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2014年4月14日~19日「臨海実習(和歌山大学)」

2014年和歌山大学実習⑧

和歌山大学実習レポートも

ついにラストです。

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和歌山大学ではコドラートを使った実習も行います.

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コドラート調査では,このように特定の方形枠を設定し(50 cm×50 cmなど),

その枠の中にいる生物の組成を調べる方法です.

今回の実習では,潮上帯(潮が満ちても水が来ず,水しぶきだけがあたる場所),

潮間帯(普段は水の底で,干潮時に陸になる場所)

潮下帯(干潮時にだけ陸になる場所)

に分けてコドラート調査が行われました.

これにより,水深ごとの生物分布を比較します.

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デジカメで方形内を撮影.

後の情報整理に役立ちます.

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あまりに計測個体数が多い場合は,一部分の計測値をもとに,

全体の計測数を割り出す方法をとります.

なんだかクイックスを思い出しますね.

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この日は潮がよく引いていたので,

普段は渡れない塔島までわたることができました。

先端まで行くと,外洋性の生物が少しだけ見られたりします.

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現場で同定できなかったものは,

実習室へ持ち帰ってじっくり鑑定します。

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そして最後の実習,プランクトン観察。

本当はウニの発生実験も行う予定だったのですが,

なぜかムラサキウニがうまく放精放卵しなかったため,中止となってしまったのです.

時期はそんなに悪くなかったのですが,不思議ですね.

予想外のハプニングもある意味,生物を扱った実習の醍醐味です.

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プランクトン実習では,先生でもわからないような生き物が出てくることがあります.

先生と学生で頭を悩ませながら種を同定することもしばしば.

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先生お手製の篩で,実験所のすぐ裏の海水を濾してみました。

結構たくさんのプランクトンが採れたようですよ.

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そんなこんなで,野外尽くしの和歌山大学実習でした.

そろそろ実習シーズンに突入します.

この夏は学会,実習,提出期限のある論文に大忙しになりそうです.

まずは目の前の日本動物分類学会第50回大会で頑張って発表してきます!


2014年和歌山大学実習⑦

四双島でウミシダが採れたので!

ウミシダの標本作製についてお話しましょう!

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まず,クモヒトデと同様,まずは容器に入れて写真撮影です.

しかし,麻酔はご法度です.

実はウミシダでは塩化マグネシウム溶液による麻酔ができません.

無理に麻酔液に漬けると,苦しんで腕がバラバラになってしまいます.

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撮影が終わったら,クモヒトデの時と同じように,別の容器にエタノールを入れます.

写真の様子は灯油の配注ではありません.

一斗缶にエタノールが入っていて,灯油ポンプで取り出しているのです.

私の知る限り,大体の科学者が灯油ポンプでエタノールを扱っています.

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そしておもむろにウミシダを隣におきまして...

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えい.

とひっくり返してエタノールに漬けます.

この時,しばらく上から軽く抑えてやるのがポイントです.

腕が平面上に固定され,あとで観察のしやすい良い標本になります.

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そっ…と手をのけてやると

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ウミシダ標本の完成です!

あとはクモヒトデと同様,ビニールパックに入れるなりして研究室に持ち帰り,

瓶などに入れ替えます.

ちなみに,オレンジ色のモヤモヤはエタノールに体色の構成要素が溶け出したものです.

固定後は色が変わってしまうので,その前に写真を撮っておく必要があります.

続く


2014年和歌山大学実習⑥

 四双島で見られた生物シリーズ。

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まずはこちらの岩の隙間をよーくご覧ください.

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岩の隙間にウメボシイソギンチャク Actinia equinaの集団です。

実験所周辺ではブロックなどの隙間の奥にしか分布していないため,

こんな風に簡単には観察できません.

しかし色といい形といい,梅干の名を関するにふさわしいですね.

ただ,種小名は「馬のたてがみの」とかいう意味のようです.

絶対梅干のほうがいいと思うなあ.

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四双島の醍醐味はタイドプールにありました.

何気ない態度プールのように見えますが...

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こんな風にイボヤギTubastraea coccineaやトゲトサカDendronephtyaがいたり.

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これもイボヤギでしょうか?

無藻性のサンゴと思いますが,なんだか緑色です.

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ハナヤサイサンゴ?がいたり。

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さらにはなんと,ムチヤギがいたり。

普通は波あたりが強い場所や日光が当たらない場所,

やや深い場所にいるはずの生き物がごろごろみられました.

熱い!

