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プロフィール オカニシマサノリ

てづるもづるについて~クモヒトデの体の仕組み③~

出張の様子のレポートはひとまず置きまして,

クモヒトデの体の仕組みについて書きます.

これまで盤の仕組みついて解説をしましたが,

次は腕について.
 

Aboralarm

こちらは,ミツイタクモヒトデの腕の反口(背)側です.
 

クモヒトデの腕は,竹のような節の繰り返し構造になっています.

この節を腕節といい,一つの腕節は,

いくつかの骨片の組み合わせより成ります.
 

背側から観察できるのは主に,
 

①背腕板という板状骨片,

②その側面にある側腕板という板状骨片,

③側腕板に関節している腕針という針状骨片,
 

の三種類です.
 

特に腕針は棒状,フック状,鋸状など形が多様で,

その数も一腕節において一本から十数本と変化大きいため,

極めて重要な分類形質となっています.


JAMBIO合同沿岸調査②

合同沿岸調査一日目.
 

三崎の臨海実験所の研究船「臨海丸」で深場を曳く予定でしたが,

あいにく荒天のため湾内十数メートルのドレッジにとどまりました.
 

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近場でのドレッジで曳網時間が極めて短いため,

どんどんサンプルが上がります.

処理に追われる調査班.
 

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まずは上澄みをふるいにかけ,

表層の小さい生き物を濾しとります.
 

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残った砂や泥を篩にかけ,今度は目に見えるサイズの大物をセレクションします.
 

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すべての網を抜けた水にも,超微小な生物(メイオベントス)が残っています.

これらも余さず,メイオベントス班によって処理されます.
 

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一日目からなかなかハードな展開となりました.

果たして翌日は深場にたどり着けるのか?
 

続く.


チーム棘皮動物

 

三崎調査を終えた翌日,

やり残しの仕事を片付けに,急遽科博で調査を行いました.
 

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なんと偶然,その日はアメリカのスミソニアン博物館から,

Christopher Mah博士(ヒトデ系統分類学者)が科博に調査に到着した日でした.
 

せっかくなので,つくばセンター駅で一緒に食事をして,

藤田研の院生と一緒にパシャリ.
 

左から,M2の新井君(ヒトデ),研究生のAbe Woo君 (ナマコ),私(クモヒトデ),Chirs (ヒトデ)です.

撮影してくれたD3の倉島君,ありがとうございました!
 

実はChirsとは,ちょうど四年前のスミソニアン博物館訪問以来の再開でした.
 

最近の棘皮動物学の動向から,生き物好きにはたまらない,彼のブログの話まで,

楽しいひと時を過ごしました.
 

さあ,あとは東大での調査を残すのみです


ガマの油売り

 

 

三崎に着いた初日は,歓迎パーティでした.

全国津々浦々より,総勢18名の研究関係者が集う大規模な調査です.

宴もたけなわの頃...
 

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東大の鬼才,泉君による落語が始まりました

今回の題目は「蝦蟇の油」.

現所属(筑波)に因んだ憎いチョイスです.
 

素面の流れるような商人の口上と,酔いどれのへべれけ口調を,

見事に使い分けていました.
 

ちなみに,彼の台座になっているのは

重ねられたソファーの座部.
 

足元の台座は重ねられたソファーの座部.

不安定さを感じさせない見応えのあるアクションで,

聴衆を大いに沸かせていました.
 

こうして三崎の初夜は過ぎていきましたとさ.


JAMBIO合同沿岸調査

 

 

1/19日は残念ながら浅場での調査しかできませんでしたが,

1/20は天気が劇的に回復し,深場(200-700m)でドレッジができました
 

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三崎臨海実験所の船着き場.

非常に良いコンディションです
 

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採れた獲物をみんなでソーティング.

調査の様子はまた後日レポートいたします.
 

その後,いったん科博で日帰り調査をして,

今日は東大に行って,長かった関東調査もようやくお終いです.
 

あと少し,頑張ります


JAMBIO

先日から三崎に調査に来ております.
 

JAMBIOの合同沿岸調査で,船舶によるドレッジ調査に参加させてもらっています.
 

JAMBUIOとは,東大の三崎臨海実験所と筑波大学の下田臨海センターが共同で

海洋生物学の推進拠点を形成する事を目的とした機構で,

これまでにも様々な事業,共同調査,シンポジウムを開催しています.
 

ウェブサイトはコチラ↓(画像をクリック!)

JAMBIO

母体になっている「共同利用・共同研究拠点事業」は,

私が所属している共同教育拠点事業と同じ,文科省の認定を受けており,

我々としても大変興味深い事業です.
 

共同研究の応募も行われております.
 


三崎調査

 

 

科博での調査が終わり,三崎の臨海実験所に来ています.
 

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三崎といえばこちら!マグロでしょう

今日は少し贅沢にマグロステーキ丼を食べました.

船舶による深海生物調査を予定していたのですが,

今日は生憎の天気で湾内の浅場の調査にとどまりました.
 

明日の天気は回復気味ということなので,

ドレッジが曳けるように期待です


クモヒトデの骨片観察法

クモヒトデを分類する際には,体の中の微小骨片の観察が必要になる時があります.

