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ライントランセクト・コドラート調査

京大実習(一部,四部)+公開臨海実習⑧

京大実習レポートいよいよ大詰め
 

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この写真を覚えておいででしょうか?
 

自由課題実習です.
 

実はこれまでの実習に他の人たちが取り組んでいる間に,

滋賀県立大の杉本君が,

「潮間帯の岩礁や転石帯において,波や乾燥などの環境要因が,

貝類の分布に及ぼしている影響についての考察」

というテーマに取り組んでいました.
 

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鳥の巣,番所崎など数地点でコドラート・ライントランセクト調査を行い,

干潮時の海岸線から約1m 間隔で潮上帯まで50 cm四方のコドラートをとりました.
 

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得られたデータを解析中.

地点ごとにシャノン・ベイナー多様度指数(H’)や

類似度を算出しています.
 

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結果発表
 

台風の影響であまりたくさんデータが採れなかったので,

中野先生のコドラート調査のデータもお借りして比較に用いました.
 

分布図を書き,多様度などを地点ごとに比較したところ,

波あたりが強い場所では生物の多様性が高そうだ,

という考察に至りました.
 

そもそも生物学では,どうしても厳密なデータを採るのが難しいため,

たくさんのデータを採り,統計学的に処理することでその傾向を見る,

という手法が多くとられるます(特に生態学のような分野では).
 

台風でデータが得られなかったという原因はありますが,

今回はやや解析だよりになってしまったかもしれません.
 

例えば,分布図を書いてみた時点で,

肉食の捕食者のイボニシやシマレイシガイダマシ(巻貝)の分布と,

被食者のクログチガイ(固着性二枚貝)などの分布に,

ある程度の重なりがみられることがわかりました.
 

これを新たな出発点とし,

干潮時と満潮時での巻貝の挙動の違いや,

実際の捕食行動や捕食数から推測される捕食圧などを地点ごとに調べると,

さらに面白いことがわかったかもしれせん.
 

そして,新たに得られたデータを基に多様度や類似度を検定できれば,

解析をさらに「有意義」なものにできたでしょう.
 

また来年度,新たなチャレンジャーがこの謎を究明してくれることを祈ります
 

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実習の最終日は恒例のBBQ大会
 

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白浜の海の幸をたっぷりと堪能してもらいながら,

海洋生物談義に花を咲かせ,夜が更けていきましたとさ.
 

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一夜明けて,本当の最終日.

最後に宿舎と実験室の掃除をして,気持ちよく家に帰りましょう

こんなにピカピカにしてくれました!
 

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最後に白浜水族館をバックにパシャリ.
 

皆さんお疲れ様でした


京大実習(一部,四部)+公開臨海実習②

京大実習のレポートです
 

最初の実習は付着生物観察です.
 

多くの動物はその名のとおり「動」いて生活しています.
 

ところが,中にはフジツボやイソギンチャクのように,「動かない」という生活を選択したものがいます.

それらの付着生物にターゲットを絞り,その生態的な意義を考察してもらうのが目的です.
 

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講師は大和先生.

調査地の説明中.


 

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台風の接近に伴い,実験所近くは荒天につき磯観察ができなかったので,

普段は来ない,内湾の鳥の巣という場所に来ました.
 

堤防の向こうが観察地ですが,流石にこの高さは降りられません
 

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ということで少し離れた階段から歩いて磯に向かいます.
 

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台風の影響はありましたが,まだ雨は降っておらず,

青空も垣間見えました.
 

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こんなコンクリートの棒の橋を渡ります.
 

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田辺湾の景色を説明中.

普段は遠くに望んでいる神島が近くに見られました.
 

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公開臨海実習の自由課題用のコドラート調査中.

このような方形枠を何地点かでとり,その中の生物相を

地点ごとに比較するという伝統的な方法です.
 

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例のごとく,持ち帰った生物を図鑑で同定中.

図鑑の使用方法も,臨海実習の重要な教育事項です.
 

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バットの中で,何やら小さな黒い粒が蠢いています.

こんなものは採っていなかったはずですが...
 

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黒い粒をモニターに映してみました.
 

なんとこれらは,ゾエア幼生と呼ばれるカニの赤ちゃんでした
 

お母さんガニはお腹に卵を抱えて,孵化するまで育てます.

採集された際の刺激で,ゾエア幼生が孵化してしまったのかもしれません.

(もちろん自然に孵化した可能性もあります)
 

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む,このコンビは.

TAの小泉君と,3月の実習に来ていた大塚くんの感動の再会です.

詳しくは3月の実習報告をご覧下さい.
 

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Nahraさんも磯の生物に興味津津

タンタ大学では軟体動物の生物学を専攻していらっしゃるそうです.
 