これはまた徒党を組んで調査に来なくてはなりません。

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こんな風に,クシクラゲもプカプカ浮いていました!

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そして島の外洋性を示すこちらのウニたち.

(ヒメ)クロナガウニEchinometra oblonga(左二個体)と,

ホンナガウニEchinometra mathaei(右一個体)です!

どちらかというと亜熱帯に生息しているウニで,

瀬戸臨海周辺でも見られるのですが,こんなに大きくありません.

黒潮が当たる温暖な四双島では十分に成長できるのかもしれません.

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ちなみに,岩の間のクロナガウニを採ってみると,こんなになっていました.

これは別に採集時のダメージでこうなったわけではありません.

おそらく岩に密着していたた部分の外殻が発達しなかったのだと思います.

体の内部の骨格が見えちゃってますが,いいんでしょうか...

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さらにコブヒトデまでいました。

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 この大きな管足!立派ですねー.

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そしてウミシダまでタイドプールに。 

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え!!ウツボまで!!?

・・・と思ったら,釣り人の釣果でした。

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軟体動物も多様でした.こちらはメクラガイDiloma suavis

海藻にたくさんが付いてました.

ずいぶん派手な色をしていて,岩陰などにはかくれないそうです

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THE アメフラシAplysia kurodai 

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クロシタナシウミウシDendrodoris arborescens

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コチラはメリベウミウシMelibe papillosaです.

この方の採餌法は変わっておりまして.

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体の前方(左側)の口をカッと広げて・・・

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ガバッと投網を投げるかの如く,目の前の海底を覆います。

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そしてゆっくりと口をすぼめて,小さな甲殻類などを食べちゃうそうです.

もしゃもしゃ.

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みんなでそんなメリベウミウシのお食事を観察.

大変有意義な四双島調査でした!

続く.


2014年和歌山大学実習⑤

 四双島に上陸しました。

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畠島のように視界を遮る山などの起伏はなく,

広めのタイドプールが点在しています.

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緑藻,褐藻,紅藻など,藻類が豊富です.

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場所によっては,このように一種類の海藻が優先していました.

これはフクロフノリです.

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決して気温は高くなかったのですが,水着になった猛者が。

何をしているのかと近づいてみると...?

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ぶくぶくぶく...

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「はい!とってきました!」

上の人に命令されていたようですね。

続く.


2014年和歌山大学実習④

和歌山大学実習レポートです。

この実習の特徴の一つは,「四双島」での磯観察です.

瀬戸臨海実験所の西方に位置するこの島は,

畠島とは違い,京大所有の島ではありませんが,

外海に面しているため,畠島や番所崎とはまた違った生物がみられます.

一年を通して,実習でこの島に渡るのは和大の実習だけなのです。

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いつもの寒さ浦の船着場でなく,

実験所の裏の北浜からの乗船.

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ワイルドに砂浜に着けた船に乗り込みます。

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出港は人力です。

技官の興田さんのパワーです。

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第一便(定員いっぱい)に乗り遅れた先生とポスドクたち.

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学生が集めたハコフグを眺めて待つとしますか...

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そうこうしているうちにすぐに船が帰ってきました。

孤島の釣り人を横目に出発。

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うっすらみえてきました。

灯台がある島が四双島です。

はたして何が待ち受けるのか?

続く.


2014年和歌山大学実習③

畠島でクモヒトデが採れたので




突然ですがクモヒトデの標本の作り方を紹介します.






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まず,これが今回採れたクモヒトデ.

岩の下にいました.

バットの上にあけましたが,これだと逃げようとして腕をからませあったりして,

何個体いるかもよくわからず,とても標本にするどころではありません.

そこで,麻酔液(塩化マグネシウム水溶液(MgCl2))を使います。

作り方は簡単で,塩化マグネシウム六水和物を73.5g/1Lの分量で真水に溶かすだけ。

注意点としては,潮解性のある試薬なので,

素早く計量しないとどんどん水を吸って秤がべちゃべちゃになっちゃいます.

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麻酔液に浸した状態がコチラ。

種類によりますが,2,3分で効きます.

完全に脱力し,形もこちらの意のままです.

この状態だと腕の自切もありません.

スペースを稼ぐため,このように「彗星型」にするのが私の出身の藤田研究室のスタイルです.

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そしてこのスキに写真を撮ります。

最も重要なのは,体の真ん中の「盤」です.激写しまくるのです。

コチラは反口側. 

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コチラは口側.真ん中にあるのが口です.