今日はその観察法をレクチャーいたしましょう.
 

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①まず時計皿に,観察したい部位を入れます.
 

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②ハイターを,
 

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③注入.
 

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③軟組織が泡を立てて溶け始めます.
 

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しばらく待つと,骨片が出てきました
 

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④ピペットでハイターを取り除きます.

骨片を吸い込んでしまわないように注意.

ハイターは乾燥すると結晶化するため,観察の邪魔になります.
 

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そこで,⑤水ですすいでやります.

極力ハイターを取り除き,洗瓶で純粋を注入.
 

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⑥ピペットで水を吸い出す操作を2-3回繰り返します.
 

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⑦水分をなるべく取り除いた後は,乾燥するまで待ちます.

最後に,水の代わりにエタノールですすぐと乾燥が早くなります.
 

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ピンセットで,骨片を両面テープに張り付けて完成

あとはSEMで観察するのみです

 


VHX

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科博での作業を進めています

こちらはデジタルマイクロスコープ,VHX2000.
 

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このように試料台にサンプルを入れ,

高精細な画像を様々な角度から撮影できたり,

リアルタイム深度合成ができます
 

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のみならず,ボタン操作で簡単にSEM式撮影にも切り替えられる

私は決してKEYENCEの回し者ではないのですが,本当に便利です.

精錬された操作性を誇っており,ストレスなく撮影ができます.
 

ガンガン作業が進みます


15th International Echinoderm Conference

第15回国際棘皮動物会議が,5月にメキシコのカンクンで開催されます.

ウェブサイトはコチラ↓

http://www.icmyl.unam.mx/15iec/index.html
 

約3年周期で,大陸持ち回りで開催されている本会議.

棘皮動物の,自然史研究物が集う数少ないチャンスです.
 

前々回(2009:タスマニア)は私の国際会議初陣でした.
 

前回(2012:ベルギー)は,経済・スケジュール的問題で不参加でしたので

今回は何としても参加したいところではあるのですが,

いかんせんメキシコは遠い
 

パッと調べてみても,航空券約16万円,所要時間片道21時間
 

5月というのがまた微妙なところ.

なれど容赦なく迫りくる参加登録締め切り.
 

まずは発表ネタを練り上げるために,科博での作業を頑張ります.

それから考えよう
 

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2009年のタスマニア会議での様子.

会議最終日,フェアウェルパーティーのこの日,

謎の発熱に襲われ一日寝込んだのは今は良き思い出です.


採集装備

今日は調査用の装備についてです
 

乗船調査中,レンチやニッパーなどが必要に

しかし,求める獲物は甲板の端っこ...

そんな時は
 

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このようなケースに収納して携行すればよいのです
 

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ということで,コーナンでケースを買ってきまして.
 

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別買いしたゴムひもを通します.
 

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さらに別買いしたプラスチックの差し込み具を,
 

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ゴムひもの先端に接続し,
 

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百均で買ったワイヤーで,
 

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折り返し部分を,
 

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固定
 

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ニッパーで余ったワイヤーをカット.
 

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じゃーん
 

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最後に,ワイヤーで固定した部分と,ゴムの折り返し部分を,

ビニールテープで固定して完成
 

今度の調査でさっそく使う予定です
 


つくば

 

出張で国立科学博物館(筑波)に来ております.
 

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日本には一体何種のキヌガサモヅルがいるのか?

その謎を解き明かすべく,片っ端から標本を観察するのです.

(もちろん拠点の仕事も兼ねています)
 

キヌガサモヅルの標本の乾かし中.

先日の記事の写真もそうですが,

乾燥させた方がクモヒトデの骨片の形ははっきり見えるのです.

 
 

とりあえず乾燥の仕込み(?)をして,

明日からは本格的な観察の開始です.

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一仕事終えた後の一杯.

これからしばらく,標本漬けの日々です


てづるもづるについて~クモヒトデの体の仕組み②~

クモヒトデの体の仕組みがどうしても知りたいあなたへ,

クモヒトデの形態解説第二弾です
 

前回と同じミツイタクモヒトデをみながらその体の仕組みを理解しましょう.

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こちらは体の口側.盤の真ん中には口があります.
 

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鱗しかなかった反口側と違い,口側はやや複雑.
 

 五つの腕の延長線上の交差点に口があり,

様々な形の骨片が組み合わ去っているためです.
 

まず,口の入口部分は五つの顎に囲まれており,

その先端に生える歯で口を通る餌を咀嚼します.
 

この画像では全貌が見えませんが,歯は歯板という板状の骨片に間接しており,

歯版は口板という骨片に支えられています.

口板の外側には側口板が配置し.

対になった側口板の間には口楯という板状の骨片があります.

多くの種ではこの口楯の一つが巨大化し,多孔体の役割を果たします.
 

というように,口の周りを構成する骨が複雑に配置しています.

また,顎のスリット部分の最も口側には,

口棘と呼ばれる,歯に似た骨片が並んでいます.
 

また,間輻部と呼ばれる盤の口側の腕と腕の間には,生殖裂孔があります.

この生殖裂孔の縁に生じる突起は生殖棘です.
 

後にも述べたいと思いますが,

口の中から腕の先端までは触手の列が伸びており,

多くの種はこの触手伝いで,食物を口に運んでいると思われます.
 