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イソギンチャクが,槍糸と呼ばれる防御用の刺胞を備えた糸を出していたので,

河村博士がモニターに映し出して解説中です.
 

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指示棒で指しているのが刺胞細胞ですね.

さすが防御用ということで,長い刺胞が発射されている様子が観察できました.
 

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最後に,採集された生き物を黒板に書き出しました.
 

なんとその数60種!
 

これは生物が豊富な畠島実習での採集数に迫ります.

学生のみなさんの採集努力の賜物ですね.
 

次は,漁港などの係留物に付着した生物を観察しに行きます
 

続く.

 


2014年和歌山大学実習⑧

和歌山大学実習レポートも

ついにラストです。

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和歌山大学ではコドラートを使った実習も行います.

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コドラート調査では,このように特定の方形枠を設定し(50 cm×50 cmなど),

その枠の中にいる生物の組成を調べる方法です.

今回の実習では,潮上帯(潮が満ちても水が来ず,水しぶきだけがあたる場所),

潮間帯(普段は水の底で,干潮時に陸になる場所)

潮下帯(干潮時にだけ陸になる場所)

に分けてコドラート調査が行われました.

これにより,水深ごとの生物分布を比較します.

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デジカメで方形内を撮影.

後の情報整理に役立ちます.

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あまりに計測個体数が多い場合は,一部分の計測値をもとに,

全体の計測数を割り出す方法をとります.

なんだかクイックスを思い出しますね.

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この日は潮がよく引いていたので,

普段は渡れない塔島までわたることができました。

先端まで行くと,外洋性の生物が少しだけ見られたりします.

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現場で同定できなかったものは,

実習室へ持ち帰ってじっくり鑑定します。

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そして最後の実習,プランクトン観察。

本当はウニの発生実験も行う予定だったのですが,

なぜかムラサキウニがうまく放精放卵しなかったため,中止となってしまったのです.

時期はそんなに悪くなかったのですが,不思議ですね.

予想外のハプニングもある意味,生物を扱った実習の醍醐味です.

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プランクトン実習では,先生でもわからないような生き物が出てくることがあります.

先生と学生で頭を悩ませながら種を同定することもしばしば.

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先生お手製の篩で,実験所のすぐ裏の海水を濾してみました。

結構たくさんのプランクトンが採れたようですよ.

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そんなこんなで,野外尽くしの和歌山大学実習でした.

そろそろ実習シーズンに突入します.

この夏は学会,実習,提出期限のある論文に大忙しになりそうです.

まずは目の前の日本動物分類学会第50回大会で頑張って発表してきます!


藻類の系統と進化⑤

まだまだ続く藻類実習。

今日は畠島でのライントランセクト及びコドラート調査です。

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ライントランセクト(Line Transect)は、海岸線に任意のラインを引き、

その上の生物の被度や個体数などを調査する方法です。

一方コドラート(quadrat)法は、四角形の枠を海岸の基質の上に置き、

その中の生物の個体数や被度を調査する方法です。

今回は、両者を同時に行いました。

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まずはラインを引く場所を決めます。

なるべくその辺り一帯の生物相を反映するような場所を選ぶ必要があります。

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調査開始!

コドラート内の海藻の被度を調べていきました。

この日はなかなか激しい雨風に見舞われ大変な作業となりましたが、

めげることなく完遂してくれました。

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畠島で見られた海藻「オニアマノリ(Pyropia dentata)」

荒見かけた実習生たちの心を癒してくれた食卓の人気者です。

※食べてません。

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実習室に帰って、データの解析。

苦労して持ち帰った宝のようなデータです。

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今回は畠島の内湾側と外洋側の二回に分けて調査を行ってもらいました。

果たしてどんな差が出るのでしょうか?

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 実習の合間に、外国人を想定したディスカッションの練習中。

あらゆる場合を想定した準備に余年がありません。

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ライントランセクト・コドラート調査結果発表

外洋側ではヒジキやウミトラノオなどの茎が長い褐藻が多いのですが、

内湾側では、ボタンアオサ(Ulva conglobata)やボウアオノリ(Ulva intestinalis)のような緑藻などが多く見られました。

この違いおそらく波当たりの強さに由来しているのではないかという考察でした。

今は海岸を覆い尽くす勢いの海藻類も、夏には脱落してしまいます。

藻類が豊富な時期だからこそできる調査といえるかもしれません。

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前日に作成した藻類の標本達です。

乾燥すると、だいぶ様子が変わって、生きている時とは全く違う形になったりするものもあります。

このような標本作成法は、古典的ではありますが、

いまでも藻類の分類学では中心的に行われているようです。

続く