写真は,もちろん標本にした後でも撮影できるのですが,

エタノールなどにつけると色が抜けてしまう場合が多いので,

麻酔している間にとるのがベストです.

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そして,別のトレイに固定液(最近は主にエタノールです)を満たしておき,

麻酔したクモヒトデをそっと移します.

後はこれをビニールパックにラベルとともに入れておき,後日瓶に移して標本完成です。

たまには真面目な研究話でした.

続く.

 


2014年和歌山大学実習②

和歌山大の実習で見られた畠島の生き物シリーズ!

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その① チゴケムシ Watersipora subovoidea

岩の下の方に,薄らオレンジに見えるコケのようなものが張り付いているのがおわかりいただけますでしょうか?

これはれっきとしたコケムシと呼ばれる動物で,外肛動物門とも呼ばれています.

個虫と呼ばれる,頭の部分に触手の環を持つ小さな生き物が,

サンゴなどと同じように群体を形成しています.

詳しい形態の話などは,知り合いのコケムシ研究者さんのウェブサイトで勉強できますよ!コチラ↓

https://sites.google.com/site/kokemushiweb/

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その② アオウミウシ Hypselodoris festiva

春はウミウシの季節ですね.このように目につく鮮やかなものから,

擬態しているのか,じっと海藻を見ていてやっと見つかるようなものまで,

様々な種がみられました.

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その③ ウミヒルモ Halophia ovalis

海藻ではありません.海に適応した種子植物です.

畠島では汚染が進んだ1970-80年代に消滅してしまったという記録がありますが,

海の浄化がすすんできた近年になってまたみられるようになりました.

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その④ モミジガイの仲間たち.

「カイ」といっても貝ではありません.写真からお分かりいただける通り,れっきとしたヒトデです.

いつもは砂の中に潜っていますが,潮が引くと,苦しいのか砂から出てくるので,簡単に捕まえられます.

この中にはおそらくトゲモミジガイとモミジガイが混ざっていますが,見分けがつきますか?

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その⑤ ウミガメとその⑥ ハリセンボンの死骸!

外湾に面したこの島には,いろんなものが流れ着くのですね.

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今原先生が何かを見つけられました!

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その⑦ コマイハナゴケ Cervera komaii

です!ヤギやウミトサカに代表される八放サンゴはあまり浅いところには見られませんが,

こんな潮間帯にみられる八放サンゴもいるのですね!

この赤いポツポツの一つ一つがポリプで,観察していると,

八放サンゴに特徴的な羽状の触手が観察できました!

ちなみに種小名の「komaii」

は,瀬戸臨海実験所の初代所長の駒井卓先生に献名されたものです.

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その⑧ これは,,,なんでしょう?

海中から突っ立ている棒状の物体.

ツバサゴカイの棲管でしょうか?それにしては長いような,,,

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浜辺で赤潮が観察されました.

その⑨ 夜光虫Noctiluca scintillans(渦鞭毛藻)

が大量発生していたようです.

この水の中にはすさまじい数の夜光虫が顕微鏡で観察できます.

こんな日に夜の海岸に出ると,波の動きに刺激された夜光虫が光ってとてもきれいですよ.

続く.


2014年和歌山大学実習①

2014年4月14日~19日にかけて,和歌山大学教育学部の実習が行われました!

この実習では,とにかく野外に出ます.

毎日野外尽くしです!

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まずは畠島へ出発!

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古賀先生による,畠島の説明.

普段瀬戸の先生の解説ばかり聞いているので,ちょっと新鮮でした.

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今回の実習にはスペシャルゲストが!

黒潮生物研究所和歌山支部の今原幸光先生です.

八放サンゴ(骨格を持たないやわらかいサンゴを含むグループ)の専門家です.

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国立科学博物館の並河洋先生です.

ヒドロ虫という,刺胞動物の中では比較的派生したグループの研究をされています.

変わった生殖様式を持つグループで,先生は各地からヒドロ虫を採集・飼育し,

生活史を見ておられます.

お二人の来浜の目的については,また今度お話しますよ!

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この日は雲一つない磯観察日和でした!

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海の生き物に興奮して,磯の際まで攻める学生あり.

遠くから「うひゃー!!」「すげー!!」などの嬌声があがっていました.

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ハッと気づいたら,海藻の専門家の高須先生(+ついていった学生二名)がはるか遠くへ!

フィールド科学者の足腰は強靭です.

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そんなこんなのポカポカ畠島観察でした.

この後も怒涛の野外実習が続きます.