このような歯,口棘,歯板,口板,側口板,口楯,

生殖裂孔,生殖棘などの形,数,大きさなどが分類形質になるのですが,

これらは,比較的高次(属や科)の分類に

使われていると思います.

(はっきりと検討したわけではありません).
 

一目には似たような形のクモヒトデですが,

顕微鏡レベルでは様々な形の違いが見て取れます.


てづるもづるについて~クモヒトデの体の仕組み①~

突然ですがクモヒトデの体の仕組みを解説いたします.
 

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ミツイタクモヒトデOphionereis prorrectaの反口側.

以前,ちょろっとだけ触れましたが,多くのクモヒトデは,

体の真ん中の「盤」という部分と「腕」が,見た目で明瞭に分けられます.

(実質的なヒトデとの違いは,歩帯溝がないことです)
 

クモヒトデの体はいろんな形の骨片に覆われており,

その形状が分類に使われています.

今回は,盤の形状についてご紹介します.
 

Aboral disc
上記個体の反口側の盤の拡大画像.

じゃーん,こちらが,盤の反口(背)側です.

基本的に,クモヒトデの盤は,「盤鱗」と呼ばれる鱗に覆われています.

この鱗も様々な形があり,盤のど真ん中のものひときわ大きく「中背板」と呼ばれ,

その周りに配置している5つの比較的大きなものは「下址板」と呼ばれます.
 

これらは合わせて「第一次板」と呼ばれ,他の盤鱗と区別されます.
 

また,腕の付け根部分には,輻楯(ふくじゅん)と呼ばれる対の鱗があり,

この形や大きさは多くの種で重要な分類形質となっています.
 

勿論,鱗だけでなく棘や皮に覆われたり,第一次板のような鱗の区別がないもの,

輻楯が他の骨片などに覆われて見えないものがいたりと,種によって形質状態は様々ですが,

これらの特徴は昔も今も重要な形質として使われていることは間違いありません.


講義(豊中高校)

 年末の豊中高校の実習で講義を行いました

今回は,最終日の夜に瀬戸臨海のポスドク三人によるお話三連続でした.
 

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千徳博士の講義「サンゴの生物学」

とてもきれいなサンゴの写真を巧みに活用したスライドで,

高校生達をサンゴワールドに引き込んでおりました.

最近のダイビング熱でサンゴと他の生物の織りなす共生関係に心惹かれ気味な私も,興味津々で聞き入りました.
 

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私の講義「深海生物テヅルモヅルの進化を探る」
 

深海ってどんなところ?

てづるもづるとは?

分類学って?
 

私も負けじと高校生を深海生物ワールドへ引きずり込もうと試みました(笑)

果たしてみなさんがどのような感想を持ってくださったのかはおいておいて,

講義の準備をするたびに毎回自らの無知を認識します.

今回も改めて深海について勉強するいい機会となりました.

まだまだ精進ですね.
 

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最後は河村さんの講義「クラゲの生活史」

それにしても,刺胞動物の研究者は,みな写真を撮るのが上手な気がします.

やはり研究対象への愛ですね.クラゲへの愛が伝わってくる講義でした.

河村さんのお話にもありましたが,

研究中は知的に興奮する瞬間に度々遭遇するのですが,

中でも「思いもよらなかった結果」に出会えた瞬間は格別です.
 

自分でも予期しなかった結果に出会うために,

我々は研究を続けているのかもしれません.
 

などということを,駆け出しの研究者三人が熱く語る夜となりました.


落し物

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お正月明け,実験所の駐車場.

車の横に何かが落ちていますね.

近寄ってみると...
 

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魚?

それも鱧???

うーん,まさかのファフロツキーズでしょうか?

新年早々,怪現象での幕開けとなりました.

 

 

 


Asteroporapa (Astromoana) koyoae Okanishi & Fujita, 2011(コウヨウモアナモヅル)

Asteropoapa (Asteromoana) sp

Family: Goegonocephalidae テヅルモヅル科

Subfamily: Gorgonocephalinae テヅルモヅル亜科

Genus: Asteroporpa シゲトウモヅル属

Subgenus: Asteroporpa (Astromoana) モアナモヅル亜属

Specific name: koyoae コウヨウモアナモヅル
 

トゲモアナモヅルと同時に記載したモヅルです.

当然のことながら,発表当時は日本初記録亜属のモヅルでした.



2009年に小笠原での科博の深海調査に参加させてもらった際に,

お世話になった水産実験センターの方が,

「例えば,深海籠調査ではこんなのが採れますよ~.」

と言いながら気軽に見せてくださったものの中に混じっていました.



①盤の反口側の縁部に,フックがついた板を持つ,

②盤の反口側は一様な大きさの円錐型皮下骨片に覆われる

③それらの皮下骨片の先端には,皮下骨片の高さよりも長い棘が生じる

 

といった特徴で他種と区別できます.

せっかくなので,水産実験所の研究船「興洋」に献名しました.

本種はこの個体以降採集されていないため大層珍しいのだと思われます.

採集における人脈の大切さを教えてくれた種です.

