (Echinodermata, Ophiuroidea, Euryalida)”. Zookeys. 663: 1-19.
・2017/2/7: 論文が出版されました!
Okanishi M.(2017)
“A taxonomic review of the genus Astrohelix Döderlein, 1930 including the
synonymy of the subgenus Asteroporpa (Astromoana) Baker, 1980 to Astrohelix”
Zootaxa. 4227 (4): 543-553.
・2016/12/5: 論文が出版されました!
Okanishi M., Sentoku, A, Fujimoto, S, Jimi, N, Nakayama, R, Yamana, Y, Yamauchi, H, Tanaka, H, Kato, T, Kashio, S, Uyeno, D, Yamamoto, K, Miyazaki, K and Asakura, A. (2016)
“Marine benthic community in Shirahama, southwestern Kii Peninsula, central Japan”
Publications of the Seto Marine Biological Laboratory. 44: 7-52.
・2016/12/1: 論文(著書)が出版されました!
Okanishi M. (2016)
“Ophiuroidea (Echinodermata): Systematics and Japanese Fauna”
In: Masaharu Motokawa and Hiroshi Kajihara (eds.) Species Diversity of Animals in Japan.
Springer Japan, Tokyo, Japan, pp. 657—678.
・2016/11/18: 日本動物分類学会 第87回沖縄大会と,第22回国際動物学会議の合同大会にてシンポジウムを企画し,講演・ポスター発表を行ってきました!
・2016/6/12: 日本動物分類学会 第52回大会@札幌にて口頭発表を行ってきました!
・2016/5/18: 読売新聞に記事が掲載されました!
・2016/1/29: マイナビニュースに記事が掲載されました!
・2015/12/5: 第12回棘皮動物研究集会が開催されました!
・2015/12/1: マイナビニュースに記事が掲載されました!
・2015/10/30-11/6: タイ・プーケットで調査を行ってきました!
・2015/10/1茨城大学理学部生物科学コースに所属が移りました!
・2015/9/17-19:日本動物学会 第86回 新潟大会にて招待講演と口頭発表を行ってきました!
・2015/6/13-15: 日本動物分類学会 第51回大会@広島にて口頭発表を行ってきました!
・2015/6/6: 化石研究会 第33回総会・学術大会のミニシンポジウム「深海環境と生物」にて招待講演を行ってきました!
・2014/12/7: サイエンスカフェを開催してきました!
・2014/12/6: 第11回棘皮動物研究集会に参加してきました!
・2014/11/20-25: 沖縄で調査を行ってきました!
・2014/11/02-08: タイ・プーケットで調査を行ってきました!
・2014/10/11: Smips, 研究現場の知財分科会にて招待講演を行ってきました!
・2014/9/21: 論文が出版されました!
Okanishi M., Moritaki T. and Fujita T. (2014)
“Redescription of an euryalid bittle star, Astroceras coniunctum (Echinodermata: Ophiuroidea: Euryalidae).”
Bulletin of the National Museum of Nature and Science Series A (Zoology). 40 (3): 133-139.
・2014/9/11-13: 日本動物学会 第85回 仙台大会にて口頭発表を行ってきました!
・2014/8/31: 鳥取県立博物館特別展示「胸キュン☆サンゴ展~わたしを深海(うみ)につれてって~」の特別シンポジウムにて招待講演を行ってきました!
・2014/7/20-23: 2014 European Echinoderms Colloqium(欧州棘皮動物研究会議)にて口頭発表を行ってきました!
・2014/6/28: 日本古生物学会2014年年会・総会にて口頭発表を行ってきました!
・2014/6/13: 日本動物分類学会第50回記念講演会を企画いたしました.たくさんの方にお越しいただきました.ありがとうございました!
・2014/5/29: 研究費獲得のためのクラウドファンディング”academist”でのチャレンジが終了しました!最終獲得金額は,目標金額40万円を達大きく上回る63.45万円でした!
皆さん、本当に応援ありがとうございました。
・2014/4/22-25: WESTPAC 9th International Scientific Symposiumで口頭発表を行ってきました!
過去のニュースはコチラ.
岡西政典 OKANISHI Masanori
広島修道大学 人間環境学部
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