今日は真面目に論文の紹介をしたいと思います.
Nakano 2014
“Survey of the Japanese Coast Reveals Abundant Placozoan Populations in the Northern Pacific Ocean”
Scientific Reports. 4 (5356)
doi:10.1038/srep05356
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この論文は,平板動物(Placozoa)という海産無脊椎動物が,
日本各地に分布していることを明らかにした論文です.
平板動物は,板状のアメーバのような,直径0.5-3 mm程度の動物です.
特筆すべきはその体制単純さで,
7種類の細胞がわずか3層にしか配置されておらず,非常に薄いのが特徴です.
この動物は,背腹はあるのですが前後左右がないため,
動物全体の左右相称性の進化を考える上で非常に重要です.
しかしながらその小ささゆえにこれまでほとんど見過ごされてきました.
世界中に生息するといわれているのですが,
これまで日本で定量的な研究が行われたことはほとんどありませんでした.
この度,筑波大学下田臨海センターの中野裕昭助教が,
日本各地の6地域から平板動物の採集を試みたところ,
北は能登半島,南は沖縄のすべての調査地域において採集ができ,
一年中を通して日本各地に分布していることが示唆されました.
実はこの6地域のうちの1つが瀬戸臨海実験所で,
二年前に来所された際のデータが論文に使われました.
詳しくはコチラをチェックしてみてください!
中野さんは非常に優秀な発生進化学者で,
これまでトリノアシ,珍渦虫などの珍しい海産無脊椎動物の発生を明らかにされています.
動物学会でもよくお会いするのですが,
物腰柔らかで,兼ね備えている人はいるものだなあと思い,
いつも研究への刺激を受けております。
ということで,瀬戸臨海を利用した研究成果を紹介してみました.
臨海実験所ならではの仕事に携わることができて,ちょっとうれしい出来事でした。