 

撮影:岡西政典


Asteroschema salix Lyman, 1879

Asteroschema salixのコピー

Family: Asteroschematidae タコクモヒトデ科

Genus: Asteroshema ヒトデモドキ属

Specific name: salix (和名なし) 
 

日本では,南硫黄島からしか発見されていない珍しい種です.

他にはオーストラリア,フィリピン,ニュージーランドの329-2999 mに分布しています.
 

①体全体が小さな顆粒状の皮下骨片に覆われている

②それらの皮下骨片は,大きさ約0.07 mm-0.08 mmと小さい

③輻楯は縦長で,長さは太さの約2.5-3倍

④腕針の長さは各腕節長の約2倍
 

といった特徴で他種と区別できます.

こいつが所属するヒトデモドキ属は外部形態が非常に少ないため,

体表の微小な骨片の大きさなどで分類していますが,

詳しい種分類を行うためには,DNA解析なども行ったほうが良いと思われます.


Asteroporapa (Astromoana) muricatopatella Okanishi & Fujita, 2011(トゲモアナモヅル)

 

DSC_6487 (コピー)

Family: Goegonocephalidae テヅルモヅル科

Subfamily: Gorgonocephalinae テヅルモヅル亜科

Genus: Asteroporpa シゲトウモヅル属

Subgenus: Asteroporpa (Astromoana) モアナモヅル亜属

Specific name: muricatopatella トゲモアナモヅル
 

こちらはなかなかの珍モヅルです.

シゲトウモヅル属は日本の太平洋側から古くより記録が知られるのですが,

1980年にニュージーランド産の種に対して設立されたモアナモヅル亜属は,

日本からは知られていませんでした.
 

同属のシゲトウモヅルAsteroporpa (Asteroporpoahadracantha は古くより日本の太平洋側より記録があります.

科博にもたくさんのシゲトウモヅルの標本があり,

それらを調査していたところ,6個体ほど入った瓶の中に,

1個体だけ顕微鏡で見ると明らかに形態が異なる種を見つけました.
 

それがこのトゲモアナモヅルです.
 

①盤の反口側の縁部に,フックがついた板を持つ,

②盤の反口側は一様な大きさの円錐型皮下骨片に覆われる

③それらの皮下骨片の先端には,皮下骨片の長さよりも短い棘が生じる
 

クモヒトデでは,パッと見て,すべて同種だろうと思うような数が採れることがよくあるのですが,

実際に検鏡して見るとこのように別種が混じっていることがよくあります.
 

 

どのような分類群でもそうかもしれませんが,

必ず検鏡しないと「同定した」と言えない,ということを教えてくれた種です.

撮影:岡西政典


実家

 

 

に帰っております.

IMG_4569 (コピー)

年末は何かと最後の最後まで仕事に追われてしまったので,ほっと一息.

一つ大きな仕事が終わりました.
 

今年もいろいろとやることはあるのですが,まずは実家の雑煮で英気を養うこととします.

 


謹賀新年

 

あけましておめでとうございます
 

Flash

今年は,年賀はがきにクモヒトデを入れてみました.

腕が硬いやつは,彗星形にしようとしてもどうしても曲がらず,

このように走っているように見えたりします.
 

今年もクモヒトデの謎を解明すべく頑張ります


ウニウニ君

 

 

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ウニの解剖開始

外部形態→内部形態と,みられる特徴を余すところなく見ていきます.
 

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そしてこちら!今回は秘密兵器を導入していました.

私(右手)が触っているタッチパネルにウニの動画を映し出し,

詳しいウニの特徴を詳細な動画で理解できる次世代型教育機器です.

この写真では,私のタッチパネルの操作が,そのままモニターに反映されます.
 

叉棘の動きや多孔体の配置,水管系の仕組みなど,

なかなか解剖の現場では全員に教えにくいことも,

この装置ならその場で瞬時に見せることができます.

また,本来は展示品として開発したものなので,自発的な学習にも役立ちます.
 

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開発者はこの方.自然共生研究センターの渡辺友美さんです.

実は今年の動物学ひろばの隣のブースでこの展示を見かけたときにお話をして,

今回の実習に使わせていただきました.

お陰様で,いつもは解説が難しい部分まで詳細に見せることができました.

ありがとうございました!
 

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まだ開発途中らしく,今後,様々な意見を取り入れ,教育用にも開発を進められるとのこと.

完成版が楽しみです

ちなみに,今回の実習でこの装置に「ウニウニ君」という愛称が付けられることとなりました

 


棘皮動物の解剖

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今年最後の実習では,棘皮動物(ウニ,ヒトデ,ナマコ)の解剖を担当しました.
 

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クモヒトデは解剖できるほどの大きさではないので,

標本でその存在を紹介.
 

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ウニの解剖の方法の説明.基本的には赤道面上でパカッと割ります.
 

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こちらが,ウニの体内部の様子.北極から(口側を)見た様子です.

真ん中にはアリストテレスのランタンとも呼ばれる,強大な歯を備えているのがわかります.

体の側面にあたる部分には,黒色の消化管が裏打ちされています.

時期であればこの消化管の間に生殖巣が発達しているのですが,

残念ながらこの個体ではほとんど見当たりませんでした.
 

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  ヒトデも,腕二本を切って,その間から盤中心を除くように観察します.

ウニでもヒトデでも,瓶嚢と呼ばれるスポイト状の部分で,

水管系の水圧を調整している事が見て取れるかと思います.


仕事納め

 

 

先日は仕事納めでしたね.
 

私も,今年最後の仕事を終えてきました.

12/25-27にかけて,大阪府立豊中高校の臨海実習が行われました.

スーパーサイエンスハイスクールの一環で,

生物好きな高校生たちに,大学の教育カリキュラムの一部を体験してもらうという催しです.
 

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我々研究員も協力いたしました.こちらは河村博士によるウニの実習.

今年最後の実習の様子をレポートしていきます
 


戒め

 

 

トスロンバケツ...
 
 

野外調査に関わる者なら,誰もが一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?

他の追随を許さない高密閉性を誇り,調査や標本保管に大活躍の優秀なバケツです.

特にテヅルモヅルのような大型の動物の研究には欠かせません.
 
 
 
 
 

先日のことです.調査道具を入れたトスロンバケツを郵送したところ,
 
 
 
 
 
 

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こんな姿になってしまいました.
 
 

側面ベッコリです.

もちろん犯人は私ではありません.

空輸による気圧の変化によるものです.
 

蓋にタオルなどを噛まして密閉性を低める事で対策できるのですが,

今回は発送から到着まで時間を持たせていたので,

まさか空輸はあるまいと油断していました.
 

いずれにせよ,変わり果てたトスロンの姿に枕を濡らしましたね.

気圧による更なる犠牲を防ぐため,そして自戒の意を込めここに記録します.
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

※数日後にはトスロンは元通りになっていました.


深海

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こんな本を手に入れてしまいました
 

JAMSTECの藤原義弘先生の監修による「深海」です!
 

鯨骨生物群集と深海生物を絡めた内容となっており,

学術的にも非常に興味深いのですが,
 

何よりも一枚一枚の深海生物の写真が超美麗です.
 

勿論(?)テヅルモヅルも載っています.
 

お子様のクリスマスプレゼントにピッタリな一冊です


Astrocladus coniferus (Döderlein, 1902)

 

よく考えたらこのウェブサイトの名前にはてづるもづるがついているのに,

てづるもづるを紹介していませんでした.
 

セノテヅルモヅル

ということであいさつ代わりにこちら.

セノテヅルモヅル(Astrocladus coniferus Döderlein, 1902)
 

明治期の学問(特に博物学・動物学など)の近代化に一役買った,

いわゆるお雇い外国人教師の一人のルートウィヒ・デーデルラインが記載した種です.
 

おそらく日本沿岸では,比較的よくみられる種でしょう.和名の「セノ」は「瀬の」の意味で,

比較的に浅瀬でもみられることからこの名前がついているのだと思います.
 

①腕針が盤の外側部分,第1分岐か2分岐より生じる,

②多孔体が盤側面の口側よりの部分にある,

③体表を覆う小さな突起が体表に散在する,
 

といった特徴から他種と区別されているのですが,

それが本当に種としての安定した形質なのかは未だに疑問が呈されています.
 

この種についても,研究を進めつつあるので,

見つけた方は是非ご一報を。


分類(献)学

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最近,日本のクモヒトデの情報をまとめています.

テヅルモヅル類についてはほぼ完全にまとめているのですが,

クモヒトデとなると,まだ完全ではありませんでした.
 

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実は分類学には文献学の側面もあり,

たとえばとあるグループの分類の情報を整理する際には,

過去のいかなる情報も漏らさず目を通す必要があります.

先人が残したクモヒトデの記録情報を,

種名,場所,日付,水深,水温などの項目ごとに,一件一件まとめます.
 

結構単純作業なのでやってる途中は本当にしんどいのですが,

ある程度情報量が増えてくると,不思議なことに,

生物の特性の分布の関係が浮かび上がったりしてきます.

生物学はこのような毎日の地道な作業の積み重ねですね.
 

ちなみにこのデータは,エクセルに打ち込んでデータベースなどに運用するのですが,

そんなものがなかった昔(1800年代とか)の研究でも,

正確に記録がまとめられています.
 

偉大な先生方にはまだまだ及びません.


伊良部島調査⑭

伊良部で採れた棘皮動物シリーズ
 

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まずは手始めにツマジロナガウニ.

どこにでもいます.
 

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ちょっと変わってオウサマウニ類.

やはりこの子はいつ見てもかっこいい
 

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腕がバラバラになってしまったクモヒトデ.まさにBrittle(=脆い) star(=ヒトデ)ですね.

この種は八放サンゴに絡んでいたのですが,うまく捕まえられなかったので,

私がピンセットでつついているうちに腕が切れてしまったようです.
 

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しかしご覧くださいこの盤の色彩の美しさ.

よく見ると,非常に長い棘も生えています.

おそらくトゲクモヒトデ科(Ophiotrichidae)というグループでしょう.
 

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フサクモヒトデ科(Ophiocomidae)の類.
 

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こいつも,盤をよく見ると網目模様でかっこいいじゃないですか
 

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もういっちょフサクモヒトデの類.
 

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これ,何かに似てると思ったら,サンゴの隔壁に似ている気がする!
 

「サンゴ 隔壁」で検索したら,こんな記事にいきあたりました.
 

なるほど,冬瓜にも似ているのですね.
 

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こちらはアワハダクモヒトデ(Ophiodermatidae)の類と思われます.
 

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盤の表面にも,小さなクモヒトデが(笑)

こいつは腕が小ぶりでなかなかキュートなヤツです.
 

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星形だけではありません。 棘皮度物の中には,6本以上の腕を持つ奴もいます.

数は少ないのですが,奇形などでなく,6本で種のなかで固定しているところを見ると,

祖先から分岐してしばらく経つクモヒトデの中には,

もはや星形にこだわる事をやめたのかもしれませんね.
 

実は,棘皮動物がなぜ五放射なのかという疑問に対する十分な答えはまだ得られておらず,

後生動物の体の仕組みを考える上での大きな謎のひとつとなっています.
 

いつかはそんな謎にも挑戦したいなあと思いながら,

まずは目の前の課題をこなさなくてはならないのでした.
 

今年もあと少し,頑張ります


もづる紹介コーナー(Squamophis amamiensis②)

 Squamophis amamiensisについての追記です.
 

はじめ,科博でこの標本を見た際には,

新種とはわからなかったのですが,手元の文献では名前が調べられませんでした. 
 

前記事でも述べましたが,ヒトデモドキ属はとにかく外部形態が少ないのですが,

種の分類に用いられていたのは体表の骨片(皮下骨片と我々は呼んでいます)の形状や配置でした.

粒粒の骨片やトゲトゲ等,様々な形の小さな骨がこの属の種の体を覆っており,

その大きさや密度等が分類の指標になっていました.
 

まずはこれらの形態を整理しなくては始まらないので,

古今東西の全てのヒトデモドキ属の記載文献を集め,解読したところ,

いずれの記載にも一致しない事がわかりました.
 

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ほとんどの種が顆粒状やトゲトゲの骨片を持っているのに対し,

この標本の体表の骨片の形は,写真のようにうろこ状だったのです.
 

さらに観察を続けると,腕に生えている針の数や,体内の骨片の形状までが,

他の種と異なっていることを見出しました.
 

そこで,これらの違いをまとめ,約1年近くかけて論文を準備しました.
 

この間に何度も何度も原稿を修正してくださった藤田先生には,本当に感謝です.
 

こうして,出会いから一年以上を経て,

本種はAsteroschema amamienseという名前で発表されました.
 

その後,この種が実はツルクモヒトデ目の中でもかなりの変わり種という事が分かってきたのですが,

それはまた別の機会にお話いたしましょう.


棘皮グッズ

  先日の記事で,クモヒトデイヤリングをご紹介いたしました.



木登り1

こちらが所有者の@木登りヤギ(Twitterアカウント)さんです.

なんとこの方,この日は全身棘皮グッズで参加されていました.



ウニ・ヒトデネックレス,ウニTシャツまで

木登り2

おそらく会場における棘皮力は群を抜いていたと思います.
 

実はこのようなありとあらゆる生き物愛好家で集まって,

グッズ販売,パネルディスカッション,講演等によて交流する

参加型創作イベントがあるそうです.



その名も「いきもにあ



一年後の2015年12月12-13日に,

京都市勧業館「みやこめっせ」で開催予定とのこと. 
 

もし余裕があれば,次回は参加して棘皮グッズをゲットしたいです



ちなみに,木登りヤギさんは,かの有名な

なにわホネホネ団」にも所属されています.


もづる紹介コーナー(Squamphis amamiensis)

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こちらは,Squamophis amamiensis (Okansihi and Fujita, 2009)という種です.

私と,師匠の藤田先生が2009年に新種として発表しました.
 

私が初めて論文にした,思い出深いヤツでもあります.
 

現在はSquamophisという属に移されていますが,

私が記載した際は,この種はヒトデモドキ属(Asteroshcema)に属していました.

この属は,他に比べて外見の差が少ない(形態形質が少ない)にもかかわらず,

ツルクモヒトデ類の中では珍しく34種という多種を含みます(他の属は,多くても10種程度です).
 

多種=多様と考えてもよいのですが,

分類が進んでいないグループでは同種異名が多いということが考えられます.
 

この属はまさにそのようなグループだといわれており,

各地の研究者によって種が乱立している状態でした.
 

しかし,私が修士でこのヒトデモドキ属の情報を整理しているうちに,

科博に所蔵されていたある標本が,どうしても既存の種の記載に当てはまらないことに気付いたのです.
 

そこで一大決心し,この個体を新種として発表することを決めました.


ふぉっとっと

 

買いました

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こちらの三点
 

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アクリル観察ケース,「ふぉっとっと」です
 

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このケースの特徴はこちら!なんとスケールが付いています
 

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平型もあります
 

こちらのマメチ・プロダクションさんで購入できます.
 

瀬戸臨海の実習に参加すると,

ふぉっとっとでナイス生物写真が撮れます


標本整理③

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最近調査が多いので,サンプルがたまってきました.

少しずつ整理をしていかなくてはなりません.
 

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 現場でパッキングした標本はこのように,

ビニールパックに耐水紙とともに入れ,
 

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ポリ瓶にぎっしり詰めてあります.
 

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中身を取り出しまして,
 

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瓶に移します.
 

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なるべく中の保存液(基本はエタノール)が揮発しないよう,

我々はこの二重蓋の瓶を使っています.
 

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そしてエタノールを注ぐ
 

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きっちり肩まで入れましょう.標本が小さいからと言ってけちると,

後で揮発量が分からなくなります.
 

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蓋を閉めて完成

この状態で置いておけば,少なくとも何十年という単位で保つはずです.
 

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ラベルだけでなく,蓋にも識別番号などをつけておくとより効果的です.

例えば万が一中のラベルが無くなっていても,蓋の識別番号から情報を追うことができます.
 

また,最近はレーザープリンタで耐水紙に打ち出したラベルを使うことあありますが,

場合によっては文字がはがれてしまう事があります.
 

そのため,ラベルには必ず手書きで標本番号を書いておくとよいでしょう.

オーストラリアの博物館では,一度レーザープリンタから打ち出したラベルを,

オーブンで少し焼いて,文字を定着させるという技を使っていました.
 

標本の恒久的な保管のために,世界中で様々な工夫が凝らされています.
 

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また,あまりに小さいものは,さらに小さなバイアルなどに入れないと,

瓶の中で探すのに苦労します.
 

しかしそのようなバイアルは小さすぎて紛失しやすいため,

このように瓶に入れておくことで紛失を防ぐ共に,

同じ大きさで瓶の規格が統一され,整理がしやすくなります.
 


もづるcafe

 

2014年12月7日に,東京高田馬場にて,モヅルカフェを開催してきました
 

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サイエンスカフェということで,雑誌の表紙などを参考に,

なるべくオシャレなフォントを使ってタイトルページを作りましたが,

持ち込んだノートPCへのフォントのインストールを忘れたため,

あえなく撃沈.慣れないことはするもんじゃないですね
 

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たっぷり一時間半,モヅルや研究についてあれこれしゃべってきました.
 

そもそも,テヅルモヅルとは何者なのか?

海藻ではありません「クモヒトデ」です
 

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では,そのクモヒトデとは何者なのか?

クモでもヒトデでもありません!でも,ヒトデはちょっと惜しい
 

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クモヒトデもヒトデも,ウニやナマコと同じ「棘皮動物」というグループに含まれます.

じゃあ,よく言われるクモヒトデとヒトデの違いとは?
 

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私が専門にしている分類学ってどんな学問?

その歴史と実際まで,楽しく解説してきました.
 

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なぜ,私はテヅルモヅルを研究しているのか

テヅルモヅルを研究する意義とは?8年間蓄積した情熱をぶつけてきました.
 

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そして,前日の棘皮動物研究集会でも発表した,

キヌガサモヅルの分子系統地理のお話もしてきました.
 

参加者(サポーター)の方から「思ったより進んでいてびっくりした」とおっしゃっていただきました
 

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最後に,みなさんでもづるポーズ
 

「もづるトークをします」との呼びかけに,これだけの人が集まってくださいました.

なかなか注目されにくいマニアックな研究でも,

ちゃんと人の知的好奇心の一部を満足させられることが分かっただけでも,

開催して良かったと思います.
 

academistの支援者の皆様,

academist事務局の柴藤さん,森さん,

そしてもづるカフェにご参加いただいた皆様,
 

本当にありがとうございました
 

これからも頑張ります


もづるグッズ

みなさん,これ...
 

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なんだかお分かりですか?
 

正解はこちら.
 
 

なんと,テヅルモヅルブックカバーです
 

先日のもづるカフェの参加者にいただきました

早速本川先生のご著書を包みます
 

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このフィット感
 

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これコピペじゃないような気がします.
 

ひょっとして,全て手書きでしょうか?
 

だとすると改めて感謝です.
 

作成者の人潟るけさんは,様々な深海生物グッズを作成されています.

これ,動物分類学会とかで売り出したら,相当売れるのでは?
 

 


棘皮動物研究集会③

 

勿論私も発表しました
 

「キヌガサモヅル(棘皮動物門:クモヒトデ綱)の分子系統地理」

岡西政典(京大・瀬戸臨海)・藤田敏彦(国立科博・動物)
 

無題

ちょっと画質がよろしくないのは,暗闇のせいではございません.

実はこれは,動画のキャプチャーなのです
 

今回の発表は,academistのご助成で進められたもので,

当初予想していたよりも,とても面白い結果が出つつあったので,その内容を発表しました.

さらに詳細に標本を検討できれば,論文にできそうです
 

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こうして,ポスター発表,口頭発表共に大盛況のうちに幕を閉じました.

締めの挨拶をしているのは,今回の世話人の一人の,三崎臨海実験所の大森紹仁先生です.

今回の研究集会を取り仕切っていただきました.本当にありがとうございました.
 
 
 

そして
 
 
 

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打ち上げの始まりです
 

大いに研究した後は,大いにのまなくてはなりません.

美味しい三崎のマグロ料理と地酒に舌鼓を打つのでした.
 

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大分お酒も進んだところで,みなさんとパシャリ.

私の左手が神奈川大学のウニの古生物の大御所,金沢先生と,

右手が今回のもう一人の世話人,三崎臨海の幸塚先生(ウミシダの専門家)です.
 

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とにかくみんな仲良く,お酒も研究も楽しむのが棘皮動物研究者です

来年もよろしくお願いいたします
 

今回お世話になった集会オーガナイザーの皆様,

発表に対しご意見をくださった先生方,

懇親会でお話してくださった皆様に,感謝を申し上げます.
 

そしてacademistでご支援いただいた皆様,

ありがとうございました


ウチノミナンカイヒトデ

 

「珍しいヒトデが入った」

という話を聞きつけ,水族館へ向かいました
 

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こちら!ウチノミナンカイヒトデAsterodiscides helonotusです

このナンカイヒトデ類(科)は,腕の先っちょの1対の上縁板が特に大きくなるのが特徴で,

和歌山県立自然史博物館で飼育されていたヤマトナンカイヒトデもこの特徴を持つのですが,
 

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この種の上縁板はずいぶん巨大です.

まるで蹄のよう...
 

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体表面を覆う顆粒も,色々な形があってかっこいいですね
 

因みにこの種は,偉大なヒトデ研究者であるFisherによって1913年に新種として発表されたという事なのですが,

原記載と思われる以下の文献にあたってみましたが,どうにも記録が見つかりません.
 

Fisher, W.K. (1913)

“Four new genera and fifty-eight new species of starfishes from the Philippine Islands,

Celebes, and the Moluccas”

Proceedings of the US National Museum, 43: 599-648.
 

うーん,なぜでしょうか.情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら,ご連絡くださいませ.
 

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因みに,白浜水族館には,今年になって飼育を始めた可愛いオカヤドカリや,
 

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我々がドレッジ調査で採集したスナダコ等が飼育されていました.

冬休みは解説ツアーもやります
 

是非ともお越しください

 


棘皮動物研究集会②

まだまだ続く棘皮動物研究集会.

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実験施設の中には,水槽がたくさんありました.

さすが海洋生物エボデボのメッカ。ちょっと暗いですが,

こちらはアカウニ水槽.
 

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こちらはハネジナマコ水槽.
 

しかし,実はハネジナマコの学名には混乱があるらしく,

ナマコ研究者の方の「これ,ハネジナマコじゃないよ」発言に,

しばらく現場が騒然としていました.
 

実際には,まあ,研究している実態が違うわけではないから大丈夫か,という話に落ち着いていました.
 

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ポスターセッションにはお菓子や飲み物がフリーで用意されていました
 

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古生物の発表や, 
 

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今話題のオニヒトデに関する発表や,
 

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なんと,三崎に生息するテヅルモヅルの発表まで

といいつつ,まあ私も共著者の一人です(笑)
 

三崎のイソバナ群落に付着するセノテヅルモヅルの幼体の発表です.

テヅルモヅルは発生等は未だに謎のままなのですが,

イソバナ群落におびただしい数が付いているということで,

その個体数や,成長と腕の分岐数の計測をした研究です.

時間をかけてモニタリングすれば,何かの発表になるかもしれません.
 

聴衆の中に,棘皮動物猛者が

何と,ワモンクモヒトデイヤリングです
 

私も様々な棘皮動物グッズに目を配ってきましたが,

クモヒトデをイヤリングにしているのは初めて見ました.天晴.
 

世界はまだまだ広いですね.


棘皮動物研究集会①

2014年12月6日に開催された,棘皮動物研究集会に行ってまいりました.

今年の開催地は,東大の三崎臨海実験所.

非公式な集会ながら,今回は,

約70名もの参加者が集まったそうです.
 

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口頭発表とポスター発表の合間に,実験所の施設見学がありました

こちらは,臨海実習を行っている,日本海洋生物学百周年記念館.
 

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こちらが実習室.実は三崎を訪問するのはこれが7年ぶり2度目.

臨海実習に携わる身としては,ずいぶんと見方も変わるものですね.

机が円形に配置されているのは,陽の光を十分に取り込むためだそうです.
 

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実習室の標本棚が,透明です

これは大変見やすい!とても参考になります.
 

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危険生物の告知は瀬戸でも行っていますが,

そういえば水産有用種についてはあまり触れていません.

少なくともここに上がっている種のほとんどは瀬戸でも採集できるので,

何らかの告知をしてもよいかもしれませんね.
 

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記念館からの眺め.窓外は油壷湾の入り口に臨み,

実験所の調査船「臨海丸」(奥の大きな船)が見えます.
 

なんと2000mのケーブルが巻かれているということで,

かなりの水深(浅くても700 mくらい?)まで調査が可能です.
 

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屋上に上って,油壷湾を眺める棘皮動物研究者方.
 

毎年若手だけでなく,大御所も多数参加されており,

若手と先生方の交流が活発なのが本集会の特徴でもあります.
 

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この場所には,通称「グリーンハウス」と呼ばれる木造の実験棟があったのですが,

東日本大震災の際に焼失してしまったそうです.
 

残念ですが,他に被害がなかったことは不幸中の幸いでしょうか.
 

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記念棟と研究棟までは,景色のいい小道でつながれています.

集会当日は天気に恵まれ,とても美しい景色まで堪能できました